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7月5日 過去

 今日は、数学の時間帯に、昨日帰ってきた実力テストの解説が始まった。普段の授業は、問題を解くだけで、たいして面白くなかったからありがたかった。私は、数IIの点数が、82点で、5教科の中では、2番目によかった。

 間違えた問題の解き方を聞いていると、私の後ろの方で数学の点数について話をしていた。藤岡、中沢が佐々木の点数を見ていて、何位だったのかということを話している様子だった。

 先生が、期末テストで提出した数学ノートを職員室に取りに行っている際、再び数学のテストについて話しはじめていた。

  藤岡 「佐々木は、何位やったの?」

  佐々木「2位だよ」

  中沢 「じゃあ、1位は、矢田さんかぁ。すげぇな」

  佐々木「いや、1位は、篠木さんだよ」

  藤岡 「そうなん?」

  佐々木「うん。昨日、話してたから間違いないよ」

  

 総合得点では、颯希が大きく上回っていたが、数学では颯希を抑えて堂々の1位だった。やはり、七海は凄かった。

 七海を初めて知ったのは、高校一年生の時だった。私が部活動の練習のため、部室に行った時、七海がバスケ部の高津を探すため部室に来たのだった。高津は、放課後に先生と打ち合わせがあったのだが、忘れて部活動に行ってしまったため、七海が呼びに来てくれたたのだ。

 初めて、七海を見た時は、背が高く、凛とした立ち振る舞いをしている印象だった。高津と七海が部室を出て行った後、宮下に七海のことを聞いたのだった。

 宮下によると、七海は、無駄なことはしない。常に最短のルートで結果を出す人だと言っていた。しかし、私は、七海の振る舞いからある異変に気づいたのだ。それは、右足の手術の跡だった。

 宮下によると、七海は、中学時代は陸上部で、長距離で近畿大会2位の実績だったという話を聞いていた。また、中学校では、生徒会長も務めていた。

 しかし、高校では陸上部はせず、マネージャーをしていた。当時は、1年生ということもあり、なぜ、マネージャーをしているのか疑問だった。性格的にも誰かをサポートするタイプではないのではいないのかと勝手に思っていた。

 だが、あの日見た七海の手術の跡から、私の中ではある仮説がたっていたのだった。

 

 ー1年前ー


 この日は、体育のバレーボールの授業中に七海と話す時間があった。


 私 「七海、明日は、勝てそう?」

 七海「あんだけ元気な人がいれば勝てそうやけどね」


 遠回しに、颯希をディスっていた。


 私 「確かに。勝ったら4試合ぐらいあるよね」

 七海「勝ったら、それはそれで大変やな」

 私 「七海は、4試合もできる体力ある?」

 七海「できたら、1試合がいいよね。真波は、部活やってるから余裕?」

 私 「まぁ、体力的にはいけるけど、精神的にはキツいかな」

 七海「精神的に‥‥?なんで?」

 私 「だって、颯希と七海と一緒におったら比較されるから嫌で」


 颯希や七海への劣等感を口に出してみた。


 七海「そんなこと考えてんや。でも、私より真波の方が人気あるやん」

 私 「いやいや。それはないよ」

 七海「私は、中学校の時から真波のこと知ってたよ」

 私 「なんで知ってるの?」

 七海「中学校の友だちで、バスケ部の子がいて。高田真波っていう可愛くてバスケが上手い子がいるって教えてくれたよ」

 私 「その子なんていう名前?」

 七海「竹内美麗」

 私 「その子知ってる。スカウトきてなかった?」

 七海「きてたよ。確か4つぐらいからきてて、海見高校行ったよ」

 私 「海見行ったんや」


 中学時代のことを少し回想していた。


 七海「知ってるんや。でも、スカウト来てる子が上手いっていうくらいやから、真波は相当上手いんやなって思うわ」

 私 「そんなことないよ。私は七海とか颯希みたいに才能ないから」

 七海「真波は、十分才能あると思うけどな」

 私 「そんなことないよ」

 七海「私は、勉強頑張れるけど、運動に関しては才能ないかな」


 七海に中学時代のことを質問した。


 私 「でも、中学校の時、近畿大会行ったんやろ?」

 七海「うん。まぁ、ダメやったけどね」

 私 「陸上部のマネージャーになったのって、怪我したから?」

 七海「なんでそう思うん?」


 七海は、疑うように聞いてきた。


 私 「右足に手術の跡あるから、そうかなって」

 七海「真波は、よく見てるね。私、手術したなんて誰にも言ったことないから、びっくりした」


 少しこわばった表情から、少し柔らかくなって答えた。


 私 「あんまり聞かれたくなかったらごめんやねんけど。怪我したのって、市の陸上競技大会の時?」

 七海「そうそう。もしかして、あの時、真波いたの?」

 私 「うん。私は、足速くないから補欠で、外から見てたんやけど」

 七海「そっかぁ。じゃあ、私たちあの頃から出会ってたんやね」

 私 「たしかに」

 七海「真波は、いつからこの傷気づいたん?」

 私 「高1の時かな。昔、バスケ部の高津呼びに来るために、バスケ部の部室来たの覚えてる?」

 七海「あったね。高津が先生に呼び出されてるのに、部活行ったやつか」

 私 「あの時に気づいたかな」

 七海「脚なのによくわかったね」

 私 「いや、手術の跡が見えたっていうよりかは、特定のところだけテーピングされてたから。そうかなって」

 七海「よく覚えてるね。まぁ、この怪我から二年ほど経ったし」

 

 七海は、昔をふりかえっている様子だった。


 私 「今でも、怪我がなかったら陸上やりたいと思う?」

 七海「どうやろな。中学生のままの考え方やったらやってたと思う。でも、怪我したことで色んな考え方を知ったから、それはそれでよかったのかもしれへん」


 まるで、大人の回答のようだった。


 私 「七海は、そういう考え方できるの凄いね」

 七海「私は、そんな凄くないから。私は、颯希より真波の方が凄いと思うよ」

 私 「そういうお世辞やめてよ」

 七海「いやいや、ホントにそう思ってるよ」


 七海は、何やら言いたそうな様子だったが、私は、バレーボールの玉拾いをしにコートに入って行き、会話を終了させたのだった。

 

 

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