第11話 山賊
朝食を終えた後、私は竹林へと向かった。昨日の竹だけでは足りないからだ。なるべく邪魔な竹や伸び過ぎてる竹を探して切っていく。レベッカはお留守番してるため来ていないから切った竹は1人で持って帰る。幸いにもそこまでの数はいらない。だから1人でも良かったのだ。
「おっ、キララじゃねぇか。」
「おっ、ジャスのおっちゃん。仕事帰りですか?」
「あぁ、護衛依頼だ。山賊が出てな。そいつらを捕縛して連行してきた。お前さんは何してんだ?」
ジャスのおっちゃんは古株のハンターだ。ハンターになった頃に色々と教えて貰ったし。何より強い。それも剣と槍と言う中距離戦と短距離戦両方でだ。剣でなら互角以上で戦えるが槍だと殆ど手も足も出ないレベルで強い。獲物は槍を使う為槍を携帯している。
「山賊ですか……ここ最近いなかったんですがね。」
「あぁ、増える前に潰したかったんだが……1人逃しちまった。」
「護衛依頼ですから。商人と荷物を守れたら良いのでは?」
「まぁ……そうなんだがな……逃したのが長だったらしい。最も捕まえた奴らが罪をなすり付けて逃げた奴に全ての責任を押し付けたのかも知れんがな。」
「……それってこの近くですか?」
私は急に不安になりジャスのおっちゃんに聞いた。
「中間距離だな。街と街の間くらいだったから……っておい!」
私は聞くや否や走り出していた。レベッカが心配になったからだ。
(当たらないで……私の勘!)
その頃レベッカは……
「もう!私はお留守番なんて酷いです!」
私は怒っていた。確かに家事をやらないといけません。しかし昨日は買い物も連れて行ってくれたのに今日は簡単な作業だから待ってて……
「簡単なら連れてってくれてもいいのにー!」
こうやって大声出してストレス発散をしていた。とは言えそこはいつまでも子供ではない。キララちゃんが帰って来た時に褒めてもらう為に私は家事を頑張ります。
ガサガサ……
どこからか音がしました。森の中なので動物もたくさんいます。私は気にせず庭の掃除をします。すると茂みから誰か出て来ました。
「……誰ですか……?」
私は茂みから出て来た男性に声をかけます。しかし男性は黙って狩猟刀を抜きました。
(これは……拙いです。)
私は昨日貰った護身用のナイフを手に取ります。
「食い物を……よこせ……」
「食べれば……帰って貰えますか?」
「……あぁ……」
とにかく刺激しない様に私は目線を逸らさず男性を見ながら家の中に入り近くにある果物をざるごと渡しました。すると男性は中に入っていた。オレンジを皮ごと食べました。
「ふぅ……これで少しは力が入るな……」
「それは差し上げるので……帰って貰えますか?」
「お前さんは良いところのお嬢さんの様だな……なら教えといてやる……」
私はナイフを手にしっかり握った。昔侍女が言ってました。相手がいなくなるまで気を抜いてはいけないと……そしてそれは正しかったです。
「お前を殺せば中の食い物が全て手に入るんだ!帰る訳ねえだろうが!」
私はより一層手に力を入れます。そして男性の狩猟刀が振り下ろされます。そして何故かそれはゆっくり見えました。走馬灯とはこういうものかと思っていましたが……
(あれ?これなら……)
私は狩猟刀が振り下ろされる前に横によけていました。
「なに⁉︎」
男性は何故避けられたのか分からず目を丸くしていました。
「チッ……まぁ本調子じゃないからな……」
「はぁはぁ……」
私も避けれたのは良かったものの男性がこんなに近くにいた事も殺気を受けた事も今まで無かった為少し過呼吸になっていました。でも……
(自分の身は自分で守らなければ……キララちゃんにばかり頼っていられません。)
その気持ちから一旦冷静になりました。
「さっさと死にやがれ!」
そのひと振りを私は再び見る事が出来た為、地面を転がって避けました。
「なっ!クソが!ちょろちょろ動き回るんじゃねぇ!」
そのひと振りは見えました。しかし転がってしまった為に立て直すことが出来ませんでした。しかし直接男性の眼前を何かが飛んでいき。その何かはその先にあった木に突き刺さりました。
「竹……」
「ねぇ……私の彼女に何してくれてんの……?」
私は声のした方を見ました。そこには……
「キララちゃん!」
「げっ!ここキララハーロックの家だったのかよ!」
男性の顔は色を無くしていました。
「レベッカ……目を閉じてて。」
「えっ?」
「良いから……目を閉じて、耳も塞いどいて……」
いつもの声にいつもの笑顔……だけどいつもと違う何かが含まれていました。
「レベッカが世話になったわね……」
私は静かな殺気を飛ばす。それを見た男はレベッカに近づこうとしていた。恐らく人質にするつもりだろうが……目の動きと同時に私はレベッカに近づかせない様に背中に背負った残り3本の竹の中から1本を素早く取り相手の足元に投げつけた。
「チッー!」
私が投げつけた竹はレベッカに近い方の足を狙って投げたのだ。そうする事で相手はレベッカから離れなければならない。
(クソ!ここでこいつとやっても勝てねぇ……かと言って人質に使える人間からは距離を取らされた……どうする……)
などと考えてそうだ。だがそんな事はどうでもいい。コイツはレベッカを怖がらせて殺そうとした。その落とし前を付けなければならない。私はものすごい殺気を相手に向けた。
(ぐっ……クソ……勝てる気がしねえ……逃げ……逃げる事を考えなければ……)
男は急に後ろを振り向き走り出した。まぁ予想通りである。あんな殺気を受ければ並大抵の人間は逃げるだろう。しかしその先には……
「はい、ご苦労さん。」
「お、お前は……!」
その直後ジャスのおっちゃんの剛拳が男の顔面を捉えた。その顔面は鼻が陥没し、前歯は全て折れていた。
「で、どうするよコイツ?」
「……殺したいけど……コイツを殺したい人間なんて数えきれないほどいるんでしょ?だったら司法に任せるわ。」
「そうか……助かるよ。」
「いいわよ。おっちゃんには借りが沢山あるしね。」
「あの〜キララちゃんそろそろ良いですか?」
レベッカに言われて私は話を纏めた。
「ほら、早くソイツを連れてって……あの子に血生臭い所は見せたくないのよ。」
「……お前……」
「何よ?」
「キララ……ちゃんって……」
「えっ?」
「だってよー……あの最強女ハンターのキララがちゃん付けって……ギャップが……」
笑いを堪えるおっちゃん。後ろから蹴り飛ばしたい。
「それであの子は……」
「親友ですよ。」
「そうか……だが……お前に友達が居たとはな……」
「子供の時からの友達ですからね。」
私はそっぽを向いて歩き出した。
「おい、キララ。」
「なんですか?」
「大事なのは分かるが、大切にしてるだけが愛情じゃないぜ。」
「はい?」
「まぁよく考えろよ。」
おっちゃんは男の首を掴むとそのまま引きずりながら去っていた。
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