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第12話 トラウマ

 2人が見えなくなったのを確認してから私はレベッカに近づいて、耳を塞いでいた手を外した。


「もう目開けていいよ。」


 ゆっくり目を開けるレベッカはとても美しく見えた。そして目を開けた瞬間大粒の涙を流し始めた。


「キララちゃん……!」

「ちょっ!何で……」


「うわーん!キララちゃん!」

「ごめんね。1人させて……」


 私はレベッカを抱き寄せ背中を撫でて落ち着かせてあげた。そしてレベッカを見る。怪我がないかを確認する為に。


(服の汚れはあるけど怪我はない……)


 怪我がないのは良いことだが……無傷なのは何かおかしい……


「ねぇ、レベッカ……」

「はい……」


「どこか痛い?」

「えっ?……特には?」


「そう……なら良かったけど……」


(つまりあの男がそこまでの男じゃなかったのか……それともレベッカに何か才能があるのか……今後は少し注意しておかないと。)


 やはりしばらくは1人にはさせられない。それだけは分かる1日だった。








 午後からはお昼の続きだ。私はレベッカを連れて竹林に来ていた。とりあえず今日1日は私から離れたくないという事で腕を掴んで離さない。


(嬉しいが……仕事はやりづらい……)


 なんとも言えない気持ちだが怖がらせた挙句危険な目に遭わせたから致し方ない。


「ねぇ、レベッカ?」

「なんですか?」


「動きづらくない?」

「……ですね。」


 レベッカはそう言うと離れた。温もりが無くなったのは寂しいが作業はしないといけないため続ける。


「そう言えばキララちゃん。」

「なに?」


「どうして私が危ないって分かったの?」

「なんでだと思う?」


「……聞いてるのは私なのですが?」

「そうね。まぁ嘘言ってもしょうがないし、正直言うと同業者のハンターが山賊を取り逃がしたって言ったから嫌な予感がしたのよ。そしたら案の定だったってわけね。で、レベッカが目を開ける前にその人が持って帰ったのよ。」


「そうだったんですね。」

「そう言う事、近いうちにギルドに顔を出さないとね。何かあればあそこはギルドメンバーの身内にも親身になって対応してくれるし。」


「はい、楽しみにしています。」


 私たちはその後も作業を進めて家路についた。その後はお風呂作りだ。なるべく1人で作りたいが今回は助っ人を連れて来なければならない。だがそれは後回しだ。


「レベッカは家の中の事する?それとも私の手伝いをする?」

「うーん……私は家の中の事をします。キララちゃんみたいに力持ちではないですから。」


「そっか。じゃあ中はよろしくね。」

「はい!」


 レベッカが家の中に入って行ったので私は作業を開始した。しかし……


「あの……やっぱり手伝います。」

「うん、いいよ。」


 少し顔が青い。先程までと顔色が明らかに違うのはおそらく昼前の事を思い出したのだろう。というかこれはカウンセリングに連れて行くべきか……


「レベッカ……街に心のケアを専門に診てくれる人いるんだけど行かない?」

「えっ?だ、大丈夫ですよ!今日の事は今は怖かったですけど、数日で治ると思います!」


(あー……昔の私だ……)


 私が新人だった頃、初めて山賊を斬った時、私は戦闘が終わった後吐いた。初めて人を殺したのだ。その時他のハンターからカウンセリングを受ける様勧められて今のレベッカと同じ事を言ったのだ。


(まぁ……無理やり連れて行かれたのも良い思い出だ。)


 なので私もあの人達と同じことをする。


「良いから行くよ!心の傷は見えないからほったらかしにしがちだけど1番大事な身体の部位なんだからね!」

「えっ、ちょっ……キララちゃん⁉︎」


 私はレベッカの手を引いて家の中へ入り街へ行く為の服に着替えてレベッカに有無を言わさず着替えさせて連れて行った。




「先生!今大丈夫⁉︎グハッ!」

「来るなら静かに来い!予約して来い!そして今日は終いだ帰れ!」


 私に飛んで来たのは日誌だった。そしてそれが私の顔にモロに当たって鼻を押さえて謝った。


「す、すみませんでした……」

「ん?キララか?お前が来るのなんて珍しいな。つーかお前はもう来る必要ないだろう?」


「私じゃないですよ。クルス先生……この子です。」


 クルス先生は元ハンターの精神科の女の先生だ。昔は槍の名手で何度も武功を挙げていたが足の怪我で引退。その後は初心者ハンターや被害者の方のメンタルケアをしている。


「はぁ……生憎と今日の診療は終わってるんだ。明日来てくれないか?」


 クルス先生は頭をかきながら困った顔をされたがダメ元で頼んでみた。


「お願い!この子1人の時に初めて人に襲われて1人になると顔が青くなってしまうの!だからお願いします!」


 私は頭を下げてお願いした。あの時の先輩達の様に。しかしレベッカが止めに入る。


「キララちゃん。大丈夫ですから……帰りましょう。」

「……はぁ、あの時と同じだな。似た者同士め!分かったよ。少し診てやる。」


「ありがとー!クルス先生!」

「ええい、やかましい!お前は黙って外に出てろ!」


 という事で私は外に追い出された。とはいえ診察室に付き添うのはやっぱり気が引ける。私は外のベンチに座って待つ事にした。


「ごめん、キララ入ってもらえる?」

「えっ……う、うん。」


 1分も経たずに再び呼ばれる事になるのでした。

 ここまで読んで頂きありがとうございました。

次回更新もお楽しみに!


 続きの気になる方はブックマークをしてお待ち頂けると幸いです。

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