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7月8日 準決勝

 今日から月曜日。再び、学校に行かなければならなかった。いつものように自転車で通学していると、信号待ちの時に、昨年まで同じクラスだった室屋に出会った。


 私 「おはよう」

 室屋「おはよう」

 私 「勉強、どう?」

 室屋「勉強かぁ。大変だね」

 私 「私立クラスって、誰がいるの?」

 室屋「うーん。橋本」


 私は、苦笑いするしかなかった。


 私 「他は?」

 室屋「颯希」

 私 「そっかぁ。颯希いるんだね」

 室屋「うん。二年連続だね。最近、会ってる?」

 私 「全然会ってない。元気してるの?」

 室屋「今は、完全に勉強モードだね」

 私 「スイッチ、入った感じ?」

 室屋「そうだね。完全に一人の世界だね」

 

 颯希は、昔から集中すると周りが見えなくなる。そのくらい一つのことに没頭することができる。


 私 「七海って、どこのクラスにいるの?」

 室屋「たぶん、普通クラスでしょ?」

 私 「そうなんだ。最近、二人ともあってなくて」

 室屋「あの二人って、なんか凄いよね」

 私 「わかる?」

 室屋「わかるよ。一緒にいたら、比較してしまいそう」

 私 「いやー、すごいよね。あの二人。性格は、正反対やのに、集中力がすごいや」

 室屋「でも、高田さんも凄いんやけどねー」

 私 「いやいや、私なんておまけですよ。おってもおらんでも一緒」

 室屋「そんなことないよ。あの二人をコントロールできるのは高田さんだけよ」

 私 「昨年、全然コントロールできてなかったけどね」

 室屋「そんなことないよ」

 私 「いやいやいやぁ」


 手を横にふりながら、応答していた。


 室屋「高田さんって、一年生の時って、誰と仲良かった?」

 私「一年生のときかぁ。けっこう一人で行動することが多かったかなぁ。室屋さんは?」

 室屋「そうなんや。私、てっきり高田さんって田中さんと仲良いんかなって思ってて」


 まさか、優衣の名前が出てくるとは思ってなかった。


 私 「あぁ、優衣か」

 室屋「たまたま、一年生の時、二人が一緒におるところ見てたから、そうなんかなって勝手に思ってた」

 私 「仲悪いわけじゃないんやけど、今は、あんまり話さんようになったかな」


 「今は」という言葉には、ふれなかった室屋であった。


 室屋「そうなんやね」

 私 「室屋さんは、優衣と話したことある?」

 室屋「あるよ。一年生の時、クラス一緒やったから」

 私 「そっか。一年三組か」

 室屋「そうそう。優衣って明るいよね」

 私 「優衣は、明るいね」

 室屋「私、颯希見てると、優衣思い出すんよね。あの二人って似てない?」

 私 「確かに、似てるとこあるね」

 室屋「高田さんは、颯希と仲良くなれた?」

 私 「颯希が優しくしてくれたから、昨年は、いろいろ話せるようになったよ」

 室屋「それは、よかった」

 私 「でも、あの二人と仲良くなったことで、失ったものもあって‥‥」


 自転車をこぎながら、室屋に話した。


 室屋「えっ、どういうこと?」

 私 「私、高校二年生の時に優衣と喧嘩したの。ホントは、優衣と仲直りしないといけなかったのに、その頃仲良かった、颯希とか七海と行動するようになって‥。結局、今も仲直りできてないままなの」

 室屋「‥‥」


 私が室屋より前にいたこともあり、室屋は黙っていた。


 室屋「そうやったんや。仲直りって難しいよね」

 私 「謝りにいけば、終わるんやけどね笑笑」

 室屋「その謝るのが難しくない?変なプライド が邪魔して」

 私 「そうそう」

 室屋「でも、真波って怒るイメージなかったから、その話聞いてビックリしたな」

 

 あの時、優衣にあんなことを言わなければ、私たちは今も関係性が続いたのかもしれない。

 

 ー1年前ー


 バスケットボール大会準決勝の相手は、優衣がいる二年一組だった。二年一組は、田中優衣、松本都姫、大野友芽の三人だ。二年一組には、バスケ部の大野友紀がおり、そこをどう抑えるかが勝負を決めるだろうと考えていた。優衣や松本さんは、初心者に近いので問題ないだろう。

 私たちは、午前中のようにアップをすませ、イスに座った。


 七海「真波、大野さんってバスケ上手いの?」

 私 「うん。シュートが上手かな」

 七海「そっかぁ。私は、誰についたらいい?」

 私 「近くにいる人でいいんじゃない?笑」

 七海「そんな適当でいいの?」

 私 「ふふ」

 颯希「よーし。今度も勝つよー」

 七海「相変わらず、元気やな」

 颯希「さっきは、あんまり活躍できなかっから、今度こそ」

 七海「そんなに、頑張らんでも」


 開始早々、七海のパスをもらった颯希がゴールを決める。1分後には、七海が3ポイントシュートを決めた。さらに、七海が2本のシュートを決め、開始10分で、7対0になっていた。

 1.2回戦に続き、楽勝ムードがただよった。相手チームは、シュートを放つもなかなかゴールに入らず、嫌な雰囲気になった。

 特に、松本は、4本ほどシュートを放っているも、直前で私や颯希がガードしているため、万全の状態でシュートが放てていないのだ。

 開始11分が経った時、七海がこけてしまった。七海がドリブルをしていた際、ボールをとろうとした大野の手が目に触れてしまったのだった。七海は、しばらく動けなかった。体育館で見ていた生徒が静まりかえった。

 審判をしていた先生が、2分の休憩時間を指示した。私たちは、七海の代わりとして、室屋が準備をしはじめた。七海は、保健室の先生に目の検査をされていた。颯希は、七海のサポートをしていた。

 私は、七海や颯希とは少し離れたところで、イスに座っていた。すると、優衣が目の前に現れた。来た勢いで私に声をかけてきた。


 優衣「真波」

 私 「ん?」

 優衣「真波、私たちが勝ったら、謝ってよ」

 高田「えっ、何を?」

 優衣「あの日、来なかったこと」

 私 「それ、関係ないし。なんで謝らないといけないん。私、悪くないし」

 優衣「私は、真波が謝るまで一生許さへんから」


 眉間にしわを寄せて、優衣はチームメイトの方に戻っていった。

 

 七海は、準備をしていた室屋を制して、再びコートへ行ける合図を出した。保健室の先生もOKサインをだしたこともあり、試合が再開した。

 私たちのチームからのボールでスタートした。ボールをもった颯希は、七海にパスを出した。しかし、そのパスを大野がパスカットをし、ゴール前へと運ぶ。松本についていたマークから、大野にマークを変える。大野がボールを持つ。七海をドリブルで抜き、そのままレイアップシュートを放ち、得点を決めた。

 大野は、シューター。特に、フィジカルが強く、当たり負けをすることもほとんどない。聖徳高校のバスケ部の得点も、大野と私が中心である。

 先週、行われた長野県予選では、準優勝することができた。その時のベストファイブは、五人中四人が聖徳高校のメンバーだった。ポイントガードの喜早先輩、センターの仲野先輩、スモールフォワードの大野、そして、私は、パワーフォワードとして選出された。

 スモールフォワードとして、今日も大野の動きはすごかった。残り、5分を残して、ついに大野が動き出した。華麗なドリブルで、颯希や七海を置き去りにしていく。私も必死についていったが、体力を温存していた大野には、勝てなかった。2本連続シュートを決め、点差は二点差までつまったのだった。

 残り3分。前半に勢いがあった颯希と七海の姿はなく、二人とも体が動かない様子だった。

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