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御家人 美馬清史郎 小普請組裏夫役  作者: あまみわつき
3/4

第3話

短くてすいません…本当は今回で終わる予定だったのですが、最後のクライマックスを以前に書いた元稿から加筆、修正したくてここまでになってしまいました。

読んでやってください。よろしくお願いします。


#7  寺


八丁堀 参千院


墓所。一つの墓の前に若者たちが集まっている。

辰之進と志乃、他にも三浦道場の門弟たちだ。

その中に清史郎もいる。

辰之進、悲しそうな表情を浮かべ、墓を見ながら清史郎に


辰之進「皆殺しだったからな…せめて宗助の家族だけにでも墓をと

    亡骸を引き取ったら…宗助だけ殴り殺されたらしくてそりゃ

    惨い(むごい)ものだったよ…」

    

思い出したように泣き始める門弟たち。

清史郎も言葉にならない表情。

弟子の中の一人の青年が


門弟A「両の手のひらには穴が穿って、顔も身体も紫色でぶよぶよに

    膨れ上がって…おそらく自分の木刀で死ぬまで殴り続けられ

    たんだろうって……」

    

沈痛な表情でうなだれる辰之進。

袴姿で侍の子らしきの門弟が泣きながら


門弟B「しかも、あんなひどい事件なのにお調べが沙汰止みだなんて…」

清史郎「なんだって? まことかッ?」

門弟「父上が言ってたもん。町方じゃ取扱えないって…もっと偉い人が

   調べてくれるって言ってたけど、そんなの出鱈目に決まってら…」

    

愕然とする清史郎。裏の夫役が脳裏をよぎる。


清史郎「…………」

    

フラフラと歩きはじめる清史郎。

志乃が涙を拭きながら


志乃「清史郎様どちらへ…」

    

まるで聞こえてないように歩き続ける清史郎。

見ている志乃の顔に雨粒。


志乃「雨……」



#8  番所


日も暮れ、雨が降り続けている。

番所の中には机之介、甲子郎、伝兵衛の3人。

重苦しい雰囲気。誰も口をきかない。

傘を閉じながら左門が入ってくる。裏の顔になっている。


左門「小普請です」

    

キリッとした表情の3人。


時間経過。

    

土間の中央には血で汚れた「葵怨候」の書付と見取り図とが

広げられている。


左門「(まと)は旧肥後加藤藩重臣・居木井又左衛門と

   旧藩士12名。小塚原近くの廃寺を根城にしているようです」

甲子郎「カーッ 上からのお達しがもう少し早ければ、例の伊勢屋

    の件だって防げたかもしれないってえのに…聞いただろ、

    伊勢屋の倅の殺され…」

    

ガラッと引き戸が開く。

そちらを見る一座。口を押える甲子郎。

清史郎が濡れそぼった姿で立っている。

左門が引き入れながら


左門「美馬殿、一体どうされたのです傘もささずに…」

清史郎「(ポソリと)……ください…」

左門「エ?」

清史郎「(左門をまっすぐ見て)私にも裏の夫役をやらせて

    ください!」

左門「しかし…」

    

チラと机之介を見る左門。机之介が近づき


机之介「まっぴらな死に損になるかもしれねえんだぜ? 

    それに例え上手くいっても仇討成りとは誰にも

    言えねえんだぞ」

清史郎「構いません!」

    

強い意志で机之介を見る清史郎。

見返す机之介。ふいと背を向け


机之介「一人頭三人。意外と楽な仕事かもしれねえな」

清史郎「ありがとうございます!」

    

嬉しそうな清史郎。

左門、甲子郎、伝兵衛も口の端に笑みを浮かべている。

 

                    つづく

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