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休息


パークスにつれられた先は、大きな館だった。それを見てラトルはパークスが名家の人間だと言うことを認識し直した。


「ここは、客人用の別館です。中にはメイドもいて部屋もいくつも余っているので使ってください。ラトルくんの他にも何人か客人が滞在しているので、話してみるといいと思います」

そんなことを話しながら、パークスは大きな扉を開いた。作業をしていた三人のメイドがこちらに気づき、玄関に並ぶと頭を下げた。それぞれ赤、青、黄色の髪を邪魔にならないよう後ろで結わいていて、身長は赤髪のメイドがラトルと同じくらいで他の2人は10センチほど低い。


その中の赤髪のメイドが言う。

「お帰りなさいませ、パークス様。こちらにはどのようなご用件で?」

「急で申し訳ないのだが、客人がひとり増えたので任せていいかな? 空いてる部屋に案内してあげてほしい」

「はい。承知いたしました」


「ではラトル君、またね。今度また時間があるときに、議論の続きでもしようじゃないか」

パークスはラトルにそう言って館を出て行った。きっと明日の準備があるのだろうと手短に別れを告げた。



「では、ラトル様。こちらへどうぞ。荷物も運びましょうか?」

ラトルは青髪のメイドさんに連れられて二階に向う。


「えぇと、お名前は?」

「申し遅れました。私、サフィと申します」

ラトルがついでに他のメイドさんの名前を尋ねると赤髪、黄髪をしたメイドさんはそれぞれ、ルーベ、シトリ、という名前らしい。館は二階建てで一階が共有スペース、二階が各個室になっていることも案内中に教えてもらった。


個室の前まで案内され、「ではまた夕飯がご用意でき次第お声掛けさせていただきます」と言ってサフィは仕事に戻っていった。


個室のドアを開けると、中は1人用のベッドに机、空の本棚がありシンプルで使いやすい広さになっている。机の上に荷物をおいてベッドにダイブしたラトルは、移動の疲れが出たのか眠ってしまった。






「・・・様。夕食の準備が出来ました!!」

元気な声と一緒に勢いよくドアを叩く音が聞こえる。次第に大きくなる音でなんとか目を覚ましたラトルは、重い頭と身体を動かしてドアを開けた。

ドアの前には満面の笑みをしたシトリがドアを叩く動作を急に止めたような変な体勢でいた。

ラトルが寝ていて反応できなかったと謝ると、シトリは「お疲れでしたら、お食事を部屋までお持ちしましょうか」と提案してくれた。


これ以上迷惑をかける訳にもいかない。

ラトルはそう思って「食堂でいただくことにするよ」と伝えた。




ラトルがシトリと共に食堂に向うと、メイドの2人を除くと1人しか残っていなかった。

室内なのにフードを深く被り、食事をしている。

食堂は長テーブルがコの字に並べられており、その周りにそれぞれ座り、食事を取る形式になっていた。


どこに座っても良いようなので、なんとなく先の客人が斜め先に見える位置に座った。ラトルの座った位置からではフードの人物の様子は伺えなかったが、華奢な印象を受けた。



ラトルがフードの人物に気を取られている間に、料理が運ばれてきた。

パンはバケットに食べやすい大きさで並べられ、シチューは湯気をたてている。それとみずみずしい野菜がカットされてボウルに盛られていて、香りのよいドレッシングのようなものが上にかかっていた。

「どうぞ、召し上がってください」

研究第一で食をないがしろにしていたラトルには、目の前に並

べられた料理は豪勢すぎた。




ラトルは、美味しすぎてなぜか泣きそうになりながら完食した。気がつくと、フードの人物もすでに食堂を後にしており、食堂には片付けを始めたメイドの3人しか残っていなかった。


ラトルは胸の前で円を描いた。それは幼少期ラトルが住んでいた地域での完食を意味する作法だった。

それに気づいたのかルーベはラトルに声をかけた。

「お口に合いましたでしょうか?」

「おいしかったです。突然のことなのにありがとうございました」

「パークス様はあのような人ですから、いつも少し多めに作るようにしているんですよ」

とルーベは微笑んだ。



部屋に戻り、くつろいでいるとシトリが部屋を訪ねてきた。「大浴場があるのでそこで疲れを癒やしてはいかがですか?」いう

ことでお言葉に甘えてラトルは大浴場に向った。



大浴場ですっかり疲れがとれたラトルは部屋に戻るとベッドで仰向けなった。

ラトルは今日一日を振り返る。初めは不安だったこの旅もいつの間にやら楽しんでいた。パークスとの会話、美味しい料理に綺麗な大浴場、そして快適な部屋。




ラトルは自身の追放の原因になった行いを間違いだったとは思っていない。

これからも魔法学者として、時に疑い、時に確信を持って前へ進もう、と強く心に決めてラトルは眠った。


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