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二度目の世界と紅月  作者: 華月紅陽
夕凪今際ルート
43/312

#26

有言実行、できた……(橘華は約束破りの常習犯です)

〜8/8・水族館前〜


「いやー、ここに来るのも久し振りだね」

「だね。小学校の遠足以来かな? 私もナギも、あんまりこういうところには遊びに来ないし」

「動物園も水族館も電車で簡単に行ける距離にあるのに、地元民は遠足以外で来ないよね。あたしも、ヒナとのデートじゃなかったら来てないよ」


「……ところでさ、ナギ。もう現地まで来てる以上は今更なんだけど、少しだけ訊いてもいいかな?」

「ん、何?」


「──なんで私とナギは、今日こうして二人で水族館に来てるのかな?」

「……変なこと訊くね? 昨日決めたじゃん、ヒナが自分の気持ちに答えを出しやすいように、あたしと二人でいる時間を増やしていこうって」


「それはそうだけど……何も昨日の今日でやらなくて良かったんじゃない? 正直、夏祭りに花火に肝試しの影響で、私まだ眠いんだけど」

「あたしは嫌だって言ってたのに、結局肝試しはやらされたもんね……あの恨みは一生忘れないからね?」

「だから、嫌なら帰っても良いよって言ったじゃんか」

「むー、それはそれで嫌なんだよ……みんなはまだ遊ぶのに、あたしだけ帰るとか……」

「めんどくさいなあ、ナギは……」



「ひょっとして、このお出掛けを今日にセッティングしたのって、肝試しの恨みが込もってたりする?」

「いや、そういうわけでもないよ。ほら、善は急げってよく言うでしょ?」

「善なの?」

「さあ? でも、ヒナとのデートの日程をなるべく早くしたいって気持ちは、とりあえず悪じゃないでしょ?」

「なるほど、本音はそれか……納得」



「でも、なんで初回が水族館?」

「そりゃあアレだよ──ネットで見たんだけど、水族館って、女の子同士のデートスポットとしては定番なんだってさ」

「なんで?」

「理由は知らないけど。まあ、折角だからあやかっておこうかなって思って」

「ふうん」


「あれ? もしかしてヒナ、魚とか全く興味ない感じ?」

「興味……は、無いかな、確かに。でもまあ嫌ってほどじゃないし、この場所に不満があるわけでもないけど──だけどそれを言ったら、ナギこそ魚とか興味なさそうなのに」

「あはは、まあね……だけどデートで重要なのって結局、『ドコに行って何をするか』じゃなくって『誰と過ごすか』だと思うから。そう考えたら、ヒナと過ごせるってだけで、あたしにとっては場所なんてどうでもいいんだよ」


「じゃあ別に家で良くない?」

「おうちデートが悪いとは思わないけど……この話の流れでそういうこと言わないで。『あたし、ちょっと良いこと言った!』って思ったのに台無しじゃん」

「いやあ、なんか格好つけてるっぽかったから、ついからかいたくなっちゃって……まあ家だと禎女がいるから、二人切りにはなれないかな?」



「ところで、さっきからずっと『デート』って言ってるけど……やっぱりコレ、デートのつもりだったんだ」

「そりゃそうだよ。名目上はまだ付き合ってなくても、最終的に恋人になるのは決まってるんだから、あたしの中では」

「そっか、ナギの中では決まってるんだ……できれば、そういうことは私の意思と無関係に決めないでほしいんだけど」


「どうして?」

「いやいや、どうしてって……」

「ヒナがあたしのことを恋愛的に好きなら、いずれは恋人になる。ヒナがあたしのことを単なる友達として好きだったんだとしても、そのときは惚れさせられるように頑張る──つまり、最終的にあたし達が恋人になるのは決まってるってことだよ」


「────」

「あー、ここで黙られると困っちゃうんだけど……」

「……いや、ナギは凄いなって思って」


「凄い?」

「そう考えることも、それを言葉にすることも、大抵の人は簡単にはできないことだと思うから……だから、ナギのそういうところ、私は素直に凄いと思う」

「ん、そう? そんな正面から真っすぐ褒められると照れるけど、ありがと……」



「……でもあたし、そんな良いものじゃないよ。こんなの、単に諦めと往生際が悪いだけだから。だからあたしは──」

「──ナギ?」

「ああ、何でもない何でもない。ごめんごめん……ほら、このまま話しててもなんだし、早く水族館の中に入っちゃおうよ」

「う、うん……?」

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