第7話 おもかげ
私たちは余韻もそこそこに先程の作業の続きを始めた。
「「良かった……」」
私はレベッカが家の中に入ってから心の中でそう呟いた。
私はキララちゃんから少し離れると息を吐いてそう呟いた
それからは黙々と作業をしていた。それでも先ほどのモヤモヤがなくなって私は作業は捗るのだった。
「キララちゃん、夕日が沈むよー。お家に入ろ!」
「うん、もうちょっとだから……」
(昔と変わらないですね。)
そう。昔から中途半端は嫌だった。
子供の頃……
「キララちゃんお日様沈んじゃうよ。」
「待って!もう少しで描けるから……」
「明日でもいいじゃん。」
「ダメ!明日はレベッカに会えないかもじゃん!私が学校で居残りになったら来れないんだよ!」
「それはキララちゃんが学校でいたずらするからじゃ……」
「違うもん!学校の先生が私に意地悪するだけだもん!」
結局お母さんが迎えに来るまでレベッカの家にいた。
「分かりました。では、夕食作ってますね。」
「うん、これ組み立てたら入る!」
私はレベッカに返事をして今日最後の作業に入った。そうして本当に日が沈んでしまって、続きは明日に持ち越しとなった。
「レベッカお待たせ!」
「待ちくたびれましたよー。シチュー作りました。また温めるからその前に手を洗って来て下さい。」
「はーい。」
私は返事をして洗面所で手を洗った。そして戻ると台所でシチューを温めているレベッカがいた。この家は竈門に薪を入れて火を着けるタイプの構造だ。私は魔法で火を起こせるがレベッカは魔法が使えない。なので今日マッチを買ってきたのだ。私が遠出の依頼を受けた時にも必要だったからだ。
「やっぱり私も魔法を覚えようかしら?」
「どうして?」
私はレベッカの何がない一言に疑問を持った。
「だって、あった方が便利じゃないですか、水も火も使えた方がもしもの時に役に立ちますし……」
「と言ってもなー……レベッカは魔力あるの?」
「……ないですね。」
「ないなら使えないよ。私は不得意だけど……一応あるからね。」
私は魔法が苦手だ。でも、使えないわけではないのだ。その為に火を起こす事くらいは出来るようになったのだ。
「魔力って分けられないんですか?」
「出来たら苦労してないわ。それに結局自ら魔力を作れないと意味ないわよ。」
「そうですね。私はマッチを使って頑張ります。」
少し膨れっ面になるレベッカ。昔のままである。
子供の頃……
「キララちゃんはいいなー。身体が元気で。」
「そうかなー?私はレベッカみたいに頭良くないからレベッカが羨ましいよー。」
「キララちゃんはその前に勉強してないでしょー。知識があるから頭が良く見えるんだよー。」
「違うもん!あれは先生の教え方が悪いんだよー!」
「私もキララちゃんみたいに走り回りたいんだよ。身体が元気なら良かったのになー……」
「元気になったら走ればいいよ!一緒にね!」
「一緒に走ってくれるんですか?」
「あー……私足早いから置いて行っちゃうかも……」
「私だって元気ならキララちゃんに負けないよ!」
「無理無理!だって私は学校で1番速いもん!」
私がそう言うとレベッカは膨れっ面になって不貞寝したのでした。あの後も謝るので大変だったなー……
そして現在私の前にはあの頃と同じ様に膨れっ面のレベッカがいた。
「はいはい、不貞腐れないの。私も火を起こすくらいしか出来ないからね。子供の時みたいに自慢したりしないよ。」
「不貞腐れてません……」
明らかに声は不貞腐れているがそれを言うと更に不機嫌になる為言わない。
「はい、これ。」
私はレベッカにある物を渡した。
「雑貨屋さんに置いてあったの。クローバーの髪飾り。私が初めてあげたのは四葉のクローバーだったでしょ。だからこれは……再会を祝してという意味でね。」
「キララちゃん……付けてくれる?」
嬉しいのを少し隠して膨れっ面のままレベッカは言った。私は髪飾りをレベッカに付けてあげた。
「似合ってる?」
「うん。レベッカだからよく似合ってるよ。」
「機嫌取ろうとしてるでしょー。見え見えですよ……シチューのおかわりよそって来ますね。」
そう言って持ってきたシチューの中身はお肉増し増しだった。
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