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後宮の亀仙女 -事件解決簿-  完全記憶能力をもつ主人公が、宮廷内の謎や事件を解決します  作者: 秋名はる
第一章

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第九話 妨害

荒れ果てた宮の修復に着手してしばらく経ったある日のこと_。


突然、買い物に出かけていた雀玲が、泣きながら宮へ帰ってきた。


「翠玄様~。聞いてくださいよ~!」


「なになに、一体何の騒ぎなの!」



翠玄が駆け寄ると、雀玲は今しがた起こったことを話し始めた。



それは、雀玲が翠玄に頼まれて町まで使いの品を買い出しに行った後のこと_。


雀玲はこの日少し寄り道して、帰りに町で人気の菓子を買っていた。午後のお茶の時間に翠玄と一緒に食べようと思い、わざわざ買いに行ったのだった。



後宮の門をくぐり、宮のある方へと歩いていた時

突然、廊下の先に見知らぬ侍女たちが現れて、雀玲の行く先を塞ぐように立ちはだかった。


彼女たちは、雀玲を睨みつけるように取り囲んで、こう言った。



「あなたが、先日宮入りしてきた下級才人の侍女ね」


「最果ての冷宮に、厚かましい女が住み始めたと噂には聞いていたのだけれど……なんて貧相な小娘なのかしら」


侍女の一人が嘲笑った。


「装飾も身につけていないなんて貧乏臭い。これでは、主である妃もお里が知れているというものね」



あまりの言われように、雀玲はすかさず反論した。


「あの、あなたたちは一体何なんです。いきなり現れて……。私は先を急いでいるので、どいてください」



雀玲はそう言って、彼女たちの脇をすり抜けて去っていこうとしたが、再び遮られてしまった。



「あら、上級貴妃に仕える私たちを無視しようというの? なんて無礼な」


侍女の一人が雀玲を突き飛ばした。



「聞くところによれば、あなたの主人は、摂政殿下たっての希望で宮入りを果たしたというじゃない。」


「あの摂政様が、後宮に嬪妃を取り立てるなんて聞いたことがないわ。

 _一体、どんな手を使ったのかしら?」


侍女は更に詰め寄った。



「何かいかがわしい手を使って、摂政様を誘惑したに違いないわ。」


「侍女のあなたならご存知でしょう?

 白状なさい!」


「し、知りません。

 翠玄さまはそのような事をする方ではありませんよ。」



大人数に責め立てられて、雀玲は泣き喚いた。


「しらを切るつもりね」


「この後宮において、私たちに歯向かうことがどういうことか、教えてあげるわ」



そう言うと、侍女たちは雀玲が持っていた菓子の入った箱を取り上げて、外に投げ捨ててしまった。




「……そういうわけで、せっかくのお菓子を台無しにされてしまったんです~」


雀玲は悔しそうに嘆いた。


「そんな事があったのね……」


翠玄はため息をついた。



後宮は、朝廷内で唯一にして最大の女の園だ。

綺羅びやかなその外観とは裏腹に、その裏の顔は嫉妬と情念の渦巻く欲望の巣窟である。


どうやら早速、翠玄が後宮へ上がってきたことを快く思っていない輩がいるらしい。



「その侍女たちが、誰に仕えている者なのかは、わからなかったの?」


「はい、残念ながら。見なりは良くて、高そうな衣服を着て、着飾っていた……ということ以外はわかりませんでした」


「では、主人である妃はかなり位の高い方。ということになるわね。」



後宮では貴妃だけでなく、彼らに仕える侍女たちさえも、教養や美しさを競い合っている。位の高い貴妃に仕える侍女たちは、当然身につけている服装や装飾品も豪華なものだった。



「放っておきましょう。新入りにやっかみを言いたいだけなのかもしれないし。

 _あまり気に留めても仕方がないわ。」



やはり後宮とは面倒なところだな、と翠玄は辟易して肩を落とした。


食うに困らない暮らしを約束されたのは良いことなのだが、こうやって新たな面倒事に巻き込まれる。


ここへ来たことを少し後悔しつつ、とはいえ今更戻ることもできない。翠玄は諦めて、なるべく関わらないように心を決めた。


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