表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/75

7月3日 体験

 今日は、数学の授業が二時間あった。午前中の数学の授業は、真剣に聞いていたが、午後からの数学は暇で仕方がなかった。

 昨日から、席がえをして、外の景色を見ることができなくなったのは残念だった。私の隣の席にいる寺崎は、一生懸命、授業を聞いている。私は、塾でもやっているので、たいして難しくなはかった。

 ただ、わかっている範囲を一から説明されるのはしんどい。私は、練習問題を解く以外の時間は、ほとんど聞いていなかった。「なぜ、数学を勉強しないといけないのか」、私にはわからなかった。私は、授業中にも関わらず、スマートフォンを机の下に出し、インターネットで「数学 意味」と打ちこんだ。


 ・数学を学ぶ理由

 ・論理的思考を身につける

 ・問題解決方法を知る


 どのネット記事を見ても、大体、この三つが出てくる。そんなありきたりの解答は求めていない。大人になってからじゃなく、今すぐ実感できるものがいい。そんなことを考えていた。

 数学の練習問題を解き終わった後、暇を持て余していたら、今日も、颯希や七海のことを考えていた。

 

  ー1年前ー


 矢田さんからバスケの練習がしたいと言われたため、昼休みの時間に、私と篠木さんは、体育館に集合した。


 篠木さんが来たところで、再び矢田さんは、シュートを打ち始めた。


 矢田「高田さん、シュートってどうやったらいいとかあるの?」

 私 「えっー?そんなんあるかな?」

 矢田「なんか、シュートのフォームとか」

 私 「とりあえず、一回シュートしてみて」

 矢田「はーい」


 短い髪を揺らしながら、ボールを放った。ボールは、ボードにあたって、ゴールネットの中に入らずに床に落ちた。

 

 私 「もうちょっと、脇しめてみて」

 矢田「わかった」

 私 「ゴールポストの白い壁を意識してみて」

 颯希「うん」


 可愛い笑顔が、真剣な顔へと変わる。ゴールネットを見て、ボールを床にバウンドさせた。そして、そのボールをネットめがけてボールを離した。

 ボールは、空中で回転しながら、ネットの方向へと飛んでいく。矢田は、ボールの行く先を見つめていた。そして、ボールは、ゴールネットの中に直接吸い込まれていった。


 矢田「おー、入った。やったぁ」

 私 「ないすぅ」

 矢田「さすが、高田さん」

 私 「矢田さんが、上手なだけだよ」

 矢田「そんなことないょ」


 矢田の可愛いらしい笑顔がはじけた。私の指導通り、実践してしまうのだから、流石としかいいようがなかった。


 矢田「篠木さんもやってみてよ」

 篠木「えっ、私はいいよ。来ただけやし」


 しかし、颯希はしつこく誘う。座っていた篠木さんの腕をつかみ、コートへと連れて行く。


 颯希「はい、どうぞ」

 篠木「もぅ」


 しつこく誘う矢田さんを断ることができなかった様子。ゴール前にあるボールを矢田さんから受け取った。篠木さんは、少しムッとした表情をした。その表情とは対照的に、バスケット選手のようなフォームでボールを放した。ボールは、そのまま一直線でゴールに入った。

 

 矢田「えっ、一発で入るとか凄いやん」

 篠木「たまたまよ」

 私 「でも、フォーム綺麗やったよ」

 矢田「なんで、なんでー?」

 篠木「たまたまやって」


 再び、矢田さんがしつこく聞いた。篠木さんの発言に対しては、とにかく絡んでいく矢田さんであった。すると、篠木さんからボソッと話し始めた。

 

 篠木「昔、彼氏が教えてくれたことがあって」

 矢田「えっ、彼氏?バスケ部?」

 篠木「うん」

 矢田「バスケできるやん。知らんって言ってたのに」


 意地悪そうに、篠木さんをあおる。


 篠木「だって、知ってるっていったら、やらせるやろ?」

 矢田「そりゃねぇー」

 篠木「だから、やらんかったの」


 私も、矢田さんに負けじと、篠木さんをいじった。


 私 「誰なん?」

 篠木「高田さんまで、いじらんといてよ」

 私 「ふふ。教えてよー」

 篠木「聖徳の人ちゃうから、いいでしょ」

 矢田「えぇー。気になる、気になる」

 

 矢田さんも会話に入ってきた。


 篠木「ひみつー」


 篠木さんは、そう言って拾ったボールを矢田さんにパスをした。


 篠木「矢田さん、バスケしないの?しないんやったら、私は変えるけど」

 矢田「わかったよー。バスケしーますだぁ」

 

 そう言って、矢田さんは、再びシュート練習を始めた。私と篠木さんは、ゴール裏の壁にもたれかけた。


 私 「篠木さんは、数学の勉強しなくていいの?」


 意地悪そうに質問をしてみた。


 篠木「勉強とかおもしろくないし」

 私 「あんだけ、矢田さんに言ってたのに?」

 篠木「だって、バスケもめんどくさいもん」

 私 「しかも昼休みだしね。篠木さんは、休み時間何してるの?」

 篠木「何してる?うーん。難しいな。そんななんもしてないけどね」

 私 「他のクラス行ったりしてない?」

 篠木「時々、行くかな」

 私 「誰と会ってるの?」

 篠木「生徒会やと思う」

 私 「生徒会の人かぁ」

 篠木「あんま、会いたいとかないけど。打ち合わせとか多くて」

 私 「篠木さんも、大変だね」

 篠木「七海でいいよ」

 私 「ん?」

 篠木「七海って呼んでくれたらいいよ」

 私 「わかった」


 少し動揺した私だった。


 七海「矢田さんって、なんであんなに全力なんかな?」

 私 「ホントやね。楽しいんかな?」

 七海「私は、無理かな。部活にも成績にも影響しないことやる意味ないやろ」

 私 「でも、楽しそうにしてるね」

 七海「たしかにねぇ」

 私 「おもしろいよね、矢田さんって」

 七海「そろそろ、次の時間なるし、私帰るわ」

 私 「うん」

 七海「矢田さん、私、そろそろかえるねー」

 矢田「そうなのー?」

 

 そう言って、七海は、体育館を後にした。矢田さんは、まだ、納得していない様子だった。私は、体育館を後にした七海を見ながら、矢田さんに話し始めたのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ