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最強を見せないで  作者: タナル
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“切る”を制した少年は能力者を切る

能力を隠している主人公がバトルをしたり、妹とイチャイチャしたり女の子とラブコメしたりする異能力系物となっています。

授業中、唐突にクラシックのカノンが鳴る。

昼休みが始まる合図だ。教師が終わりのあいさつをし静かだった教室に喧騒が広がっていく。

ある者は学食にいき、ある者はお弁当を広げ、そしてある者は窓から飛び降りてグラウンドに向かう。

ここは三階だというのに...。


「いいよなぁ~、身体強化系の能力の持ち手は。ああやって直ぐにグラウンドに飛び出せるしよ。」


ちょっとした愚痴っぽく僕に話しかけて来たのは飯島透いいじまとおる

最近染めたばかりの茶髪をいじりながら僕に寄って来る。


「なぁ、お前もそう思わね?天音(あまね)。」

「お前の物を動かす能力で自分を浮かせればいいんじゃないの?」

僕は透にそう提案する。

「俺の能力じゃあそんなに重い物は浮かせられないってしってるだろぉ?」


渋い顔をしながら透が僕ににじり寄ってくる。


「そんなことより早く食べよう。」

「そんなことって...。」


弁当を広げて食事を始める。透は空いた前の席に座り僕のほうに向く。

おかずを食べていると校内放送が流れてきた。


浮乃宮(うくのみや)学園放送部がお送りしますお昼のラジオの時間が遣ってきました!」


快活な可愛らしい声をBGMに透は僕に話しかけてきた。

「なあなあ、お前ランキング戦に出んの?」

「出るわけないでしょ...、僕の能力じゃ良くて初戦敗退だよ。」

「それ何にもよくねぇじゃん。」

冷静にツっこんでくる透に苦笑を返す。

「天音の数秒間自分に対する攻撃を()()って能力強いと思うんだけどなぁ~。」

「でも使ったら数秒間インターバルがあるから。」

透にはそう反論しとく、まあ透がいった能力は僕の能力のすべてではないのだが...。

諸事情により僕は自身の能力を周囲には偽っている。

僕の能力を知る者はこの世で二人しかいない。


「はぁ~ランキング戦に勝ってランカー特権得たいなぁ~。」

透がそうぼやく。

ランキング戦とはその名の通り学内の生徒が勝負をし順位を決めるというものだ。

上位ランカーになれば色々な特権がもらえ就職する際にも一般生徒よりも優遇される。


時計を見ればそろそろいい時間、駄弁っているうちに昼休みの時間が迫ってきていたようだ。

「お、噂をすればランカー様だぜ。」

透が顔で示した方に金髪でツインテールのいかにもお嬢様然とした女子生徒が教室に入ってきた。

「気安く、こっちを見ないでくれる?」

「あ...すんません...。」

威圧された透が謝罪とともにうなだれる。

こいつ見た目がチャラい割に根性がない。正直今のはダサいが...、かわいそうだから言わないでおくが。


「透、お前ダサいな。」

前言撤回やっぱりからかいたいから言った。

「しょうがねだろぉ、相手はあのランク8位の倉火灯(くらびともしび)だぞ。」

何故か説明口調の透が言うように彼女は倉火灯。ランク8位のランカーで何やら火の能力を使うらしい。


弁当を片づけ、次の授業の用意をする。

能力者の学校と言っても普段行う授業は一般の学校と変わらない。

能力者だからと言って教養を身につけなければ常識のない戦闘狂になってしまう。能力を使った実習もあるが今日の午後からの授業は社会と数学で終わりだ。


眠気半分で授業を聞き続け、気が付けば終礼となった。

そそくさと帰りの用意をし席を立つ。

「もう帰るのか。じゃあな。」

透が手をひらひらさせながら言ってくる。僕も同じようにして教室を去った。


階段を降り、そのままグラウンドを渡って正門を出る。

うちの学校は上履きに履き替えることがない。手間が省けて個人的に助かる。


正門を抜けて寮に向かう。

浮乃宮学園の生徒たちのほとんどが寮生活だ。

日本に数校しかない能力者学校ということもあり生徒たちには1LDKの部屋が与えられている。

その為敷地内は広大でその面積のほとんどが生徒たちの寮であるマンションで埋められている。


自分の寮である六階建てのマンションの階段を上っていく。エレベーターが完備されているが自室は三階なので普段から階段を使っている。

自室の前に行き鍵を出そうとするが面倒なのでインターフォンを押す。中から足音が聞こえてきて、ガチャリと音がしてドアが開かれた。

「おかえり、お兄ちゃん。」

笑顔で僕を出迎えてくれたのは妹の未来(みくる)だった。


制服から部屋着に着替え、妹にハグされる。

体温と出自の分からない良い匂いがして、少しだけ恥ずかしい。

「おい、もういいだろ...。」

「んーもうちょっとだけ。」

毎日の日課みたいになってしまっているこの行為はいつからか未来が始めたものだ。

やっと解放されて未来の感触が離れていく。少しだけ名残惜しく感じてしまう僕はシスコンなのだろうか。

「ちょっとお兄ちゃん臭いから風呂入ってきて。」

「え...お、おう...。」

妹でも女子に臭いと言われるのはきついな...。

ということで風呂場に行き服を脱いでシャワーを浴びる。

因みにだが妹は能力者ではない。今いる家族では僕だけが能力者だ。

普通、能力者は親が能力者だったりすることが多い。だから僕は数少ない突然変異者だったりする。

突然変異は命に危機が迫ったり精神が過剰に追い込まれたりする過程で起こる。

僕もそういう目に会って能力が開花したくちだ。

「そろそろ出るか...。」


脱衣所にでてタオルで体をふく。

念入りに洗ったからこれで臭いお兄ちゃんから綺麗なお兄ちゃんに進化出来たことだろう。

脱衣所を出ると未来が目の前に立っていた。懐に飛び込む勢いで僕に近づいてきてすんすんと鼻を鳴らす。

「うん。臭くない。」

そう独りごちると踵を返してリビングに戻っていく。

全く...、体臭にうるさい妹だ。


未来が作った晩御飯を食べ終わり適当に時間をつぶしていると夜も更けてきた。

「そろそろ寝るか...。」

一般生徒に設けられている部屋は1LDK。一人暮らしならば十分な広さだが、僕らは二人で暮らしている。

しかも思春期まっさかりの妹と。自室用の部屋は未来に使わしているので必然的に僕の部屋は無く、リビングのソファの上で寝ている。

電気を消して毛布をかぶる。未来はもう寝ただろうか...。

「おやすみなさ...」

「お兄ちゃんまだ寝ちゃダメ。」

未来がソファの上から覗き込んでくる。

「お兄ちゃんはお前と違って明日も学校があるんだ...寝かしてくれ。」

「ホラー見ちゃって怖いから一緒に寝て。」

「またか...。」

最近動画配信サービスに登録した未来は苦手なのにホラーばっか視聴している。

「なんで見るんだ苦手なのに...。」

「怖いけど面白いもん。」

「それは置いといても年頃の兄妹は一緒に寝ないんだよ...。」

「それは普通の家庭での話でしょ。私たち普通の家庭じゃないじゃん。」

「...。」

それを言われると弱い...。

「分かった...今回だけな...。」

「そう言って何回も寝てくれてるけどね。」

今日も妹と寝ることになりそうだ...。


妹の布団に潜って早30分、未来はもう寝たらしくすうすうと寝息をたてている。

寝返りをうちたいが腕に抱きつかれているので出来ない。

「気持ちよさそうに寝やがって...。」

髪を梳かすように頭をなででやる。めんどくさかったり、少しイラっとすることもあるが僕の原動力になっているのは十中八九こいつだ。

自然と笑みがこぼれる。

「お兄ちゃん...」

寝言か...。僕もだが未来も大概ブラコンだな。

何だかなごやかな気持ちになる...。

「ふがっ!」

突如、妹からパンチが飛んできた!

「ざまぁ~...すうすう...。」

前言撤回こいつやっぱりうざいだけかも。


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