表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
江戸幕府再興会  作者: 零月隼人
9/14

第8章 「第二次禁門の変~後編~」

孝明と義信の刀剣が交わる。容永は決闘には参加せず、静観する構えだ。

当初、決闘は義信優勢に進むと思われていた。彼自身は、勇美より弱いと自分を卑下していたが、義信は武家の棟梁。徳川家では、幼少期から武芸の稽古は行われていたし・・・・・・それは現代にも受け継がれていた。

しかし、実際は孝明も思いの他健闘した。勇美に敗北したときとは比較にもならない。

前回は、自身の慢心が、敗因だ。孝明自身そのことは理解しており、猛省した。そのため、今回は油断せずに、最初から全力で迎え撃っているのだ。

しかも現在、自身の生死に関わる場だ。まさに命がけ。全身全霊をかけるのは当然である。

これに、義信は苦心する。

(クソ・・・・・・もう少し楽に勝てると思っていたのだがな。慢心していたのは私の方であったか。)

義信も、再度気合を入れ直す。

なお、両者が使用している刀剣は、それぞれ由緒あるものである。

まず孝明側、使用武器は「草薙(くさなぎの)(つるぎ)」。天皇家に代々伝わる三種の神器の一つだが、孝明は惜しみなく、今回それを戦闘に投入した。まさしく、神聖な力をその身に宿し、圧倒的なオーラを放っている。

一方の義信の刀は、「長巻(ながまき) (めい) 備前(びぜん)長船(おさふね)(じゅう)(しげ)(ざね)」。義信の祖先・徳川慶喜にまつわる刀で、こちらも伝説級の武具となっていた。

そんな両者の戦闘、互いに一歩も譲らない。

義信は、思わず相手の武芸に感嘆した。

天皇家は、たしかに古代より、権威の象徴として、時代によって強弱は違えど、その神聖力を誇ってきた。しかし、その根底にあるものは何か。もちろん、神の末裔という“伝承”による信仰心もあるだろうが・・・・・・同時に、強さという、目に見える能力も、一定以上あったのだ。でなければ、すぐさま討ち取られてしまっていただろう。

孝明は、2000年以上前の魂をその身に宿し、奮戦していた。

孝明と義信。天皇と将軍。立場は違えど、そこには何か、共通するものがあった。

単なる刀剣の応酬では、もはや勝負はつかない。

互いに、必殺技の撃ち合いが、勝敗を分かつ決定打になる、そう認識した。


先に動いたのは、孝明の方であった。

「神速“草薙”‼」

これこそが、孝明━━ひいてはこの草薙剣が持つ必殺技だ。その斬撃は神が如く、義信の身体に、無数の斬撃が刻まれた。

ここは伏見稲荷大社。今にも全焼しそうであるとはいえ、神聖なパワーが満ちている。これが孝明の技に拍車をかけたのだ。

これにて勝負は決し、義信は肉片と化す・・・・・・そう思われた。

━━しかし。

「何ィ⁉」

義信は、その攻撃を耐えきった。

「そんな、神の技ぞ・・・古来神武天皇より伝わる、伝説の一撃ぞッー‼」

孝明はワナワナと震えた。

義信は立ち上がる。

「今のは素晴らしかった。━━その技に敬意を表し、私も奥義を見せてやる。」

義信が刀を構える。

そして━━繰り出した。

「弑逆“下克奉還”‼」

義信の刀は底を切り、そのまま孝明の股から胴を斬った。

「グハァー」

孝明は吐血し、倒伏した。

「馬鹿な・・・・・・朕が、神の力を借りし朕が、負けることなどッ・・・・・・!」

しかし、今度は義信も、決して油断しない。前のように取り逃がす隙を与えるという失態は、もう二度と許されないのである。

━━義信は腰に手をやり、そこにあったものを抜いた。

「妙純傳持━ソハヤノツルギウツスナリ━」

「⁉そ、それは!」

息も絶え絶えの孝明だったが、義信の取り出したその刀の輝きに、思わず言葉を失った。

これこそ、もう一つの義信の愛刀であった。

そして何より。

「権現様━━江戸幕府初代将軍・徳川家康の太刀だ。」

これこそが、義信の奥の手。本気の刃。

妙純傳持は、平安時代の将軍・坂上田村麻呂の佩刀「ソハヤの剣」に由来する。

まさに、『将軍の刀』━━━

徳川家康の死後、この刀は遺言により、久能山東照宮に安置された。義信はわざわざ、そのように由緒ある刀を、本決戦に持ちだしたのだ。

義信は力強く言う。

「ようやくだ・・・・・・これでようやく、祖先の仇を取れる。

徳川家が受けた屈辱、晴らさせていただく‼

陛下、お覚悟を。」

「ーッ⁉」

孝明は、思わず息を呑む。

そして義信は、最後に一言付け加えた。

「陛下、あなたが神を祀るならば━━私は権現様を祀る‼」

そう言い、ついに義信は、孝明の首を刈り取った。

ここに、江戸幕府再興会vs禁裏、その決着がついた━━そう、思われた。

しかし・・・・・・


突如として、義信の身体を、一発の弾丸が襲った。

そして聞こえる、勇美の声・・・・・・

「将軍‼」

弾丸は・・・・・・

将軍を庇った、勇美の身体を貫いた━━━━━━

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ