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ゾンビが出て終わったと思ったらデスゲームかよ⁉︎  作者: 異世界の猫
第1章 高校編
8/13

教室でのひと時

 

 ???side


 今私たちは困惑している。川崎の指示でレベルアップも含め、生存者を探すために体育館に来てみたのだが、そこにいたのは1人の男だった。近くには、巨大な狼の死体が転がっている。この男がやったのだろうか?


 私がそんなことを考えていると、男は意識を失ったのかその場に倒れ込んだ。



 そんな男をみて警戒心を剥き出しにしている班員達。


 私は警戒しながらゆっくりと男に近づいていった。



 その男に近寄った私は、腹部の傷をみて驚いた。


(酷い傷ね、それに少し変色してる。これは......毒?)



 私はすぐに男を担ぎあげ、一緒にきた班員に指示を飛ばした。


「誰か手伝って!急いで教室まで運ぶわ」




「そんな奴連れ帰るつもりかよ。こんな化け物殺してる奴だぜ?ほっとけよ」


「そうだって。やめとけよ、何しでかすか分かったもんじゃねぇ」



 私の意見に賛成してくれない者もいたが


「責任は私が取るわ。嫌かもしれないけど手伝って」


 彼らにそう告げる。


 男達はその言葉に、説得しても無駄だと悟ったのか嫌々であるが協力し、桐生を教室へと運んで行くのだった。



 ――――――――――――――――――――――――



 桐生は現在、ある教室の隅に置かれたベッドに寝かされていた。そのベッドはこのような場所にあるには不釣り合いほど綺麗な状態である。(恐らく誰かが〈ストア〉で買ったものだと思われる))



 既に桐生が気絶して教室に運び込まれてから3時間以上が経過している。


 これも毒の効果なのか桐生は一向に目を覚まさない。



「おかしいわ、こんなに経つのにまだ目を覚まさないなんて」



 桐生の横に座り容体を確認している少女がそう呟く。



 この少女は桐生が教室に運び込まれた際、川崎が桐生の監視兼治療役に抜擢した人物である。


 この少女はレベルが10を超えており、ある職業に就いている。


 その職とは〈僧侶〉である。



 〈僧侶〉とは主に回復重視の魔法を覚えるとされている職業でその戦い方は大体が後方支援という形になる。



 心配そうな表情で少女は桐生を見つめている。その時、教室のドアが勢いよく開けられた。



「なぁに暗い顔してんだよ、睦月!」



 ()()、そう呼ばれた少女はすぐにそちらの方へ目をやり、教室に入ってきた人物の名前を呼ぶ。


「葉月さん」



 ()()と呼ばれた男は睦月の横へと歩を進める。



「どうした、コイツまだ起きてないのか?」



「はい、まだ一度も」


 睦月は魘されている桐生を見つめながらそう話す。



「マジか。傷は随分深いみたいだな。毒も回ってるって聞いたぞ」


 桐生のえぐり取られた脇腹を苦い表情をしながら葉月は確認する。



「そうなんです。それもかなり強力な毒みたいで、回復魔法も試してるんですが効果は見られません」


 睦月は悲しそうな表情をしながらそう返す。


 今まで、ゾンビとの戦闘で怪我を負った者たちを魔法で治していた睦月だが毒に対する処置は今回が初めてであった。


「どうしたらいいんでしょう、葉月さん」



 そう力なく葉月に問いかける睦月。その問いに葉月は悩みながらも



「そうだねぇ、とりあえず川崎に相談してみないか?アイツ何考えてるかわからないけど俺たちの中で一番情報持ってるから」


 そう返した。


 彼の言うように川崎は、やたらゾンビの事に詳しいのである。そんな川崎に相談するのは得策だと言える。



「そうですね!川崎さんなら何か対処法について考えられるかもしれません」




 葉月の考えで睦月は少し元気を取り戻したようであった。


 ――――――――――――――――――――――――



 2人がそんな会話を終えてしばらく経った時、この教室にある男がとてつもない速さで走り込んできた。



 その男に驚く睦月と葉月だったが、その男は2人には目もくれず桐生に掴みかかった。


「はぁはぁ、桐生か?おい、桐生!起きろよ!」



 桐生を揺さぶりながらそう叫ぶ男。



「お、おい!何してる!離れるんだ」



 その男は葉月により桐生から引き剥がされる。よほど急いでこの教室へ来たのか、まだ息は酷く荒れていた。




 数分後、男は落ち着きを取り戻しベッドに横になった桐生を見つめていた。



 そんな男に葉月は質問をぶつける。


「急にどうしたんだ。お前この男の知り合いか?」



「あ、ああ。幼馴染なんだよ、コイツ」



 その男は桐生を指差してそう返す。それを聞き睦月も話しかける。



「そうなの?じゃあ彼の名前とついでに貴方の名前も教えて欲しいんだけど、いい?」



「ああ、コイツの名前は『桐生 信』で、俺は『篠宮 晴人』だ」



 素直に睦月へ名前を教える晴人。


 そして、何故ここへ来たのかも説明し始めた。


 ここに来たのは川崎から怪我をした男が運び込まれたと聞かされ、また別の友人からその男が桐生であるというのを聞いたから、との事だった。



「ふーん、理由は分かった。だが今コイツは絶対安静だ。下手に刺激するな」



 理由を聞き納得はした葉月であったが、晴人には念を押して注意をしておいた。


「う、すまん。そんなに酷いのか?桐生の怪我」


 晴人は謝りつつ葉月に問いかける。



「怪我は見ての通りだ。肉が抉られてかなり痛々しいもんだな。だが一番厄介なのはこの傷から入った毒だ」



「毒?」



「ああ。回復魔法も効かないらしい。このままこの状態が続いたらコイツ死ぬかもな」



 桐生に目を向けながらそう告げる葉月。


 それを聞いて晴人は焦りながら再び葉月に問いかけた。


「死ぬ⁉︎そんなにヤベェのかよ。どうしたら治せるんだ?」


「馬鹿野郎!それが分かれば俺らだって苦労してねぇよ!」



「マジか。クソッ、俺に出来る事なんかねぇのか

 よ!」



 晴人は何もできない自分に苛立ちが募り、強く手を握りしめていた。


 そんな晴人に睦月が話しかける。



「あの、晴人さん。川崎さんに尋ねてみてはどうでしょう?」



「川崎に?どうして」



「川崎さんゾンビとかについて詳しいですから、もしかしたら治す方法とか知ってるかもと先程話していたんです」



「確かに、川崎の奴なんでか知らないがゾンビについて詳しいな」


「申し訳ないですが私達に出来る事は無いと思います。」



 悔しそうに俯いてそう告げる睦月。



「そういう事だ。早く川崎んとこに行ってこい」



「ちょ、おい!」



 葉月はそう言いながら晴人をそそくさと教室から追い出した。



「......葉月さん。彼の事嫌いなんですか?」


「ああ、ちょっと気に入らないかな」




 こうして、教室を追い出された晴人は川崎の元へと走り出すのであった。




「あのヤロー!!!覚えてろよ」




 そう叫びながら。




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