第4話 買い物
翌日……私たちは早起きして材料の買い出しに来ていた。
「ねぇ、キララちゃん。」
「なに?」
「どうして家具を買わないの?」
昨日も同じ質問をされた様な……
「買うより作りたいからよ。」
「分からないなー……買った方が早くて楽なのにー。」
「まぁもう1つ買わない理由があるんだけどそれは言わない。」
「ええー教えてよー!」
「教えなーい。笑われるもん。」
笑い合いながら押し問答をしつつも買い物を終わらせていく。なるべくなら2、3日分の買い物はしておきたい。その為に今日は手押し車も借りて来ていた。
「それにしても……キララちゃんは本当に力持ちだね。」
「毎日鍛えてるからね。」
「でも、こんなに沢山食糧庫に入るかしら?」
「一応食糧庫は2つ用意してるから大丈夫なはずよ。」
「2つも⁉︎私のお屋敷でも4つだったのにキララちゃんはお金持ちなんだね。」
「ふふふ。作れる物を自分で作ってるからね!その浮いたお金で作れない物を買うという節約術よ。」
「キララちゃんはやっぱり凄いよ!」
「えへへ。そぉ?」
レベッカに褒められて頬が緩んでしまう。
「キララちゃんは褒められるといつもその顔するよね。ギャップがすごいよ。」
「レベッカにしかこんな顔しないよー。」
私はニコニコ笑いながらレベッカと話していた。そして手押し車の中身を見て買い忘れがある事に気がついた。
「あ!ごめん買い忘れてた物があるから少し待っててくれない?」
「わかりました。では、あそこのベンチに座ってますね。」
そして私はレベッカとついでに手押し車も置いてお店に戻りました。
キララちゃんが離れて私はベンチに座って人の流れを見ていました。
(こんなに沢山の人を見るのは初めてです。)
人混みを眺めながら私はふと1月前のことを思い出しました。それは住んでいた街にあるラクリマビジョンに映し出されたキララちゃんと剣帝さんとの戦いでした。
「あの!彼女は今何をしているの?」
私は近くにいた女性にラクリマビジョンに映し出された現状を聞きました。
「なんだい、知らないのかい?年に一度の剣技大会だよ。毎年優勝の剣帝ルシア・ゴード様と初出場にして初の決勝に進出したキララ・ハーロックの試合だよ!」
本当に偶然でした。たまたま空を見上げた時にラクリマビジョンが目に入りその中に愛しの女の子が戦っていたのです。
「まぁでも、今年も優勝はルシア様だろうけどね。」
「えっ?」
私は思わず聞き返してしまいます。
「あの子はここまでよくやったと思うわ。この戦いは相手より先に剣を3回当てればいいのだけど今あの子はもう2回当てられてるのよ。」
「と言う事は後1回で……」
「そう負けよ。でも、あの子はよくやったわ。なんせあのルシア様に1回当てたのだから。ルシア様が当てられたのなんて7年ぶりだもの。」
誇らしげに言う女性はおそらくキララちゃんのお相手のファンなんでしょう。でも、私は……それでも親友に勝って欲しいと願いました。
「……ゃん」
「頑張ってキララちゃん!」
私の声と同時でした。なんとキララちゃんの剣がお相手に当たったのです!その瞬間周りからは歓声と怒声と悲鳴が上がりました。そうして延長戦へと入りましたがお相手さんの優勢という事でキララちゃんは負けてしまいました。そして私はそれからしばらく考えた後、父と喧嘩、そのまま家を飛び出しキララちゃんの居る街へ来たのでした。
(あの時から私はずっとキララちゃんは憧れで、大切な親友で……今は……何になるのでしょうか……戻ってきたら聞いてみますかね。)
そう思い少し頬が緩んで1人笑っていると誰かが話しかけてきました。
「君可愛いね、良かったらお茶しない?」
どうやら私は今ナンパされてる様です。
「いえ、人を待ってますので……」
「へぇー、その子も女の子?じゃあ3人で楽しもうよ!」
今もこんな方はいらっしゃるのですね。でも、もうすぐ帰ってくるはずなので断ります。
「いえ、お気遣いなく……」
「いやいや、ここまで誘ってるのに断るなんてあり得ないでしょー?良いから行こうよ!」
彼が私の手に触れた瞬間鳥肌が立ちました。私に触れていいのはキララちゃんだけなのです。これは明らかな拒否反応。私は全力で捕まれた腕を振り解きました。
「いい加減にしろや!クソボケが!」
「えっ……?」
「私はお前みたいなチャランポランなんて1ミリも興味ないのよ!分かったらとっとと失せろ!」
これは昔侍女に就いていてくれた方が教えてくれました。可愛い子ほど野蛮な言葉を使うと男性は縮こまるのだと。しかし妙にプライドが高い男性だと逆情する事もあるとの事。どうやら今回は後者だった様です。
「こ、この俺にそんな言葉……許さない!」
男性は右拳を振り上げました。私は咄嗟に手で頭をガードをしました。しかし一向に何も起こらない為目を開くと男性の振り上げた右拳の更に上にある腕に矢が刺さっていたのです。
「お兄さん、それはダメでしょー、男が女に手をあげるなんてさー……」
声のする方を見ると緑髪の少女が弓を構えて立っていました。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
次回更新もお楽しみに!
宜しければブックマークと下の星マークから評価をして頂けると幸いです!