第5話 私刑
私を助けてくれたのは私より小さな女の子でした。
「そこのグス、今すぐその子から離れないともう1発放つわよ?」
もの凄い圧を感じます。目の前の男は顔を青くして走って逃げて行きました。
「大丈夫かしら?」
「あ、は、はい!ありがとうございました!」
私は深く頭を下げてお礼を言います。
「お礼はいいわ。もう貰ってるから。」
「えっ?」
お礼は貰ってる……この言葉の意味が分かりませんでしたが、どう言う事なのか聞こうとしてると女の子の方から話をしてきました。
「あなたがキララの親友なの?」
「あっ、キララちゃんの知り合いなんですね。親友……そうですね。今は親友です。」
どうやらお礼はキララちゃんから貰ってるようでした。
「今はか……良いわね。仲良くて。」
「あの、あなたはキララちゃんのお友達ですか?」
「友達?違うわよ。ただの仕事仲間よ。あ、私はリーフね。よろしく。」
「あっ、失礼しました。レベッカです。よろしくお願いします。リーフさん。」
私たちが握手しているとキララちゃんが帰ってきました。
時は少し遡る……
買い物はすぐに終わった。買ったのは小型ナイフと食事用のナイフだ。小型ナイフはレベッカの護身用。食事用ナイフは最近切れ味が悪い為に買ってきたのだった。そしてなぜかリーフが店にいた。
「ふーん。それで今日はその親友さんとお買い物なわけね。」
「ええ、一緒に住むなら何かと物入りだからね。」
「……ねぇ、キララって平常時いつもそんな締まりのない顔してるの?」
私はいきなり変な事を言われて慌ててしまう。
「な、何よ!締まりのない顔って⁉︎」
「その顔よ、まぁプライベートだし、気も抜かないとダメだと思うけどさ……流石に抜けすぎだと思ったのよ。」
「い、いいでしょ!いつも気を張ってばかりいられないのよ!」
「はいはい、そのデレデレの顔じゃあ説得力ないわよ。」
めちゃくちゃ揶揄ってるので言い返そうとしたところ私の目にあるものを捉える。それはレベッカがナンパされてるところだった。
「リーフ……ここからあのクソヤローを撃ち抜く事が出来るかしら?」
「な、何よ急に鬼の形相して……あーあの子がキララの親友なわけね。」
「いいから……打ち抜ける?」
「できるけど、道を聞いてるだけかもよ。」
「いや、あの顔はレベッカが嫌がってる顔よ。」
「よく見えるわね……恐ろしい。良いけど構えるだけよ。本当に道を聞いてるだけなら私が犯罪者になっちゃう。」
そう言ってリーフは弓矢を構えた。そして男が拳を振り上げた。
「あっ、黒ね。腕を狙うわよ。」
「構わない。お礼は金貨2枚ね。」
「毎度あり!」
そしてリーフの矢は男の腕に突き刺さった。
「追加で金貨1枚あげるからあの子の側で警護頼める?」
「そこはサービスしてあげるわ。その代わり今度ご飯奢ってよ。」
私は頷いて一旦リーフから離れて男が逃げて行った方向を確認して走って行った。
男は路地裏に逃げ込んでいたのを私は見逃さなかった。良いところに隠れてくれた。
「チッ……付いてねー、なんであの弓使いがいるんだよ……」
「私がやれって言ったからよ。」
私は男の背後を取り、込み上げてくる怒りを抑えて言った。
「なっ!なんでお前がここに……」
「ケジメ付けに来たのよ。私の親友に手をあげるとか絶対許さないから……」
男は逃げられない。そのくらいの殺気を私は放っているのだから。
「アンタは確か私にも前ナンパ仕掛けて返り討ちに合ってたわね。」
「覚えてたのかよ……」
「あの時は五体満足で帰してあげたのにまだ同じ事してるんだ……嘘つきは確か舌が2枚あるって言うんだけど本当なのか確かめさせてよ。」
「あああ……」
「ほれ、口を開けて舌を出してみてよ……」
男は逆らう事なく舌を出した。
「ふぅーん……下は2枚ないのね。じゃあ嘘つきじゃないのかー……」
男は少し安堵の顔をしていた。だけどこんなんで終わる訳がない。
ザクッ……
「!!!!!」
男は声にならない叫びを上げた。何をしたのか……私は先程買った食事用のナイフを舌に刺したのだ。それとほぼ同タイミングで男は舌を口の中に戻したのだ。その為舌が裂けたのだった。
「あーあ……私は刺したら許してあげるつもりだったのに自分で傷を広げちゃったわね。」
男は口を手で押さえてこちらの言葉など聞いていない。
「次あの子に近づいたら殺す……視界に入っても殺すから……この街から出ていけ……いいわね?」
男は壊れた人形の様に首を縦に振っていた。こうしてケジメを付けた私はレベッカの元に戻った。
この国では私刑が許されている。警察が賄賂などで機能しておらず裁かれないからだ。だからこそギルドが治安維持を行なったり、自警団も作られてる。全てが信じられるわけではないがこの国では自分の身は自分で守らないといけないのだ。
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