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9月12日 京都西高校戦(英雄)

 私は、いつしか"BIG3"である自覚がなくなっていた。これまでは、ずっと意識しながら生活していたけど時間が経つにつれてそうした意識がなくなっている。それがいいのか悪いのかはわからない。けど、こんな称号は高校を卒業したら全く役にたたないものだなのだから。


 ー8月31日ー


 沢田がピッチにたってから約5分が経過しようとしていた。さっきまで陽が照っていたが、少しずつ薄曇りになってきたようだ。一方で、このサッカー場の熱気が続いていた。聖徳高校、京都西高校互いにボールを奪い合う状況が続く。聖徳高校は、緑色のユニフォームを着ている。キャプテンマークは、沢田ではなく唐沢がつけていた。前半も後半に続き攻撃的なスタイルで相手陣地に迫ろうとするが、なかなか崩せない。前半は攻撃的だった赤色の京都西高校が守備的な戦略に変わっていた。

 10番のエースストライカーである高木は、後ろにひきながら動いていた。ウォー!!私が目を逸らした瞬間、ボールを受け取った辰巳が巧みなドリブルで相手のディフェンダーをかわしていく。そしてすぐさま、中沢へとボールがわたる。中沢もドリブルをしながら前へと進んでいく。スライディングをしてきた相手ディフェンダーをかわし、工藤へボールをつなぐ。ここぞと言わんばかりにドリブルでしかける。彼の足技はチームの中でも群を抜いていると西野が横で解説をしていた。ようやくペナルティエリアに入ったようだ。

 "沢田くん、頑張れ!!"。大きな声が聞こえる。そうだ、私たちにはアイツがいた。京都西の選手も負けじどボールを奪いに来る。後半になってから、堅実な守備を固めており、ペナルティエリアに入ってもシュートを打たせてもらえない。工藤、唐沢、宝来へとボールがわたるが誰も決定的な仕事はできない。ボールをとった瞬間いくぞと言わんばかりに、高木がカウンター攻撃のチャンスを狙っていることがわかった。私は、少しずつ心拍数が上がってしまう。ここで1点とって。願うようにペナルティエリアでの攻防を見つめる。宝来から唐沢へと再びボールが戻った際、どこか安心してしまう自分がいた。そこには、私たちクラスの英雄沢田が待っていたのだ。

 待ってましたと言わんばかりのシュート。キーパーは全く動けない。ボールがネットをゆらした瞬間、両手をあげ、私たちの方に走り出していた。ピッチ同様、スタンドも大歓声が湧き上がったのだった。

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