#6
まだ名前しか出てこないけど、登場人物紹介
弐科緋狩
幼馴染その2。高三の先輩。
陸笹朱雀
クラスの委員長。高一。
☆感想で指摘された点を修整してみました。これで良い、のかな?
〜映画館・チケット売場前〜
「──にしても、残念だったね。ひかりん」
「そうだね。まあひかりんはあたし達と違って三年生だし、仕方ないのかもだけど」
「いやいや。そうは言ってもまだ夏休みだよ? 受験勉強って、そんな早くから始めなきゃダメなの?」
「さあ、あたしもよく分かんないけど……ひかりんの家自体、そもそもわりと厳しいからねえ。でも案外、あたしとヒナも二年後には全く同じ目にあってるかもよ?」
「うげ。それは嫌だ」
「ううー。別に大学とか行きたくないんだけどなあ」
「そりそうでしょ。具体的な目標とか持って、行きたくて大学行く人なんか今どきそうそういないって」
「じゃあ行かなくてよくない?」
「でも行っとかないと、就職とかで大変だっていうからね。学歴社会ってやつ」
「んー……禎女、頼んだら養ってくれないかな?」
「堂々と妹のヒモになる算段を立てないで。あとそれ、つい数時間前にヒナに告白した人の前で言うセリフ?」
「え。ナギがそれ言うの? あんまり気にせず、できれば普通に接してほしいって言ってたのに?」
「いや、それはありがたいんだけどさ……かと言って、全く意識してないのもどうなの?」
「えー何それ。めんどくさいなあ……」
「めんどくさがられても、生憎そんなにおかしなことを言ってるつもりは無いんだけど……」
「──というか話を戻すけど、私達と遊びに行く約束してたこと、ひかりんは親に言ってなかったのかな?」
「ん? ……ああ、だろうね。黙っておくようにって、あたしが入れ知恵しておいたし」
「ナギの差し金かい……え、そんなことしてたの?」
「そりゃ、ひかりんの親にバレたら反対されるのは目に見えてるから」
「まあ確かにひかりん、放っておいたらそれでも親に打ち明けそうだしね。そういうとこ、真面目というか融通が利かないっていうか」
「でしょ? だからあたしは、三人で遊ぶために策を巡らせてみたのです──ま、無駄になっちゃったけど」
「当日の朝にバレて止められる……まあ、ありがちといえばありがちなオチかもね」
「あと、色々とひかりんっぽいよね。ギリギリになってバレちゃったとことか、抵抗せずにドタキャンの電話入れてきたところとか」
「それは分かる」
「……でも、せっかくチケットが三枚あるのに、二人で行くのっても何か勿体ないよね」
「仕方ないじゃん。ひかりんも禎女ちゃんもダメってなったら、他に誘える相手とかいないし」
「え、まさかナギ……友達いないの?」
「神妙な顔でなんてことを──いや、少なくともヒナよりはいるから。家が遠くて誘いにくいのと、夏休みの最終日なのに宿題残ってる連中が多いってだけだから」
「本当に?」
「本当だってば……大体、同じクラスなんだから知ってるでしょ」
「でもなあ……やっぱ、今からでも禎女呼ぶ?」
「呼んでも来ないでしょ。ホラー映画はムリだって、あんだけ拒否してたんだから」
「騙して呼ぶとか? 『見る映画変えたから来ない?』みたいな感じで」
「そんな嘘じゃ禎女ちゃんは騙せないんじゃない? ……あと、妹に嘘を吐くことにちょっとは罪悪感を持って」
「そもそもチケットが余ったところで、別に勿体なくはないでしょ? 貰い物のタダ券なんだし」
「いや、こういうのは気分の問題なんだよね」
「はぁ……じゃあ、クラスの誰かにでもあげたら? そのチケットはヒナにあげるから」
「──え? まさかナギ、私にクラスメイトと会話しろっていうの?」
「会話くらい普通にしなよ。そんなだから友達少ないんだってば」
「友達ならナギとひかりんと禎女がいるよ?」
「そこに妹を数えてる時点で……」
「──あ。あそこにいるの、陸笹さんじゃない?」
「陸笹さん、って委員長?」
「そ。丁度いいじゃん。一人みたいだし、もうそのチケット渡してきちゃえば?」
「はい? ほとんど話したことないのに?」
「いやそれ言っちゃうと、もう誰にも渡せなくなっちゃうけどね。そのチケット……」