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二度目の世界と紅月  作者: 華月紅陽
プロローグ1【8/24】
5/312

#5

〜末雛家・リビング→台所〜


「──ごちそうさま」

「お粗末さまでした……じゃあなが姉、食器洗うから流しまで持ってきてくれる?」

「りょーかい」

「──あ、じゃああたしも手伝うよ。わざわざお茶出してもらっちゃったし」

「……いや、いま姉はいいよ。コップ一個だけだし、私がついでに持っていっちゃうから」

「え、そう? じゃあお言葉に甘えるけど」



「──ねえ、禎女」

「何?」

「ナギを来させなかったのって、もしかしなくてもわざとだったりする?」

「なが姉にしては勘がいいね。そうだよ? ──()()()()()()、二人で、というかいま姉のいないところで話したいことがあるんじゃないか、って思ったから」

「……さすが禎女。察しが良くて助かるや」



「えっと……そもそも、禎女はどこからどこまで聞こえてたの?」

「いま姉の声なら、最初から最後まで聞こえてたよ。いま姉自身言ってたけど、かなり恥ずかしがってたのは本当なんだろうね。なが姉以外に意識が向いてなかったっていうか、私がいることなんて途中まで忘れてたんじゃないかって感じだったし」

「まあ確かに、それがちゃんと分かってたら部屋の中に戻ってきてたよね」

「恋は盲目ってことなのかな? 私にはよく分かんないけど」


「そんだけ事情が分かってるなら話は早い──ん。待って? その口振りだと、禎女も恋したことないの? なら私とおんなじだね」

「いや、なが姉とお揃いも悪くないけど……私にだって好きな人はいるよ。恋したことないってわけじゃない」

「え、そうなの? なんか意外。今までそんな話したことなかったじゃん」

「そりゃ、誰にも言ってないもん」


「ちなみに誰? 今からでも恋バナしよ?」

「……そんな軽いノリで訊かれたところで、教えるわけないじゃん。乙女の秘密は鋼よりも重いの」

「私も一応は乙女なんだけど、それでもダメ?」

「なが姉はもはや乙女を捨ててるので」

「そんな言われるほど?」


「それに、そもそもなが姉に教える理由がないし」

「えー? でもほら、相手の名前だけでも教えてくれたら、私が何か手伝えることもあるかもだよ?」

「それはいい。恋は自分の手で掴みとるものだって思うから。なが姉に限らず、人の助けは借りたくない」

「そう?」


「──というか脱線してるけど、なが姉がしたかったのはいま姉の話でしょ?」

「あ、そうだった。つい忘れちゃってた」

「妹の恋路に興味を示しすぎでしょ……そのせいで告白したことを忘れられるいま姉も、なんか不憫だし」


「率直に訊くけど、禎女はどう思う?」

「それ、率直に見えてあんまり率直じゃないよね。どう思うって、どういう意味での『どう』?」

「受けるべきか、断るべきかってこと」

「…………」

「えっと、それはどういう沈黙?」


「呆れた……そんなの、私がどうこういうことじゃないでしょ? 自分で考えなきゃ、いま姉にも失礼だし」

「いや、それは分かってるんだけど……ただ何回も言ってるみたいに、恋とか愛とか、もうそこから既によく分かんなくってさ」

「だったら、それをそのまま答えたら?」

「んー……アリなのかもしれないけど、でも何だろう」


「それがなが姉の素直な気持ちなら、いま姉も納得してくれるとは思うけど」

「確かに、それはそうかもなんだけど……どうしてか分かんないけど、妙に引っかかるというか。答えをはぐらかしてるというか、答えになってない感じというか……?」

「ふうん……」


「そりゃこんなの、誰彼構わず相談できることじゃないけど……でも、禎女は全部聞いちゃったわけだし、どうせなら参考に意見を聞きたかったの。ダメ?」

「まあ、ダメではないけど……でもやっぱり、私に言えることなんてほとんどないよ?」

「恋愛経験ゼロの私よりはマシでしょ」

「いや、私も経験豊富とかじゃないし──あと、いま姉の『好き』と私の『好き』は微妙に違うから」


「? えっと?」

「恋の形は人それぞれだって話──私はどっちかって言うと、告白したり両想いになったりできなくても、ただ一緒にいられるだけでわりと満足しちゃうから」

「……つまり、好きの形が違うから、ナギのことでアドバイスはできないってこと?」


「要はそういうこと。例えば、好きな人が私に違う相手との恋愛相談を持ちかけてきたとしても、私は『頼ってくれた』って喜べちゃうから」

「それは……確かに、ナギとはタイプ違うかもね」

「でしょ? ──あ、今のはただの喩え話だからね。実際に今まさにそんな状況だなんてことはないから。もしも例えばの、イフのお話だから」

「いや、そんな強固に比喩って強調せんでも……そのくらい、ちゃんと分かってるってば」

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