第16話 半分こ
ひとまずレベッカをベッドに寝かせた後、私はクルス先生にあるものを渡した。
「何これ?」
「診察代です。」
「要らないわよ。」
「えっ?」
普通に言われてしまって私はポカンとした。
「まぁ昨日の時間外手当分の金貨2枚は受け取っておくわ。」
「待って待って!要らないってどう言う事ですか⁉︎」
私は慌てて説明を求めたがクルス先生は呆れた様に答えた。
「はぁ……何も知らないのね。いい、ここはギルドが直属で運営してる診療所なの。戦いによる心の傷や、被害者の方々への診療をメインにしてるの。」
「はい、それは知ってます。でも、私の時はお金貰ってましたよね?」
私の時はまだ新米でそこまでお金を待ち合わせておらず建て替えて貰ったのだ。大体金貨10枚くらいだった。それ以上は先輩たちは貰ってくれなかったが、恐らくそれ以上の額を先輩たちが支払ってくれてたはずだ。
「そう、だからギルドが私を買い上げたの。患者1人につき金貨5枚毎月支払われてるの。」
「それだけ聞くと昔はかなりぼったくりしてたんですね。」
その言葉の直後に私の頭には日誌が叩きつけられたのは言うまでもない。私が頭を押さえてる間も話は続く。
「人の痛みを聞くのは意外とこっちもキツいのよ。キララも分かったでしょ?レベッカちゃんの心の傷の一部を聞いただけでも結構考えさせられたはずよ。」
「まぁ……確かに……」
確かにレベッカの話を聞いてそこからスムーズに聞き出したのだから凄い。
「ん?でも、その場合患者さんが来なかった月はどうするんですか?」
「その時はギルドが1月分の金貨30枚くれるわ。だから食いっぱぐれはないのよ。」
なるほど上手く出来てるわけだ。
「それより、これからレベッカちゃんを鍛えてあげなさいよ。」
「はい?」
急な言葉に素っ頓狂な声を上げた私にクルス先生は当たり前の様に話し出した。
「これから2人で生きて行くのなら当然キララがずっと一緒に居られる訳ないでしょ?キララにも仕事があるんだし、遠征の時とかどうするのよ?」
「でも、あの子は病弱のひ弱な子だから……」
私が次の言葉を言う前にまた私の頭に日誌が叩きつけられた。何故私にはレベッカの様に優しくしてくれないのだ。
「何甘い事言ってるの!山賊が弱ってたとは言え、しっかり対応できた子よ!そんなにひ弱な訳ないでしょうが!」
「でも、それでまた病気が悪化したら……」
「まさかキララがここまで過保護とはね……」
呆れた様にため息を吐かれた。
「あのね。甘やかすだけが優しさじゃないのよ。時には厳しくするのも優しさなの。キララも先輩たちに厳しく鍛えられたから一人前のハンターになれたんでしょ?」
「そうですけど……」
「まだ不安があるのなら検査して貰えば良いじゃない。」
そう言ってクルス先生は1枚のメモ用紙を渡してきた。
「ここに私が信頼してる先生がいるわ。明日にでも行って異常がなければキララの不安は消えるでしょ?」
そこにはこの街で有名な病院の名が書いてあった。
「昨日会った先生が元レベッカちゃんの主治医だった先生らしいのよ。昨日たまたまキララがいきなり診療終わりの時間に来てってグチ言ってたらその話で盛り上がってね。それで連れて来たレベッカちゃんの特徴話したらピタリと名前を言い当てたの。今も心配してたみたいだしこの際よ。顔出してきなさい。」
「わ、分かりました……」
私はメモを受け取ると名前を見た。
(シャーモ・シュプリンタ先生……か)
私はメモをポケットに入れた。
「あ、ついでにキララも診たんだからキララの分も請求しとこう。」
「どこが診たんですか!?」
この人は全盛期からお金への執着心が強い事を私は後にアーネの頭から知ったのだった。
目が覚めたレベッカを連れて私たちは帰宅していた。まだ顔は熱っていたがそれは私もだった。
「えーっと……レベッカは大丈夫?」
「え、ええ、なんとか……」
「そう、よかった。ところでさ……」
私は先程貰ったメモを取り出した。そこに書いてあった名前を見てレベッカの目が見開いた。
「シャーモ先生……えっ?なんでキララちゃんが知ってるのですか?」
「クルス先生が昨日学会で会ったらしいのよ。近いうちに行きましょう。」
「では、明日にでもよろしいですか?」
「えっ?いいけど……大丈夫?」
「大丈夫ですよ!キツかったら言うので安心して下さい。」
まぁこう言ってるから私はレベッカを信じる事にした。
そして夜……私は寝ているレベッカを後ろから抱きしめた。
「……2人っきりでもなんだか恥ずかしいね。」
「する方はかなり勇気いるけどね。」
少しの沈黙の後、レベッカから話始めた。
「私……結局怖かったんだと思います。」
「そりゃー、初めて襲われたんだから当然じゃん?」
「いえ、そこからじゃなく……初めからです。」
「初めから?」
抱きしめてるからかレベッカが深く呼吸したのが分かった。そして私の手を握ってきた。
「キララちゃんに会う前から怖かったんです。」
「……どういう事?」
私は本当に分からず真剣な声で聞いてしまった。まさに威圧する感じでだ。心の中ではやっちまったー。と叫んでいたが意外にも普通に話出してくれた。
「本当はキララちゃんは私の事をもう忘れてるんじゃないかって……」
「うん……忘れようとしてた……でも、忘れ切れなかった。」
「ありがとう……素直に言ってくれて……たぶんそれ以外にもキララちゃんには迷惑をかけてたと思うんだ。」
「えっ?」
「今日クルス先生と話してて気づいたの。私の前とみんなの前のキララちゃんは違うんだって。」
レベッカの言葉に私の心臓がドクンっと高鳴った。
「……うん。違うね……でもそれは……レベッカのせいじゃない。私の弱さが人を信じれなくしてた。だからみんなには強くて心配させない自分を演じてた。」
「ありがとう……でも、私のせいだよ。」
「……じゃあ半分こにしよう。」
「どういう事です?」
レベッカは私の方を向いて聞いてきた。
「お互いに悪かった。だからこの事は半分こにして終わりにしよう。」
「半分こ……ありがとう……キララちゃん……」
「うん!」
私はレベッカを引き寄せて頭を撫でた。そしてそのままレベッカは眠ってしまったので私も眠りについた。
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