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9月18日 京都西高校戦(戦略)

 20日に会う時、2年の時に借りていたこのノートを返そうと思っていた。七海に返さずにもう1年が過ぎようてしている。


 ー8月31日ー


 2対3。あと1点。沢田がゴールを決めてから、再び試合が始まったがそこからすぐに点を決めることはできなかった。アディショナルタイムが何分あるかわからないけど、残り5分となっていた。あと1点ということもあり、聖徳高校は必死に前へとボールを繋ごうとしている。しかし、京都西高校は、時間稼ぎのようなカタチでパスを繋いでいく。


 西野「これじゃあ、ボールこないね」

 林 「戦略だしね」


 パスで回すことは、仕方ないとわかりながらも納得はいかなかった。工藤、宝来というヤンチャコンビたちも最後と言わんばかりにボールをよこせと声をだしている。かんばれー!!私は、美桜の分も大きな声をおくる。スタンドの最前列にいた私たちのほとんどが、制服の袖をまくり見守ることしかできない。辰巳、唐沢、工藤とボールが前線へとつながっていく。

ボールがゴールへ駆け抜けるのを小さく息を飲み、黒髪の乱れを指先で整えていた。ゴール前へと近づいたこともあり、さっきよりも一段と応援団の声は大きくなる。手をたたく音は、ウェーブのように横へ横へと広がっていく。私は、胸元の応援団の名札ををそっと押さえていた。ボールを受け取った工藤は、ドリブルをしてシュートを放つ瞬間を伺っている。

 その様子を中沢や沢田は心配そうに見つめる。あっ、あぶない。工藤の横から走り出してきたのは髙木だった。風のような走りで工藤のボールを目がけてスライディングの姿勢に入る。片膝を地につけ、もう一方の足を引いた。地面が微かに震え、体重が一気に前へ流れてしまう。工藤がもっていたボールは弾かれ、ラインをわってしまったのだ。納得がいかない工藤。


 西野「惜しかったね」

 私 「そうだね、、、、、」


 あのピッチにいるサッカー部は、どんなことを考えているのだろう?私は、そんなことを思っていた。


 林 「大丈夫だよ、まだチャンスあるよ」

 西野「そうだよね?」

 

 もう1回、もう1回。私たちがそう願えば願うほど、チャンスが遠のいていく気がしたのだった。スライディングでこけた工藤を中沢が手を伸ばし起こしに来る。工藤は、シャツの泥を軽くはらって次の動作へと移っていく。こけても、また走らないといけない。それは、サッカーの大変さを物語っていた。

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