表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失顔症のスナイパー。の相棒で花屋の俺様!と 、ゆうしゃのわたし。  作者: 大石猪口 oishi choco
俺様が花屋になるまで
11/14

B-side 7

 失敗とは何か。目的に未到達の状態であることか?なら、確かに俺は失敗したんだろう。それも、一度じゃ済まねえ。都合、七度の失敗を繰り返してる。たった一度、成功か失敗かの判断がつかねえ物もあったが、そん時のことは後回しだ。

 七度の失敗。数にしては中々だ。だが俺は知っている。世の技術ってもんは、数々の失敗の先に存在した、たったひとつの成功例であるってことをな。試行は、それを続ける限りにおいて、全てが成功への一歩となり得る。

 七度の失敗は、たった七度の失敗であり、全てが成功の一部分であるとも言えちまう。失敗は成功の母。昔のやつは、良いことを言うよな?

 だからよぉ、お母ちゃん。そろそろ産んでくんねぇかな?成功ってやつをよお。



 B-side bullet


 なんと綺麗なお花畑。ここはどこだ?ここは俺達の秘密基地だ。正確には、その裏にある荒れ地だった所だ。今朝、そこは完全にお花畑になった。

「心が洗われるようだな?」

(きれ~い)「うん。軍曹が、お腹を痛めた甲斐があった」

 まるで俺が産み落としたように言いやがるな?だが、シリルの言う通りでもある。あんなに痛えのは二度と御免だ。

 俺のスキルには、ペナルティが存在した。不適切とされる弾を生み出し、そいつを使用(発射)すると発動するらしい。

「2回までは、腹が痛いだけで済むんだよな?」

(うん。3、4回目は死んだ方がマシってぐらい痛いのに加えて、色んな所から血が出ちゃう。5回目はー、どうなるんだろうね?)

 別種の不適切な弾であれば、それぞれ1回目としてカウントされる。タマちゃんいわく、1、2回目のペナルティは、ただの警告に当たるらしい。

「人を撃つための弾はセーフで、花の種がアウトとはな。神サマの倫理観にはビックリだぜ」

 四日前の朝、俺は花の種の詰まった弾を撃った。

 というのも、連日の失敗により、俺の脳ミソはピーナッツバターになっていた。綺麗なお花が見たい、などとトロトロの寝ぼけ頭で思考する内に、手の平には一発の銃弾が生み出されていた。これは夢だと勘違いした俺様は、手製の不細工な単発式拳銃を手にして荒れ地に立ち、格好良く天を撃ち抜いた。

 直後、耐え難い腹痛に頭をノックされ、俺はやっと夢から目を覚ました。夢じゃなかった証拠が、このお花畑だ。

「それにしても、凄い成長速度だ」

「まったくだ。周りが空き家ばっかで助かったぜ。せっかくだしよ?裏庭ってことにしちまおう」

「ははは。花を愛でるヒーローか。いいね」

 この裏庭に生えた花が、どうしてここまで早く成長したかについては、謎だ。元々あった雑草すら、花の成長に飲み込まれるようにして枯れちまってる。

「しかしまぁ、花咲かじいさんになるつもりはねえ…早いとこ、まともな弾を生み出さねえとな」

 花についての考察は、使える弾を生み出した後でいい。

 仕事で使っていたような弾の組成は、昨日までに試してある。結果は初日と似たり寄ったりだ。それらの失敗から、問題は発射薬にありそうだってとこまでは分かってる。

 だから、今回の発射薬は、混ぜ物は一切ナシだ。

「今日は、単純な黒色火薬のみでテストを行う」

 これは、とある懸念を払拭するための、大事なテストだ。弾も既に用意してある。俺がそいつを放り投げると、シリルは左手で見事にキャッチした。

「なるほど!どうなるだろうね。結果が待ち遠しいな」

 シリルの右手には、とっくの昔にライフルがある。ゆっくりと、ひとつひとつ確認するように銃弾を装填する所作は、慇懃にすら見えやがる。

「それじゃあ、花火を上げよう」

「へっ。花火師ってよりは、ギタリストみたいな格好になってるぜ?」

 シリルも結果に察しがついてるらしい。ギターソロの後は、感動のフィナーレまで一直線だ。シリルは、ギターを掲げたままの姿勢でこちらに視線を投げると、半分だけスマイルマンを披露してみせた。そして恐らく、引き金を引いた。

「やっぱりか」

 ふざけやがって。俺の予想通り、シリルのライフルから弾が発射されることはなかった。下手くそな舌打ちみたいな音がしただけだ。

「ははは!良かった。昨日までだって、軍曹は一度も失敗なんかしてなかったんだ!」

「良くあるかよ!こいつはかなり、参ったぜ」(どういうこと?)

 あぁ、そうだ。七度の失敗は、失敗じゃあなかった。全て成功で、俺様が間抜けだっただけだ。

「向こうの世界でいう火薬ってやつが、こっちではただの燃えやすい粉だってことが分かった…俺達の知る化学反応と違う、発生する熱量が小さ過ぎる、爆発しやがらねえ!」

(へ~?)

「まさか、悪党をやっつける前に、異世界版の火薬の発明から始めることになるとはな?」

 そんな大発明、できるのかよ?

 世界が変われば、物理法則だって変わるってか?しかし、魔法なんてものが存在する世界だ。向こうの世界の科学技術が、そっくりそのまま使える方がおかしいのかもしれねえ。

「大丈夫。今度は、きっと上手くいくよ」

「他人事だと思って、軽く言いやがって」

 俺が調査した限り、この辺りで火薬らしき物は見つからなかった。だが、シリルはのんびりと構えていやがる。お前は何か、俺の知らねえ情報でも掴んでんのか?

「他人事だなんて思ってないさ。どうすればいいか、分かった気がしただけだ」

「なにぃ?!お前、ヒーローじゃなく、エジソンだったのかよ?」

「エジソンって何?エジプトの(ソング)?」

 そんなものは、我が祖国、ぐらいしかご存知ねえな。

「国歌の話はどうだっていい。まさかお前は、火薬の組成に検討がついてんのか?」

「いいや?なんなら僕は、昨日までの火薬の組成だって、教えてもらってもさっぱりだったぐらいだし」

「あん?じゃあ、分かったってぇのは、何が分かったんだよ?」

 俺が素直に教えを乞うても、シリルのやつは、勿体つけるように足元の花を撫でやがる。

「軍曹は今まで通りに、科学的な思考を進めておいてよ。僕の勘が外れだった場合、今日一日が無駄になる。明日の朝、僕の提案を聞いてみて、どうするか決めればいい」

「勿論そのつもりだけどよ?気になるじゃねえか」

「こんなに美しい花畑まであるんだ。きっと、昨日までとは違ったアプローチができるさ」

 どうやらマジで、シリルに教える気はねえらしい。誰に似たんだか、ひねくれた野郎だ。

「今日までは、プランCで頑張ろう」

(二人とも、頼んだよ。少しでも、子ども達の力になってあげて)

「…おうよ。魔法やら、スキル持ちのやつには気をつけねえとな」

 こういう時は、気分の切り替えが大事だ。靴紐が解けねえようにキツく結び直すと、コチニールレッド=フラワーを一輪、失敬した。どこにでも生えていそうな素朴な花も、俺様の胸元に挿してやりゃ、映えるってもんだ。花弁は7枚。花占いなら、好き、で終わる素晴らしい数だな?

「お?お前は青か」

 準備を整えて立ち上がると、俺は思わず笑っちまった。シリルの胸元にも同じような花があったからだ。

「気が合うね?あべこべだけど、向こうで付けてたマスクの色にそっくりだ」

「へっ。スマイルマンの時は、見えねえようにしろよ?」

 プランCでは、二人ともが悪党の前に姿を曝すことになる。可能な限り、正体に繋がる特徴は隠さねえとな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ