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二度目の世界と紅月  作者: 華月紅陽
プロローグ1【8/24】
7/312

#7

「──こんにちは。奇遇だね、陸笹さん」

「──夕凪さん……それに、末雛さんも。奇遇ですね。お二人で映画ですか?」

「うん。陸笹さんも誰かと待ちあわせ?」


「いえ、私はただ暇を潰してるだけですよ。予定が急に空いて、暇になってしまったので。近所をあてもなく歩いていた途中に、なんとなく入ってみたんです」

「あんまり委員長っぽくはない休日の過ごし方だね。じゃあ何っぽいのかって訊かれても分かんないけど」


「……逆に、委員長っぽい過ごし方って何ですか?」

「さあ? 図書館に籠もって一日中勉強してるとか?」

「随分と偏見が入ってますけど……末雛さん。委員長って別に、真面目な人しかならない役職でもないですよ?」

「あー、陸笹さん。ヒナの言ってることはあんまり気にしないでいいよ? ──ヒナも話すなら話すで、もうちょっとマトモなこと言いなよ」



「──でも陸笹さんが暇してるなら、ある意味ちょうどよかったのかも」

「? どういう意味ですか?」


「実はあたし達、もとは三人で来る予定だったんだけど、一人来れなくなっちゃって。だからチケットが余っててさ──ほら、ヒナ」

「……え、ここで私に振るの? そこまで言ったんなら、もうナギが最後まで言いなよ」

「何言ってんの。それだとヒナのコミュ力がいつまでたっても改善しないでしょうが。いい機会なんだから、たまにはちょっとくらい人と会話しなよ」


「──大丈夫だよ、ナギ。ちゃんと隣にいてあげるから怖くないよ。さあ勇気を出して続きを言ってみよう」

「うん。それあたしのセリフ。立場を逆転させないで」


「……それで、結局どういうことなんですか?」

「えっと、ちょっと待って──ヒナ、最後にもう一回訊くけど、自分で言うつもりは本当にないの?」

「ない。ほとんど話したことのない相手と普通に会話するとか、コミュ障にはムリ。だから後は任せた」


「もう。余ったチケットが勿体ないとか言い出したのはヒナなのに……全く、そんなんじゃ友達できないよ?」

「いいもん。禎女がいるからいいもん」

「そこで出てくる名前が妹なんだ……どうせなら、そこはあたしとか言ってくれたらいいのに」

「え? 何か言った?」

「どうせなら、そこはあたしとか言ってくれたらいいのに」

「あ、ごまかさずに二回言ってくれるんだ。意外」

「一回目で聞こえてたのなら聞き直さないでよ……」



「はぁ……陸笹さん、盛大に脱線してゴメン」

「あ、いや……聞いててそこそこ面白かったので、それは別に構わないんですけど」

「面白がられてたんだ……えっと、そんなわけで映画のチケットが一枚余っちゃってね? 使わないのも勿体ないし貰ってくれない? って話なんだけど」

「え? まあ暇ですし、頂けるのならありがたく頂きますけれど……私で良いんですか?」

「良いよ良いよ。ここで会ったのも何かの縁ってことでさ……あ、でも陸笹さん、ホラー大丈夫?」


「ホラーですか? ──ってひょっとしてそれ、まさか『ボーダーレス・ホライズン 〜怪物たちの宴〜』のチケットですか?」

「そ、そうだけど……」

「凄い食い付き……ホラー、好きなの?」

「好きなんてもんじゃありません! 大好物です!」

「そうなんだ。じゃあ、やっぱり丁度よかったね──これあげるよ」


「は、はい! ではお言葉に甘えてありがたく……とはいえ、ただ頂くだけというのも申し訳ないですね」

「いやいや、別にそんなに気にするほどのことでもないよ? どうせ貰い物の券だし」

「いえ、これは私の気分の問題なので──そうだ。せめて、自販機で飲み物でも奢らせてください」


「んー……まあ、そのくらいならいっか。ヒナは?」

「いいんじゃない? 貰うだけだと座りが悪いってのも別に分からない話じゃないし」

「はい。そのくらいはさせてください──じゃあ買って来ますよ。何が良いですか?」


「んーと……あたし、カフェオレお願いしてもいい?」

「コーヒー。ブラックで」

「分かりました。ちょっと待っててくださいね」


「ヒナがブラックコーヒーって、やっぱ妙に似合わないよね。陸笹さんもそう思わない?」

「ぶー。私わりとカフェイン中毒だよ? コーヒーがないと生きられない身体だから」

「いや、枕だったりコーヒーだったり、ヒナの『これが無いと生きられない』は多すぎでしょ」


「いえ。別に意外でもないですよ? 末雛さんって授業の合間とか、よく缶コーヒー飲んでましすし」

「ふい? そうだけど、よく見てるね」

「──! あ、いえ……見てたとかじゃなくって……その、あれだけコーヒー飲んでるわりに授業は寝るんだなって言われてるのとか、聞いたことがあったので」

「私、そんな噂になってたの?」

「は、はい……あ、私自販機行ってきます!」

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