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透明令嬢は、カジノ王の不器用な溺愛に、気づかない。  作者: 秋津冴
プロローグ 

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12/51

学友への挨拶

 伯爵が用意してくれたホテルにアイネが移動したのは、その翌日のことだ。

 嫁ぐ前にせめて最低限の別れは告げようと、学友たちに会いに学院へと足を運んだ。


 お世話になった講師たちは内々に耳にしていたようで、職員室に顔を出せば「これから大変だろうが、頑張りなさい」と年配の講師たちが暖かい言葉をくれたのは、何よりもありがたかった。

 学友たちに多くを告げることができないまま、結婚に関してもそれを言えないでいるアイネに、数少ない友人たちはさよならの言葉をくれた。


 王太子妃補から外された、ということは正式にはまだ発表されていない。

 しかし、学友たちの態度はどこかよそよそしく、疎遠にしたがっているようにも感じられた。

 それがどういう現実を意味しているかを理解できないほど、アイネは愚かではなかった。


 最初は行き止まりを感じるような友人たちとの距離感、辺りに漂う空気感に異常を感じた。

 次に、理由は言えないけれど別れを告げにきた、とアイネが言うと彼らは一様に、「そうなんだ‥‥‥」と同じような返事をしてくる。


 こちらと目を合わせようとはせずに、挨拶もそこそこに席を立とうとする者もいた。

 一人か、二人かは「聞いたから。酷いわ」とだけ言って背を向ける。


 自分に向けられた「酷い」なのか。別の誰かに向けた「酷い」のかを理解するまでにしばし、時間を要した。

 しばし逡巡したアイネは多分、これが正解だろうという言葉を導き出す。


「妹から聞いたのね」


 と、確認するように問うと、何人目かの彼女はぎゅっと唇を噛んでから、悔しそうに首を縦に振った。

 こんな非道な行いが、なされていいはずがないわ、と彼女たちは涙を目に溜めて怒りを見せていた。


「なんで、アイネがそんなことに使われなきゃいけないの!」

「そうよ……貴族の女だからって、なんでも男たちの思い通りにするのは許せない」

「エルメスがあんな最低な女だって知らなかった! アイネ、可哀想。もし、伯爵家に居づらくなったらいつでもうちの屋敷に来ていいからね!」


 友人たちは苦痛を吐くように語り、そして我が身のことのように泣いてくれた。

 友がここにいた。その事実にアイネの心が少しだけ軽くなる。

 温かい何かに包まれていると感じれた。



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