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ゾンビが出て終わったと思ったらデスゲームかよ⁉︎  作者: 異世界の猫
第1章 高校編
6/13

晴人の戦い

 



 ふぅ、と一息つきながら晴人は金属バットを構え直し、目前の化け物に視点を移す。


 最初の一撃のおかげか多少はダメージがあるように見える。だがその一撃は晴人からすれば全力の攻撃であり、しかも不意打ちだったのだ。その事から晴人は内心、かなり焦っていた。


(不味い、分かっていたがやはり一撃で決め切れなかった!)



「おい!大丈夫か?」


 晴人は化け物から目を離さずに女生徒に問いかける。



「は、はい!大丈夫です」



 女生徒は急に話しかけられ驚いたのか、もしくは助かった事に安堵したのか、(あるいはその両方)身体をビクつかせながら答えた。




「そうか。なら聞け!いいか、俺が少しの間時間を稼ぐ、だからその隙に走って教室まで戻れ!」



 化け物は既に体制を整え始めている。



「え、で、でもまだ腰が「四の五の言わずに走れ!死にたくないのなら!」



 女生徒にそう喝を入れ、晴人は目前の化け物をしっかりと観察する。



 皮膚はなく、筋肉が剥き出しになっている見た目からダメージは通りやすそうな印象を受ける。だが実際は先程の様子を見て分かるように、生半可な攻撃は受け付けないだろう。




「グルルルゥゥル!」



 獲物を目の前に邪魔をされた事に腹を立てたのか、化け物は晴人を威嚇している。



「俺を逃すつもりは無いらしいな。まぁいい、俺も逃げるつもりはないから......な!」



 そう言い放ちながら晴人は化け物までの距離をつめ、頭めがけバットを振り下ろす。



 だがそれは、異様なまでに発達した右手により受け止められ、晴人はその右手によりそのまま壁に叩きつけられる。


「ぐっ⁉︎ガハッ⁈」



 背中から身体中に走る激痛、だが晴人は意識を落とす事なく立ち上がり、再び化け物にバットを向ける。



(やっぱりコイツは異質だ、今まで狩ったゾンビとは比べ物になんねぇ!)



 晴人は改めてこの化け物の強さを実感していた。




(だが、あの女子はもう逃げられたみてぇだな。)



 晴人が周りを見るともう女生徒は逃げ出す事が出来ていた。当初の目的を達成した晴人は、次に自分はどう逃げ出すかを考えていた。



(逃げるつもりはなかったが、今のままじゃコイツには勝てない。戦略的撤退ってやつだ)



 ジリジリと自分に歩み寄ってくる化け物、皮膚がないためよくわからないが、まるで自分を嘲笑っているようだという印象を受ける。



「クソがっ!気に入らねぇな!」



 背中の痛みに耐えつつ晴人は逃げ道を模索した。



(どうする?何処か適当な部屋に入るか?いや、袋の鼠になるな。......っ⁉︎そうだ!あれがある、どう足掻いても勝ち目がない今、あれに賭けるしかねぇ)




 ある考えに至る晴人。それは一種の賭けであった。



 ――――――――――――――――――――――――



 深呼吸をし、息を整える晴人。これから彼が行う作戦にはとてつもない激痛が伴う。内心晴人は恐怖に押し潰されそうになっていたが、気合いでそれを振り払う。



 彼が行おうとしている事、それは彼がレベルアップの際に獲得したある特典に関係している。



 晴人が選んだ特典の中に、〈神からの祝福〉というものがある。これは、所持者が死の淵に反した時発動するというものである。


 その効果は、所持者の全ての能力を3倍程に引き上げる、といったものだ。




 自分の攻撃が全て通らない今、晴人はこれに賭けるしかないと判断した。その為、彼は今ノーガードで化け物の前に立っている。



(めちゃくちゃ怖えがやるしかないな)



 震えを抑え、晴人は化け物に向かって叫ぶ。



「来やがれ!この化け物が!!」



 その声に応えるように、その右手を振り上げ、化け物は晴人を叩き潰した。




 晴人の死体を確認するため、ニヤついた笑みを浮かべながらゆっくりと腕を上げる化け物。そこには、血だまりの中に横たわる晴人の姿があった。



 化け物は勝利の笑いのつもりなのか、大きな奇声を発し、晴人の死体を貪り食うためにゆっくりと近づき始めた。




 刹那、化け物の持つ凶悪な右手、それが、()()()()()()()()()()()()()




 突然の出来事に大きく悲鳴を上げる怪物。それを尻目に、怪物の背後に立っている晴人は血で濡れた髪の毛をかき上げながら怪物に向かって叫ぶ。



「はぁはぁ、どうだ化け物!人間を甘くみた罰だ」



 しかし、晴人も既に満身創痍である。仕方なかったとはいえ、必要以上に血を流し過ぎている。



(うっ、不味い、意識を保つので精一杯だ。早いとこ決めねぇと)



 晴人はまだクラクラとする頭でなんとか意識をつなぎ、バットを強く握りしめ、怪物に向かって走りだす。



 怪物も抵抗しようとするが、右手をもがれた事から攻撃手段は無いに等しかった。それに仮にあったとしても、この怪物は今の晴人に勝つ事は無理であろう。




 パワーが違う、スピードが違う、背負う覚悟が違う、今の晴人と化け物とでは、全てにおいて、晴人が上をいく。




 決着はすぐに着いた。



 息を切らし床に横たわる晴人の近くには、頭部を失った怪物の死体が転がっていた。



「どうだ化け物!やってやったぜ!」



 そう声を上げ、晴人は意識を手放した。




 それからすぐに状況を聞いた、川崎と先に逃げ帰ったメンバーにより晴人は助けられ、無事に教室への帰還を果たすのだった。



 ――――――――――――――――――――――――


 桐生side



 一方その頃、桐生はというと



 絶賛戦闘中であった。



(なんだコイツら⁉︎皮膚がねぇ上に右手が太い。ただ単純に気持ちが悪い)




 2年生の棟に行こうとしていた桐生だが予定を変更し、現在体育館に向かっていた。そちらの方が生存者がいるのでは?と考えた結果である。



 その向かう途中、桐生はこの皮膚がない怪物に囲まれていたのである。



「なんだよお前らワラワラ湧いて来やがって!ゴキブリかよ!」



 そう吐き捨てながら化け物を切り捨てていく桐生。既に周りにはこの怪物達の死体が山積みになっていた。



 しばらくして、全ての化け物を倒し終えた桐生は一息つきながらこの化け物を観察し始めた。



(なんなんだコイツら、急に出て来やがって。鑑定してみるか)



 桐生はまず鑑定眼でこの怪物を調べてみることにした。


 〈鑑定〉


 ――――――――――――――――――――――――


 名称:カニバルゾンビ


 説明:ゾンビを喰らうことで更に力を得たゾンビ。特徴として挙げられるのは、その異常発達した右手である。弱点は炎であり、皮膚がないため剣での斬撃なども通りやすいとされている。だが攻撃する側のパワーが彼らの筋肉に阻まれる程であれば突破は不可能である。


――――――――――――――――――――――――



「なるほど、共食いしたゾンビってわけか。まぁそこまで脅威って程じゃないな」


 桐生はそう言いつつ、剣に付着した血を拭った。



「...さてと、それじゃあ行きますか体育館に」




 桐生はそう呟き体育館に向かっていく。



 その先には一体何が待っているのか。





次回から桐生の視点に戻ります


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