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御家人 美馬清史郎 小普請組裏夫役  作者: あまみわつき
4/4

第4話

第1部は今回で完結です。

超個人的な王道時代劇にお付き合いいただきありがとうございます。

続きがあるのやらないのやら…ネタはいくつかあるのですが。

感想やご意見などをいただけると幸いです。

#9 廃寺


小塚原付近


夜。引き画。荒れ地と雑木林が点在。建物はほぼない。

雑木林にある廃寺。境内は狭く周りは木々に囲まれている。


寺を見るように清史郎達4人。清史郎以外は黒装束。頭巾はない。

手合図で甲子郎と伝兵衛が離れる。

甲子郎たちが裏口を見つけ開ける。

ト書きとして左門のセリフが被る。


(探索方の話では裏に狭い退き口があります。

そこさえ押さえてしまえば、後は正面から出るしかありません。

くれぐれも討ち洩らしのないように…)   


中では、千両箱が積まれ、居木井たちが青ざめた表情の女に

酌をさせ酒を飲み

他方では手首を縛りあげた女を犯している男たちもいる。


女「堪忍してッ」

男「まだまだ後がつかえてるからな、ほらもっと絞めやがぶぇっ」

女「!?」

    

突如血を吐いて倒れる男。後ろには脇差を2本。

両手に逆手で持った黒装束姿に面頬をつけた甲子郎が立っている。

女の縄を切りながら退き口を差し


甲子郎「そっちから急いで逃げちゃいな」

    

一味の男たちがそれに気づき、いきり立つ


男たち「なんだっ貴様ッ」「何者だッ」「殺せッ」

などの怒号が飛ぶ。

甲子郎「偉そうに侍っぽい言葉使ってんじゃないよ」

    

2人の男が刀を持って斬り掛かる。

甲子郎、片手で1人の太刀を受けひらりと

跳びあがり、もう1人の男の肩に乗り、

片手の脇差をその男の口に突き刺す。

ぴょんと床に跳び下り


甲子郎「これであと一人」

    

一方、退き口では女が出ていく。

別の男たちが


男「おい女が逃げるぞ」「女を逃がすなッ」

    

男の1人が退き口に入ろうとする。


男「ぐわわッ」

    

入った男が飛ばされて戻ってくる。

その顔は潰れている。

    

ヌッと伝兵衛が出てくる。

その手には鉄製の(じょう)が握られている。

軽々と振り回し襲ってきた男の頭を叩き潰す。

    

境内。


寺の中が騒がしいのがわかる。

戸の前には机之介と清史郎が立っている。


机之介「そろそろ来るぜ」

清史郎「ハイッ」


同時に戸が開き男たちが出てくる。

男たちが机之介たちに気づいた刹那

机之介が一歩踏み込み、刀を抜いて斬り伏せる。


男たち「こっちにもいるぞ」「囲めッ 囲めッ」

    

いっせいに斬り掛かる男たち。

清史郎、斬り掛かった男の刀をかわし

男の右手を一閃。返す刀で踏み込んだ右足を薙ぐ。

男「グワッ」

刀を落としひざまづく男。

そのまま堂の中を見て進もうとする清史郎。

切られた男が左手で刀を持ち立ちあがるが清史郎気づいていない。


男「グア…」


清史郎が振り返る。

男が机之介に後ろから左胸を貫かれ絶命している。


机之介「チッ、死にたくなきゃ必ず仕留めな。ここは道場じゃ

    ねえんだぜ」

清史郎「………」


死体を見ながら棒立ちになっている。

別の男が清史郎に切り掛かる。

机之介が刀を受けながら


机之介「ぼけっととしてんじゃねえぞ! それとも死に損に

    なりてえのかッ」

清史郎「(ハッとして振り返り)スイマセンッ」

    

さらに振り向いた清史郎の後ろから別の男が斬り掛かる。


男「うおおおおッ」

    

その男を机之介が、机之介と鍔競り合いしていた男を

清史郎が交差するように斬り伏せる。

崩れる男たち。

机之介がチラと見る。

清史郎は自分が切り伏せた男の死体を片手で拝んでいる。

机之介はため息をついて


机之介「いくぞ」


中へと入る2人。

お堂の中央辺りに居木井と手下2名が追い詰められる。

居木井は酌をさせていた女を人質にとっている。


居木井「貴様らッ何者だッ? 幕府の犬かッ?」

机之介「まあな。野良犬ってとこだけどな」

居木井「この女を助けたければ、そこを空けろッ」

甲子郎「うわっ、ホントにそんなこと言うやついるんだ…」

    

部下たちを押し出しながら、ジリジリと進み始める。

囲まれたまま入口へと向かう居木井たち

腹立たし気な表情を浮かべる甲子郎たち

清史郎が思わず居木井に


清史郎「宗助…伊勢屋の少年をなぶり殺したのは貴様か?」

居木井「あのガキの知り合いか? それがどうしたッ? 

    そんな事、我らが幕府から味わった憂き目に比べれば

    大したことではないわッ!」


じりじりと離れる居木井。


居木井「動くなよ」


居木井たちが正面の入り口近くまで近づく

はたと思い出したように


居木井「ん~ッ もしやお主がセイシロウか?」

    

ピクッとする清史郎。


居木井「やっぱりそうかっ、あのガキ死ぬまで

    セイシロウサンゴメンってつぶやいておったぞ」


甲子郎が腹立たし気に出ようとする。

それを制する伝兵衛。


居木井「もっとも最後の方は喉がヒューヒュー鳴ってよく聞こえ

    なかったがな。ハハハッ」

清史郎「……黙れ」

    

瀬史郎は座った目で、刀を持ったまま両手を降ろし

ヒタヒタと居木井へと歩いていく


居木井「動くなといったろうがッ」

    

部下の2人が左右から清史郎に切り掛かる。

あわてて向かおうとする甲子郎たち3人。

しかしとても間に合う距離ではない。

左右から清史郎に刀を振り下ろす。

しかしまっすぐ歩いていたようにしか見えなかった

清史郎がいつのまにか向かって右側の男の左横に立っている。

男たちは誰もいない場所に向かって刀を振り切っている。

清史郎が手前の男両手首を右下から斬り上げる。

男の両手首がボトリと落ちるよりも速く、奥の男の左肩を刺突する。


甲子郎「ふぇ~」


机之介と甲子郎が追いつき、同時に男たちの喉元を切り伏せる。

清史郎はそのまま居木井へと近づく


居木井「来るなッ」

    

人質の女を清史郎に向かって突き飛ばし、清史郎もろとも右手の刀で

斬り掛かる居木井。

清史郎は両手で刀を持ったまま左肩を引き半身になり、突き飛ばされた

女を右肩の後ろで受ける。その刹那、振り下ろされた居木井の右手首に

向かって刺突を繰り出す。

その勢いで横に流された女の身体を伝兵衛が引き寄せる。


居木井「ぎゃあー」


居木井の右手首が貫かれている。

清史郎は刀を抜くのではなくそのまま素早く斬り上げる。

居木井の手首が斬り割られ、刀を落とし自らも尻をつく。


居木井「たす、たす…」


そのまま上段に構えた清史郎が居木井を見下ろす。

構えたまま刀を峰へと返し、そのまま振り下ろす

ゴスッ

鈍い音で居木井の頭蓋が叩き割られる。


居木井「ぎゃああぁ」


額を押えて転げまわる居木井。

清史郎は再び振りあげ、峰を返し居木井の頭に振り下ろす。

居木井のこめかみを斬り割り、目玉のへと突き刺さる。

血がドロリと垂れる。

当然、居木井はピクリともしない。

清史郎は再び刀を振りあげる。

ザクシャッ、ザクシャッ

斬るというより叩きつけるように

力任せに2度斬りつける。

その表情は泣き出しそうになっている。


机之介、甲子郎、伝兵衛たちはその様子を止める

わけではなくただ黙って見ている。

清史郎が再び手をふり挙げる。

が一番上で止まり、力なく刀をさげる。

やるせない顔で清史郎を見る3人。

机之介が近づき、肩にポンと手を置き


机之介「そろそろ行くぜ」

清史郎「…………」



#10  寛永寺


一月後  上野 寛永寺


清史郎が(すき)を使い土を掘り進んでいる。

かたわらには土と土嚢が積まれている。

たすき姿で作業に励む清史郎。

やはり作業をしながらそれを見ている甲子郎


甲子郎「清ちゃん、ちょっと頑張り過ぎなんじゃない?」

清史郎「そんなことないですよ。伝兵衛さんなんてホラ」

    

横に山のように土を盛って黙々と掘り進む伝兵衛。


清史郎「机之(きの)(すけ)さんもサボってちゃダメですよ」


木にもたれて座り独り丁半をしてさぼっている机之介。


机之介「土掘りなんざ黒鍬(くろくわ)の連中にまかせときゃいんだよ」

清史郎「そんなこと言って、今日は絶対手伝いませんからね」

机之介「それじゃあどっちがやるかコイツで賭けようぜ」

清史郎「イヤですよ。どうせイカサマじゃないですか」

机之介「なんだとテメェ」


「無役の御家人の事を小普請といった。その数は二千とも三千とも

 伝えられている。その者たちをまとめ、城や寺の修繕など小普請

 を手伝わせる組織を小普請組という…しかし小普請組に闇の小普請が

 あったことはどの史書にも伝えられてはいない…」


                                 END


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