カノジョの父が犯した過ち。
彼のことを責められる人って、どれだけいるのかな。
書きながら、そう思いました……(´・ω・`)
宗一郎と美浜は、人気のない公園へとやってきた。
肩で呼吸をしながらベンチに腰を下ろす。
「これから……」
肺が裂けるような感覚に陥りながら、背筋は嫌に凍えていた。
あんなことをしては、もう会社に復帰するなんて不可能。それどころか、上司の様子を見るに会社の存続自体が怪しいように思われた。
気持ちが沈んでいく。
思い浮かぶのは、どれも最悪の事態だった。
自分にはもう行き場がない。酒に溺れた結果、妻には手を上げた。泣きじゃくる娘を振り切ってまで、大切な我が家から逃げ出したのだ。
そして次は、職さえ失う。
足元が一気に崩れ落ちていくような感覚に襲われた。
飲んでもいない酒の酩酊感にも似たそれに、宗一郎は吐き気を催す。
「大丈夫ですか!?」
「あ、うぅ……」
とっさに美浜が背をさすってくれた。
それによって無様を晒すことはなかったが、いずれにせよ情けない。
今回もまた、自分は彼女に助けられてしまったのだから。先輩らしさも欠片もない男のために、こんな若く将来有望な女の子を巻き込んでしまった。
その事実もまた、彼のことを苛める。
自分は本当にろくでもない。生きている価値などない。
そう思い至った宗一郎は、おもむろに立ち上がった。そして、
「え……!? だ、駄目です! 先輩!!」
何かに誘われるように、公園からほど近い踏切へと向かう。
うるさく電子音の鳴り響くそこへあと少し。そんな彼のことを止めたのは、やはり幾度となく助けてくれた美浜だった。
彼女は宗一郎の手を引く。
すると、足腰にまるで力の入っていない彼は容易く尻餅をついた。
「どうして……」
「……え?」
目の前を走り抜けていく電車を見送りながら。
宗一郎は、掠れた声で美浜に訴えた。
「どうして……どうして、止めた! どうして死なせてくれなかった!?」
次第に大きくなっていく声。
夕暮れ時の人気のない公園に、それは寂しく響き渡った。
「もう、駄目なんだ。俺はもう、生きていたくない……!」
宗一郎は、必死に訴える。
生きていくのが辛い。こんな気持ちのまま、この先ずっと生きていくなんて不可能だ。自分は多くの人を失望させ、裏切って、見捨てられたのだから――と。
彼は壊れたラジオのような叫びで、己の無力さと無意味さを言葉にした。
「先輩……?」
「キミだって失望しただろう!? 頼れる先輩かのように振舞っていた男が、結局誰の期待にも応えられない無能で、最後には迷惑かけながら消えていくんだから!!」
「………………」
子供のように喚く宗一郎。
そこにあるのは、あらゆることへの無念、だろうか。
責任感が強く、誰よりも優しく、常に他人の役に立とうとした彼だからこその無念。自分には力がなく、あまつさえ大きな問題を引き起こしたことを責め続けるのだ。
だが、それは必ずしも――。
「……先輩は、大丈夫です」
「え……?」
――悪、なのだろうか?
打ちひしがれる宗一郎を見て、美浜佳奈多はそう思った。
そして、呆気に取られる彼を抱きしめるのだ。
「大丈、夫……?」
彼女の言葉に、宗一郎は思考が停止したように返す。
佳奈多は一つ頷いて、こう続けた。
「先輩は誰よりも頑張りました。そのことを、私はよく知っています」
自分よりも一回り背丈の高い男性。
そんな彼の頭を優しく、子供をあやすように撫でてあげながら。
「だから、いまは――」
意を決したように。
佳奈多は、宗一郎にこう告げるのだった。
「私と一緒にきてください。私が貴方を守りますから……!」――と。
ボロボロになった彼の心に、彼女の声が染みわたっていった。
受け入れてはいけない。そう理解はできていた。
でも、この時の宗一郎にはもう――。
「………………あぁ、ごめん…………!」
佳奈多の提案を受け入れる以外、選択肢がなかったのだ……。




