第13章「Next Stage」
翌日。
将軍から全部員に、招集がかかった。
昨日のこともある、私は内心ひやひやしながら、部室に行く。
当然、才蔵もついてくる。ただ、才蔵の様子が、昨日までとは何か違った。なんか、覚悟を決めた目というか・・・・・・何かあったのか?
ともかく、私と才蔵は部室に入る。
中には、私達以外の部員は全員集まっていた。
思わず、将軍の方に目がいく。
しかし、彼の目は昨日とうって変わって、何か吹っ切れたような、そんな感じだった。
将軍が口を開く。
「近藤、土方、来たな。
これより、江戸幕府再興会の今後の活動方針を発表する。」
良かった、昨日のことが暴露される感じではないみたいだ。
特に才蔵には、知られると面倒そうだからね。以後も黙っておいていただきたい。
将軍が話を続ける。
「昨日も述べた通り、先の大戦にて、我々の最大の脅威であった“朝廷”は滅ぼした。これにより、いよいよ江戸幕府再興の計画が、軌道に乗り、一気に加速することとなる。」
マジか。これまで夢物語・絵空事だったものが、ついにガチで進むことになるのか・・・・・・
陰鬱である。
「ついては、第一段階として、我々の同志を呼び集めなければならない。だが、先の沖田のように、一人一人悠長にやっている場合ではない。
━━━そこで、二部隊に分けようと思う。」
ほう、両面作戦か、なかなか本格的になってきたな。
「まず、本隊を率いるのは私、徳川義信だ。補佐に容永、護衛に秀光。メンバーは旗本の6名。
これらは招集活動として、大名5名、旗本115名、御家人300人を目標に集める。」
ほう、なかなかの大所帯になるな。
「そして、別動隊の隊長には・・・・・・近藤、お前にやってもらいたい。」
ッ⁉
おい、黙って聞いていたら、突然とんでもない大役を任されたぞ⁉
「近藤は、私、容永に次いで我が組織ナンバー3。部隊長には申し分ないだろう。メンバーに、土方、沖田。
お前達には、各地方に散った、新撰組の子孫達を集めてもらいたい‼」
将軍はゆっくりとこちらへ歩み寄り、私の肩に手を置いた。
そして小声で言う。
「全てが終わったら・・・・・・答えを聞かせてくれ。」
みんなは何のことか分からず、首を傾げていた。
コイツ・・・・・・断りづらくするために、平然と圧かけてきた・・・・・・
ほんと、昨日とはうって変わって、さっぱりとしたものだ。
━━と、間に才蔵が割って入ってきた。
「・・・・・・負けませんからね。」
才蔵はニヤッと笑みを浮かべている。
一方の将軍は、余裕そうな表情だ。
「フッ、かかってきたまえ。」
?何の話だ??
将軍と才蔵、いやそれ以外のみんなも、私に注目した。
私は、ため息をついた後、答える。
「承知しました。上さまの御心のままに。」
全体でのミーティングが終わり、私は才蔵と掃除君と共に作戦会議を行う。
先ほど、上さまから交渉すべき新撰組末裔どもの一覧が手渡された。
以下、名前と所属校、備考を記載する。
永倉真蜂 徽典館高校1年Ⅰ組 永倉新八の子孫。
斎藤始 昌平坂高校1年B組 斎藤一の子孫。B組成績トップ。
松原中二 帰正館高校付属小野中学校2年一組 松原忠司の子孫。新撰組末裔最年少。
武田管流蔡 文明館高校1年ア組 武田観柳斎の子孫。文化祭実行委員。
井上元三郎 日野宿高校3年a組 井上源三郎の子孫。
谷十三朗 有終館高校1年安組 谷三十郎の子孫。
藤堂兵介 昌平坂高校1年C組 藤堂平助の子孫。
鈴木九十九郎 文学館高校1年α組 鈴木三樹三郎の子孫。鈴木家九十九代目当主。
見事に出身校はバラバラ、所在地は全国各地に及ぶ。
こんなのどうしろと?と思うわけであるが、上さまの無茶ぶりは日常茶飯事だ。
ちなみに。交通費は部費からは出ない(・・・)らしい(・・・)。
もう一度言おう、交通費は出ない(・・・)
マジでふざけんなって話である。
これについては、会計の小栗さんから謝罪があった。
「ちょっと部の出費がかさんでいてね~ 申し訳ない・・・・・・」
いえいえ、悪いのは全て上さまです。
どこにそこまでの出費があるのかはやや疑問があるが、今はおいておこう。
つまりは、これから我々は、とてつもない散財を余儀なくされるのであろう。
というわけで、計画の立案は必至である。
いかに最安費用で回れるか、それが勝負の鍵だ。
私は発言する。
「ひとまず、昌平坂の二人の勧誘から始めようか。近場から徐々に攻略していく。人数が増えたら行く地を手分けして、負担を分散させられるかもだからね。」
「そうだな。前みたいに、横やり入れてくる奴らもいるかもしれねー そんな時も、人数が多いほうが、こっちは優位だしな。」
才蔵は賛同してくれる。一方掃除君は、
「ふ、くだらん。計略など愚図、さっさと片づけるぞ。」
まともに会話をする気もないようだ。
……ほんと、このチームで大丈夫だろうか?
せめて旗本の先輩一人はよこしてほしかった……
勇美達が作戦会議をする一方で、義信達もまた、今後の計画を調整していた。
「さて、本隊の任務は先ほど述べた通りであるが、その中でも大名は優先的に確保しなければならない。旗本・御家人は、各大名に追従している者も多いからな。
すでに、毛利・島津は我が手にある。なれば、最優先は、徳川四天王だ。
酒井、本多、井伊、榊原——この四名はなんとしても仲間に引き入れねば‼」
容永が相槌を打つ。
「して、誰から赴きましょうか?」
他の旗本は黙って聞いている。
義信はしばし思案した後、答える。
「酒井は下総、本多は上総、井伊は近江、榊原は上野。
まずは筆頭酒井、下総━━千葉県温故高校に赴く‼」
将軍が高らかに宣言し、今後の方針が定まった。