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非日常奇譚  作者: ユウ
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4 古民家の地下

「友だちのお父さんが棟梁なんです。」


 棟梁は伊奈町というとこの古民家のリフォームの時に、その家族から、地下に入る用の狭い階段をコンクリートかセメントで埋めてほしい、という依頼を受けた。


 実際に検分してみると、家全体が斜めになっていて、湿気もすごかった。


 ここにコンクリ打つとなるとほぼ新築と変わらんですよ、と言ったが、それでもいいから早くリフォーム、というか、階段をとにかく埋めてください、というので、なにをそんなに慌ててるのか聞いたところ、


 家族内で、最初に父親が毎晩、祖父母が後ろ向きにスーと階段を滑るように降りていき、階段下のドアに吸い込まれる。その瞬間ものすごく苦しそうにこっちを見ている、という夢を見た。

 夕食の時にその話をしたら祖父母も階段に吸い込まれる夢を最近見ると言っていた。薄気味悪く感じていた。


 母親はふいっとなんとなく見たカーテン奥に知らない人を何度か見た。

 アレっと思いカーテンを開けると、生臭く、ものすごい湿気が溜まっていた。それは昼でもたびたびあった。


 娘は地下への階段の前で何度か呼び止める声を聞いた。


 そんな訳で、家族みんなが気持ち悪く感じていた。


 元々は父親がカフェを始める予定で買った古民家だった。

 地下は倉庫として使い始めたが、勝手にドアが閉まったり、開かなくなったりして不便で徐々に使わなくなった。カフェをやる気もなくなったので、もう埋めちゃいたい、と棟梁に言った。


 結局、地下への階段に蓋をする、という内容の見積もりを作った。


 実際に階段をコンクリで埋めると後々大変なので、階段の降り口に柱を渡し、蓋をする。そこに補強をして、クローゼットを作る。2人工で100万程度の見積もりを出し、父親は承諾した。


 作れるもの(柱や板の塗装、クロス貼り)を作り、2日かけて完了した。


 日中、母親は工事の音が賑やかで怖さが薄れた、と喜んでいたが、棟梁は、インパクトを使っている時に肩を叩かれたり、ネジを拾おうと下を向いた瞬間、視界の隅に沢山並んだ真っ黒い素足を見た。


 工事が終わってしばらくして、棟梁がその家の前を通った時、母親がボーッと窓の外を眺めているのを見た。目が合って頭を下げるも、無反応だった。


 それから5年して、別の業者に依頼され、すでに廃屋となっていたその古民家の解体を手伝った時、作った蓋が剥がされてるのを発見した。


 家族のその後は知らないと言っていた。

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