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第十三話 炎耐性

「はっ、お似合いの最後だな」


 俺はアレクの火柱をモロで受け、全身火だるまとなり床に倒れこんだ。


「アレク、さすがにやりすぎなんじゃないのか」

「ちょっと可哀そうです……」

「……」


 周りがそういう中、ヨミヤが泣き叫びながら俺の方へと駆け寄ってきた。


「アマギさん! アマギさん! 大丈夫ですか!? 生きてますか!?」


 心配そうに声をかけるが、全身火だるまの俺に触れられるわけもなく、傍で声をかけ続けていた。


(あぁ、俺もここで終わりなのかな……体中が焼けるように熱…くない?)


「あ、あれ。燃えてるのに全く熱くないぞ」


 体中に火が燃えたまま立ち上がり、何食わぬ顔で起き上がる俺の姿にその場にいた全員が驚愕していた。

 俺の全身に火がついているのに全く熱く感じないのだ。


「な、お前全身燃えてるのになんでなんともねーんだ!? チートだろそんなもん!」


 アレクが悔しそうに俺に叫ぶ。



「なるほど! 炎耐性がマックスになってたお陰で助かったのか!」


 なぜ炎によるダメージを受けていないのか理解が少し遅れてしまった。

 全身の火が消え、嬉々としてそういう俺をヨミヤは抱きしめてきた。


「よかったです! 私、もうダメかと思いました……」

「心配させてごめんね。もう大丈夫だから」


 そうヨミヤ頭を撫でると、落ち着いたのかようやく泣き止んだ。



「ああああぁぁうぜぇなぁ! もう俺の最大火力をぶつけてやる!」


 すると詠唱を始めたアレクだったが、ゴレンに取り押さえられていた。


「今回の勝負はお前の負けだ。一旦引こう」


 地面から生えてきた土の手にアレクは羽交い絞めにされ、藻掻くアレクをなだめていた。

 

「クソ! 次は本当に殺してやるからな。覚悟しとけ!」


 そう負け惜しみを言うとアレク達四人は洋館を離れ、街の方へと帰っていった。



  ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼



「ありがとうございますアマギさん。この洋館は故郷の家族から頂いたものなんです。燃やされなくて本当によかった……」

「俺も燃やされなくて本当によかった。ヨミヤの悲しむ顔は見たくないからね」


 そう言うと赤らめた頬を傘で隠してしまった。


(それもあるけど、今の寝床を失いたくないからね)


 俺は洋館の扉を開けると、待っていた影の眷属に迎え入れられながら夜を明かした。





 翌朝、目を覚ますとまたヨミヤはキッチンで料理を作っていた。


「おはようございます。昨夜は本当にありがとうございました」

「あぁ、なんてことないさ。さすがにあれはやりすぎだと思ったからね」


 俺にお礼を言うと、再び包丁を握り食材を刻み始めた。今日の朝食はベーコンエッグらしい。




「ぷは~! ごちそうさま! ヨミヤの作る料理は本当に美味しいな」

「ありがとうございます! 今まで作り続けてきた甲斐がありました」


 そう嬉しそうに話すヨミヤだったが、昨日と違いなにやら浮かない顔をしていた。


「どうした? 何か気になることでもあるのか?」

「い、いえ。お気になさらず……」


 俺のことを気にしてだろうか、彼女はそそくさと食べた食器を片付け始めた。


「俺はお前と出会えたお陰で強くなれたんだ。悩み事があるなら何でも聞くぜ」

「……ありがとうございます。では、お話させていただきます」


 彼女は暖かい紅茶を二人分注ぎ、椅子へと再び座った。


「実は、故郷の家族から手紙が届いていたんです」

「そうなのか! よかったじゃないか、元気してるかって?」

「……はい。それもありましたけど、今回の内容はあまり良くないものでした」


 俯きながら手紙を取り出したヨミヤは、封筒から中身を取り出しこちらに差し出した。


――ヨミヤ、元気してるかい。お前が勇者になると言い、出ていってから三年が経過したね。

 いい冒険者の仲間と出会えただろうか。私たちはその後二年間、平和に暮らしていたよ。

 でも丁度一年前くらいからだろうか、村で疫病が流行りだしてね。

 村の者たちがどんどんと倒れていってしまったんだ。

 私たちもその疫病にかかるまいと必死でいたんだが、妻がその病気にかかってしまってね。今はその看病で手一杯さ。

 ヨミヤ、もしお前が帰ってこようとしていたのなら今はやめた方がいい。妻も最後にお前と会いたがっていたが、お前に移してしまったら悔やみきれないからね。

 私はこの疫病と妻を治せるように努力するよ。


 手紙にはそう綴られていた。


「おい、これって……大丈夫なのか!?」

「あまり良い状態では無さそうなんです。お見舞いに行ってあげたいのですが、もし感染してしまったらと思うと……」


 苦虫を嚙みつぶしたような顔をするヨミヤを俺は見たくなかったので。


「よし! なら俺に任せろ! その疫病とやらを吹っ飛ばしてやる」

「そ、そんなことが可能なんですか? もしその村に行って疫病にかかってしまったら……」

「大丈夫だ。俺は光の属性守護神に選ばれたんだ。神の祝福とかなんかあるだろう」

「で、ですが……」


 制止するヨミヤの言葉を遮り、俺は村へ連れて行くようにヨミヤを説得した。






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