。
あの後、俺は屈辱にも
ミルキーの魔法で助けられ、
生ぬるい石床の上に打ち上げられた
「おのれ……」
「なぜ助けた自分を睨むんスかー」
男とはときに、
行き場のない憤りが周囲への威圧として現れてしまう、悲しい定めがあるのだ。
そんな心境のまま、俺はゴロゴロと床を転がった、ゴ〜ロ ゴロゴロ ゴロリンちょ
石床は、なんだろう
温泉の作用なのか、
ヌメヌメしてないけど、ヌメヌメして見えるというか…
そう、なんか鍾乳洞とかの岩みたいな感じ。
「これは、寝れる」
地熱があるからだろう、
床暖房みたいで温かい。
外はすこし肌寒い気温だったし
俺はここで寝る!
準備万端なキャンプセットがないことを、
猫草が背景の暗闇でミルキーが呟いた
「まあ、野宿も想定して毛布を持ってきてるッス」という発言で俺は知っている。
そして思った、
も、も、毛布しかない、だ、と!??
YES、俺、現代人。
肌寒い、見知らぬ場所、
それも霊物なんていう、ヤバそうなモンスター?
まだ見てないけど…俺の想像ではゴースト?
よくわかんないけど
とにかく、
そんなとこで、焚き火とかもなく
毛布だけで野宿とか無理!
絶対無理!
マジ無理!!!
その全ての憂いを解決してくれた
この温泉洞窟、
「ありがとうございます、ありがとうございます」
俺は床に頬ずりをした、
それを見てしまったミルキーが、後ろで「うわっ」とか言ってたが気にしない。
そんなとき、
ふと見つけてしまった
小さい穴 。
「なんだろコレ、排水口?」
アイスのレギュラーカップほどの大きさの
その穴は、ほんとに、それっぽかった。
どこからともなく流れてきた温泉の湯が、
その穴の中に静かに落ちていた。
俺は寝転がっていた身体を起こし、
肘を立てて、よくよく覗き込む。
。
奥は暗くてよく見えない
かなり深いのかもしれない、
内側には一段、わずかにくぼんだ棚のような
段差がついている、
妙に滑らかで
自然にできたものとは思えない。
縁を指でさすり、うーん、と首を傾げる。
まるで、誰かが〝何か〟のために、
この場所に〝ちょうどこのサイズ〟の穴を穿ったかのように思えた。
「うん、まあ、たぶん、自然がおこした奇跡ってやつだな」
俺はひとり頷き、温泉洞窟様により熱い信奉の念を抱いたのであった。




