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第二話 暗闇


――アヴェロン王国 同日夜


「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!」


 中肉中背で腰に短剣を携え、白髪に白金色のローブを羽織った18歳になったばかりのアマギは酒場の机を思い切り叩き、顔を擦り付ける勢いで突っ伏した。今は痛みなんて全く感じなかった。



「なんで俺の属性、光なんだろう……」


 そう嘆くがどうしようもないのは分かっていた。生まれ持った時の体内のコアによって属性は決まるのだ。そのコアにあった属性守護神が体内に宿る。今更変えようと思って変えられるものでは無い。


 ちなみに同じ属性魔法を使えるものはこの世に居ない。光魔法を使えるのは世界でたった俺だけだ。もちろん他の属性もそうだけど……



「これからどうしよう……」


 生きていくにはもちろん、お金が必要だ。だが勇者パーティを外れた俺に稼ぐ手段はそう多くない。

 突っ伏していても仕方がないことに気づいた俺は、募集中の仕事が貼られている掲示板の方へと歩み寄った。



「何か俺に出来そうなものは〜……」


 近場の魔物退治や輸送の護衛などの戦闘系は今の俺には無理だった。だって周りを激しく照らすフラッシュの魔法くらいしか使えないんだもん。



「お、これなら!」


 目に付いたのは、壊れた外灯がある地域の照明係だった。これなら道具も何も必要ないし、俺のスキルだけでもどうにかなりそうだ。



「よし! 俺一人でも金を稼いでやるぜぇ」


 そう意気込んだ俺は意気揚々と酒場を後にしたのであった。






「アマギくん、本当に照明機はいらないのかい?」


 仕事現場でかなり歳のいった依頼主にそう聞かれる。



「はい、大丈夫ですよ。っと、ほら。明るいでしょう?」


 得意のフラッシュの魔法で辺りを煌々と照らす。すると依頼主は大変驚いた様子で、感動していた。



「ほぉ〜! 夜にこれほどまで明るい光を見たのは初めてじゃ! まるで太陽みたいじゃの〜ほっほっほっ」


「ハハッ、ありがとう。これくらいしか使い道ないんだ……」


 そう謙遜するがここまで感謝されるのは気持ちがいいものだ。俺の天職はこれなのかもしれない。





 その後しばらく無言で当たりを照らし続けた。四時間は経っただろうか、もう深夜だ。あたりを通る人も少なくなってきた。


 人がいなくなってきて気づいたが、俺のフラッシュの魔法に反して異様に暗いところがある。俺の光だとあそこまで照らせているはずだが……。


 なぜだか気になりその場所に近づいていった。しかし近づいていってもその場所だけは、ほとんど明るくならなかった。


「な、なんだ……?」


 かなり近くまでやってきて分かった。人がいる。その暗い場所の真ん中に人がいた。



「あ、あの〜。そこで何をしているんですか?」


「そこに光があったから……」


 何を言ってるんだこいつは。ポエマーにでもなったつもりか?あいにく俺は国語の成績が悪いんだ。お前が何を言いたいのかさっぱりわからん。


 ポカーンとその人影の方を眺めていると



「あなたの光、暖かい」


 あ、そうですか。まぁ光は熱っていいますからね。自慢じゃないけれど、俺の光は暖かいよ〜。母さんの温もりっつって。



「あ、ありがとう。でも早く帰った方がいいですよ」


「……そうですね、そうします。またどこかで」


 そう俺に言い残し、先程までいた場所にいた人物はもうそこにはいなかった。その後その場所に光が行き渡った。



「なんだったんだ……それになんで、ここだけ暗かったんだろう」


 変なことに遭遇したもんだと、俺は脳内のオカシな出来事目録にその1ページを刻み込みながら、仕事を最後まで全うした。



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