表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

演劇の中の演劇(笑える系)

とある社会人で構成される市民劇団。主宰の佐伯は、手元のノートを軽く閉じて皆を見回す。


「さて、次の公演なんだけど、何かテーマ案ある?」


 すぐさま白井が手を挙げた。

「いっそさ、この劇団そのものを題材にしちゃおうよ!」


「自分たちを芝居に?」古賀が眉をひそめる。

「なんか手抜き感ない?」


「手抜きじゃないよ。むしろリアルで面白くなると思う」成瀬は肩をすくめた。


 裏方兼役者の原田も頷く。

「裏方の俺にも出番あるってことだろ? それなら賛成だ」


「よし、決まりだな」佐伯は笑みを浮かべた。「この会議風景もそのまま芝居に入れよう」


「おいおい、今この会話も入れる気だろ」古賀が突っ込むと、全員が顔を見合わせて笑った。



そしていよいよ公演当日、開演される劇のタイトルは「演劇の中の演劇」である。


(稽古場。丸テーブルを囲んで5人が座っている)


佐伯「さて、次の公演、どうしようか」

白井「いっそ、この劇団そのものを題材にしない?」

古賀「自分たちを演じるってこと?」

白井「そう。今してるこの会話もそのまま台本に」

成瀬「リアル感あるな。裏方のドタバタも全部見せられるし」

原田「俺にもセリフがあるなら賛成」

佐伯「じゃあ決まり。この会話も舞台に出そう」


(暗転。照明が点き、舞台上。全員運動着姿)



佐伯「声出し行くぞ! あえいうえおあお!」

全員「あえいうえおあおー!」

成瀬「古賀、もっと腹から!」

古賀「あえいうえおあおぉぉ!」

白井「必死すぎて笑える!」


(全員で柔軟体操。前屈や開脚)

原田「はい、開脚~。おい、机倒すなよ。本番用だぞ」

古賀「柔軟と机、関係ないだろ!」


(台本を手に取る)

全員「我々は劇団である!」

白井「……これ、客どういう顔するかな」

佐伯「笑ってくれれば勝ち!」



(机や椅子を運び込む)

原田「小道具セット完了!」

成瀬「背景パネル、あと5センチ右!」

古賀「照明もOK!」

白井「客席の視線チェックよし!」

佐伯「全員、配置について!」



(全員、舞台中央で円陣)

佐伯「これで準備は整った!」

全員「いよいよ本番だ!」


(暗転。効果音:幕が上がる音)


―― 終 ――


―― 数日後。稽古場。


公演から数日後、稽古場は妙な熱気に包まれていた。

佐伯がスマートフォンを片手に大声をあげる。


「おい! 昨日の公演の動画、再生回数がもう百万超えてるぞ!」


白井は目を丸くし、古賀は信じられないといった表情を浮かべる。

「“裏側まで全部見せる斬新すぎる舞台”ってSNSでバズってる!」


成瀬はパソコンを開き、ニュース記事を読み上げた。

「『若手劇団の奇策が演劇界に新風』だってよ!」


原田は椅子にもたれかかりながら、にやりと笑った。

「これで俺たち、一躍有名劇団だな」


5人は顔を見合わせ、同時に拳を突き上げる。

こうして彼らは、まさかの形で名を広めることになったのだった。 


終わり


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ