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となりの倉庫の鎧さん  作者: 越川陽登
4/4

学園祭当日 11:00

組み立ては滞りなく終わって、強度テストもバッチリ終わらせ、学園祭当日。

我が2年C組の出し物「暗黒迷宮(ブラックラビリンス)」はなかなかの賑わいを見せていた。

まぁ勿論、段ボール迷路という催しの特性上、どうしても回転率が悪くなってしまうのはあるが、それでも中で参加者が詰まってしまうこともあったほどだ。


「賑わってるねー、ちょっと難しくし過ぎたかな?」

「楽しんでもらえてるならいいんじゃない?」


私と茉莉(まつり)は入り口で来場者の受付をしながら、顔を見合って微笑んだ。

最初はどうなることかと思ったが、こうして企画として成功しているのは嬉しいことだ。


「企画名の暗黒迷宮(ブラックラビリンス)は、正直どうかと思わなくもないけど」

「う、うっさい!佐弓(さゆみ)だって『いいじゃん、かっこいい』って言ってたじゃん!」

「えー言ったっけー?」


私の漏らした言葉に、茉莉ががーっと噛みついてきた。

そこから言ったの言わないのの水掛け論に発展していく。それを見てくすくすと笑いながら、シフト管理をしていた五百部(いおべ)さんが声をかけてきた。


「フフッ、根本(ねもと)さんも妹尾(せのお)さんもそのくらいにして、時間なので交代していいですよ」

「あ、ありがとー五百部」


いつの間にか交代の時間になっていたようだ。私と茉莉は椅子を立って五百部さんたちに場所を譲る。

と、私はふと気になって五百部さんに声をかけた。


「ねぇ五百部さん、聞きたいんだけど……何であの時(・・・)皆を呼んできたの?」

「えっ?一昨日の夜のことです?」


キョトンとする五百部さんに私は頷く。それを見た五百部さんは、大きく首を傾げた。


「んー、何でと言われても、鎧さんが動いてるのを目の当りにしたら、手伝ってもらおうとしませんか?」

「へ?何で?」


素っ頓狂な声が、私の口を突いて出た。

質問に質問で返す形になってしまったが、マナー違反とか何とか言ってられない。

五百部さんは指をピッと立てて、にこやかな笑顔で言葉を紡いでみせる。


「七不思議で伝わっている「となりの倉庫の鎧さん」の話、あれには続きがあるんですよ。

 夜に校舎に残って悪いこと(・・・・)をしている生徒、いわゆる不良学生さんは、その手に持った剣で一刀のもとにに斬り捨てられてしまう。

 でも、悪いこと(・・・・)をしていない、本当に困っている生徒には――」



――困りごとが解決するよう、手伝いをしてくれるんですよ。



そう言って、七不思議の真相を告げて、五百部さんはもう一度にっこり笑った。



学園祭が終わった後も、鎧さんは満月の夜になる度に動き出しているらしい。

コンクールを間近に控えた吹奏楽部から、大会を間近に控えた運動部から、手伝ってもらった話が満月の夜を過ぎる度に上がってきた。


しかし私には、あの日からずっと気になっていることがある。

話す人話す人、皆が皆「手伝ってもらった」という話ばかりで、「斬り捨てられた」なんて話がちっとも上がってこないのだ。

あの逸話は誰が(・・)広めたものなのだろう?

斬られながら生き残った被害者、被害者に同行していて逃げおおせた別の学生、それとも――?



その真実を確かめるために、満月の夜に居残ることを、鎧さんは果たして許してくれるのだろうか。

真実は……満月の夜の倉庫の中でしか、分からない。



~終~

となりの倉庫の鎧さん、これにて簡潔です。

読了くださり、ありがとうございました。

ホラーは未経験のジャンルだったので、ちゃんとホラーになっているか、怪談になっているか、我ながら確証が持てませんが、楽しんでもらえたなら幸いです。


他の連載中の作品もございますので、機会があればそちらもよろしくお願いします。


以上、越川陽登でした。

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