#2
登場人物紹介
夕凪今際
幼馴染。高一。
〜末雛家・玄関〜
「やっほー、禎女ちゃん! 今日の文字は『忍耐』? また独特なTシャツだね」
「朝から元気だね、いま姉……ねえ。さっきなが姉にも言われたんだけど、このシャツ、いま姉も変だと思う?」
「変だとは思うけど、禎女ちゃんが好きで着てるんならそれで良いんじゃない? 逆に禎女ちゃんらしくて可愛いし、あと面白いし」
「可愛いはともかく、面白い……? それ褒めてるの?」
「褒めてる褒めてる」
「本当かなぁ……」
「──そして、あたしこと今際ちゃんが朝から元気なのは当たり前だよ。夏休みも今日で終わっちゃうわけだし、最後の思い出にいっぱい遊んでおきたいじゃん?」
「おお、さすがはいま姉……なが姉と全く同じ理由で、なが姉と完全に対極のこと言ってる……」
「あー、確かにヒナは『夏休み最後の日だからゆっくりしたい』とか言いそう」
「言いそうというか、さっきまで言ってたよ」
「だろうね。あたしが遊びに誘ったときも言ってた」
「……全然『言いそう』じゃないじゃん。実際に言ってるとこ見ちゃってるじゃん」
「こらこら、そんな細かいことばっか気にしてちゃおっきくなれないぞー」
「身長が?」
「おっぱいが」
「なるほど。いま姉のおっぱいが大きいのと、私やひか姉様のおっぱいが小さいのはそれが理由かな」
「まあこの理屈だと、ヒナのおっぱいが小さいことの説明が付かないんだけどね」
「だね。大雑把さとおっぱいの大きさが比例するなら、なが姉がぺったんなわけないもん」
「あはは──で、そのなが姉は? いないの?」
「いるけど、ついさっき起きたとこだから。もうそろそろ下りてくるんじゃないかな? ……あ、来た」
「……二人とも、朝から玄関でおっぱい連呼しないでよ」
「あ、ぺったんだ」
「ぺったんだけど、ぺったんって呼ばないで。自分がぺったんなことはもう諦めてるけど、別にぺったんって呼ばれても良いってわけじゃないから」
「なが姉もぺったん連呼してるじゃん……」
「あとナギ、朝からうるさい。ナギの声って寝起きの頭に響くんだから、もうちょっと静かにしててよ」
「いやー、それはこんな時間まで寝てるヒナが悪いんじゃない? もう朝の八時なんだし」
「私にとって朝の八時はまだ寝てていい時間なんだってば。今からでも学校には間に合うんだから」
「そのギリギリまで寝ようとするスタンス、妹として心配だからそろそろ止めてほしいんだけど……」
「──て言うかナギ、来るの早くない?」
「なが姉、妹としての抗議は無視?」
「遊びに行くから家まで迎えに来るとは言ってたけど、確か九時って言ってなかった?」
「あ、これ本格的な無視だ」
「ん? ……ああ、九時にここを出るつもりだったから、一応保険として早めに来たんだよ」
「保険?」
「ヒナがまだ寝てたときのための、ね。九時にヒナを起こすとこから始めてたら間に合わないから」
「ああ、そういう。禎女が起こしてくれるとはいえ、起きないときは起きないからねえ、私」
「……なが姉。分かってるなら改善してくれない? なかなか起きない姉を毎日起こすって、結構疲れるの」
「そう言われても、眠いものは眠いし……ああでも、起こしに来たはずの禎女が私の毛布に入って寝てるとき、たまにあるもんね? やっぱ疲れてるんだ」
「…………」
「え、どうしたの?」
「……いえ、そうですその通りです。なが姉を起こすのは並々ならぬ重労働なので、つい布団に入ってしまうこともあります。決して、この立場を利用して添い寝したいだなんて考えてませんとも」
「ふふ。誤魔化さなくても、禎女が私のこと大好きなのは分かってるってば。別に隠さなくていいんだよ?」
「……なが姉のそういうところは嫌いです」
「──まあナギ、とにかく上がれば? わざわざ早く来た理由も無くなっちゃったけど」
「そうだね。禎女ちゃんが優秀だったおかげで……じゃあお言葉に甘えてお邪魔しまーす、っと」
「ま、そりゃ私の自慢の妹だからね」
「……自慢の妹なんて、そんな。照れる」
「『なんでなが姉が誇らしげなの?』ってツッコミを期待してたんだけど……普通に照れられた」