白鳥
「そーいえば、ここってほどよく明るいけど何でだろ?」
俺は気になっていたことを聞いてみた。
洞窟は奥に行くほど、明るくなっていて
でもすごい明るいわけじゃなく、
コタツの中みたいな眠くなる感じの色彩。
お陰で、さっきから
俺のまぶたは漫画でいうなら、二重線だ。
「温泉だからッスね」
「ちょっと意味がわからない」
「だから、温泉の色ッス」
さも当然のように、ミルキーは言った。
「・・・・???」
あ、あれ?
温泉って光を発するものだったっけ…?
俺がアホの子みたいに
ポカーンとしてるのに気づいたようで、
「トリプルルさんの世界では温泉は光らないんスか?」
「ひからねーーよ!」
なんてこったい、異世界!
温泉ひかるのかーーーまじかーーー
ひかるんだーーー
やっぱなんだろ、薄々きづいてはいたけど、
根本的な?
ものが色々と、俺の世界とは違うみたいだ。
いや、もしかしたら海ホタルみたいな
発光する生物がいるのかもしれない。
彼らは海に生息し、
ミジンコレベルの小さい甲殻類の生物で、
危険を感じると青く光るのだ。
バシャバシャ
俺は海ホタル、いや、温泉ホタルを探して
湯の中を両手でかき混ぜながら徘徊してみた。
しかし温泉は、その澄んだ色を濁すことはなく、温泉ホタルの姿は見えず、
「まだ危険度が足らないのかも…」
そう思った俺は、湖から飛翔する白鳥のように両手を高く掲げ、バチィバチィ!と
水面を叩きながら、さっきよりも速く
湯の中を移動してみた。
バチィバチィ!
バチィバチィ!
ふと、視線を感じ、向いた先には
ミルキーとぬりかべ。
その顔は……
【悲報】
お母さん、あなたの息子は
異世界で変質者だと認識されそうです(涙)




