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二度目の世界と紅月  作者: 華月紅陽
プロローグ2【7/20】
17/312

#9

〜流礼の部屋〜


「──ところで末雛さん。ちょっといいかい?」

「んにゃ? どったの?」

「この『末雛さん』って呼び名だと、禎女ちゃんがいるところだと紛らわしい気がしてね。分かりやすいように呼び方を変えても良いだろうか?」


「そりゃ別に良いけど。そもそも、なんかちょっとよそよそしい感じあったし──ちなみに、昔の私達ってどんなふうに呼び合ってたの?」

「あ、それはあたしも気になるかも」

「いや、残念ながら僕もそこまでは覚えていないね……それに仮に覚えていたとしても、やっぱり一方的に旧交を温めるのは微妙だろうし」


「まあそれは明音波さんじゃなくって、忘れちゃってるあたし達のせいなんだけどね……」

「それに『昔のことは忘れて新しく友達になる』のであれば、昔の呼び方は使うべきではないだろうしね。だから暫定的に『末雛さん、夕凪さん』と呼んでいたわけだが……紛らわしいから、下の名前呼びとか渾名あだな呼びとかに変えようかと思ったのだけれど」


「渾名って、たとえばどんなの?」

「ああいや、言ってみたものの、まだそこまで考えてはいなかったのだが……それに、僕はそういうのを考えるのは苦手だし」


「まあでも、とりあえず試しに何か考えて呼んでみたらどうですか? それで流礼さん達が気に入ったら採用って感じで」

「いや、しかし……」

「お、面白そうじゃんか」

「さすが朱雀ちゃん、ナイスアイディアだよ──ささ。明音波さん、好きに呼んでみて?」


「………………す、すえひー、とか?」

「……禎女ちゃんとの区別化が目的だったわりに、名字由来なんだ」

「──あ! え、えっと……流礼だから……」

「いやいや、すっごく可愛いと思うし、それでいいんじゃない? それじゃ明音波ちゃん、今後私のことは『すえひー』って呼ぶこと!」



「渾名が可愛いっていうより、顔真っ赤にして恥ずかしがってる明音波さんが可愛いんだけどね」

「流礼さん、本音が漏れてます」


「おっと……そうだ。せっかくだからナギの渾名も考えてみたらいいんじゃない?」

「ごまかせてないですからね」

「明音波さんの赤面をもう一回見たいってだけでしょ」


「夕凪さんか…………ゆうなぎ、ゆうなぎ……」

「そしてこっちは真面目に考え始めてるんですか!?」

「また名字由来なのは決定してるんだ……」


「──ゆなんぐ、というのはどうだろうか?」

「どうだろうかと言われても……独特だね」


「──採用!」

「うわ、びっくりした……ヒナ、どうしたの? ──って採用なの!?」

「そりゃそうじゃん。こんなおもし──可愛い渾名、使わなきゃ勿体ないしね」

「今、面白いって言いかけなかった?」

「気のせいだよ」



「……ねえ。いささか不公平ではないかな?」

「? どゆこと?」

「僕が二人に対する呼び方を変えるのであれば、二人も──特に、す、すえひー……も、僕に対する呼び方を変えるべきだと思うのだけれど」


「ああ、そういうこと……じゃ、ネハでいいかな?」

「アカネハのネハってことですか……そして明音波さんが律儀にすえひー呼びしたことには触れないんですね」

「……ヒナって、無自覚に鬼畜なとこあるから」


「あ、ああ。呼び方はそれで別に構わないけれど──不公平感が全く拭えていないのはどうしてなのだろう……」



 ──それからしばらくは、お互いの呼び方の話で盛り上がった。


 禎女が「ごはんできたよ」とドヤ顔で知らせに来たのは、私達が部屋に入ってからおよそ三十分後のことだったらしい。

 禎女が作る料理はもともとかなり美味しいけど、そのときの食卓はそんな普段よりも明らかに豪勢で、禎女の力の入れっぷり──もとい、私が友達を作ったことへの喜びが伺えたんだとか。

 姉をどんな奴だと思ってるんだか。


 ……ちなみに「らしい」「伺えたんだとか」という語尾から分かるように、これは伝聞である。

 禎女が部屋に来たときには、私は自分の布団で爆睡していたんだってさ。

 おいおいマジかよ、である。我ながら。


 でもって、誰も起こしてくれなかったの?

 ……起こしたけど起きなかったんだろうな。


 禎女がくれた(くれる?)あのふかふか枕が無くても私は寝れるということだけが、ある意味収穫と言えなくもないけど……。


 起きたときには夕方だった。

 さすがにみんなもう帰ってたよ。


 これはあれかな? 二度目の夏休みも惰眠を貪ってるうちに終わっちゃう的なやつか?

 ありそうでこわい。


 いや、それで駄目ってことはないんだけど……でもやっぱり、何かしら「一度目」と違うこともやってみるべきかな?

「……あ、思い付いた」

プロローグ2、これにて完結です。

ここからヒロインごとのシナリオに分岐していきます。


もうしばらくの間は週5更新のままです。


次回からは「夕凪今際ルート」。

3つある正統派ルートの1つめです(残りの2つは「核心に迫るルート」)。

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