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ゾンビが出て終わったと思ったらデスゲームかよ⁉︎  作者: 異世界の猫
第1章 高校編
4/13

レベリング

 


 翌日、目を覚ました桐生は屋上から街の景色を眺めていた。


 そこから見える景色、それは普段見ていたものではなく、至る所から煙が上がり、悲鳴や怒号が飛び交う、まさに地獄と呼べるような光景であった。


 それを眺め、桐生は何をすれば良いのかを必死に考え、この世界がRPGのような世界に変わったのだとしたら、RPGの鉄則とも言える事をしなければいけないのではないか、という考えに至った。



 ならば、桐生のとる行動はただ一つ。RPGの王道であり鉄則中の鉄則。



「よし!レベリングするか!」



 そう、レベル上げである。



 桐生はよくいるような只のゲーマーではない。その実力はトップクラス。ことゲームにおいて桐生の右に出るものはいないと賞賛される程の腕前である。


 中でも桐生の最も得意とするジャンルのゲームはRPGである。


 RPGはレベルを上げる際の根気も必要だが、何よりメンタルも必要なゲームだ。



 そんなRPGのオンライン大会で桐生は常に1位を独占している。それは何故か、理由は桐生のキャラメイキングが、他のプレイヤーの追随を許さない圧倒的なものだからである。




「さて、まずは武器作りだな。まぁ武器が買えるまでは昨日みたいな箒で十分だろうな」


 屋上を降り、桐生は適当な教室に入り掃除用具入れから箒を取り出しながらそう呟いた。もちろん周囲には常に気を配っている。



 しばらくし、箒を加工し終わった桐生は昨日と同じように階段を下り、2階を探索していた。



「他に生き残ってる奴はいないのか」



 自分の他に生き残ってる人間を探す桐生、廊下をゆっくりと歩きながら進んでいると、ある一室から物音が聞こえてきた。



「っ!何処だ?」




 耳をすませ辺りを見渡す桐生。ふと、ある一つの部屋に目が止まる。



「......理科準備室か」




 音の発生源はどうやらここのようであった。




 桐生は息を殺し、ゆっくりと準備室の扉を開いた。



「チッ、ゾンビか。まぁ良いレベル上げも兼ねてるしな」



 そこにいたのは、2体のゾンビである。どちらもまだ桐生には気づいていない。



(どうする、1体は不意打ちでいける。だがもう1体は、おそらく普通にやるしかないな)




 そう考える桐生。現在桐生が抱いている不安要素、それは正面からの戦いで果たしてゾンビを殺せるのか?というものである。



(どちらにせよ、殺さないとダメなんだ。とりあえず1体は確実に殺る)



 ゆっくりとゾンビの背後に近づく桐生、そして射程範囲に入ったその瞬間、



「っオラァ!」



 1体の頭に箒の先端を突き立て、その機能を停止させる。



「ふっ、ダラァ!」



 突然の出来事に対処出来ていないもう1体のゾンビにも同様に箒を突き立てる。



 それは一瞬の出来事だった。しかし、その結果を生み出した桐生本人が一番驚いていた。



(身体が軽い⁉︎)



 桐生は身体が驚くほど軽くなっていて、かつ力も今までとは比べ物にならないほど強くなっていた。


(これがレベルアップしたことでの能力変化ってやつか)



 桐生がそう考えていると、脳内にあの無機質な声が聞こえてきた。



『レベルアップしました』


『レベルアップしました』


『特技:[致命の一撃]を習得しました』



 この報告に桐生はとても喜んでいた。まるで子供のように。


「おお!もう2つもレベルが上がったのか!これが特典の効果だな。...特技も習得したとか言ってたな」


 桐生は早速ステータスを確認することにした。


(ステータス)



 ――――――――――――――――――――――――


 桐生 信(きりゅう あき)

 職業:なし

 LV:4

 体力70

 魔力35

 筋力65

 素早さ46

 耐性80


 特技:致命の一撃

 魔法:無し

 レベルアップ特典:レベルアップ時能力2倍

 取得経験値2倍 鑑定眼

 ――――――――――――――――――――――――


 桐生のステータスは最初に選んだ特典により、急激に成長していた。


「やっぱりこの特典を選んで正解だったな」


 満足げにそう笑う桐生は次に特技を鑑定眼で見てみることにした。



「なんだ?この特技。《鑑定》」


 ――――――――――――――――――――――――


 特技:致命の一撃


 攻撃対象が自分にまだ気づいていない場合にのみ、自動で発動する。最初の攻撃のダメージが10倍になる。また、このスキルはユニークスキルでもある。


 ――――――――――――――――――――――――



「ユニークスキル?ってことはことはこの特技を覚えられるのは俺だけってことか。それにこの特技めちゃくちゃ強いじゃないか!」


 桐生がそう声を荒げるのも無理はない。相手に気づかれない、というのは確かに高難度だが、それと引き換えにダメージが10倍になるのだから。これはある意味破格の特技と言える。



「それに2体のゾンビを倒したからポイントも増えたよな」



「ストア」



 桐生はそう言い、ストアの画面を開く。


 そこには

 〈350ポイント〉

 と、表示されている。



「よし!この調子でレベル上げていくぞ」



 より一層やる気に満ち溢れ始めた桐生。これから彼は2時間もの間ゾンビをただただ狩り続けた。



 ――――――――――――――――――――――――


 2時間後



「ふぅ、まぁこんなもんだろうな」



 右手に持つ西()()()()()()使()()()()()()を机に置き、ある教室の床に座り込みつつ桐生はそう呟いた。



 2時間ゾンビを倒し続けた彼のステータスは、化け物じみたものへと、変貌していた。



「さて、どんだけ変わったかな。」




(ステータス)





 ――――――――――――――――――――――――


 桐生 信(きりゅう あき)

 職業:騎士

 武器:ブロードソード

 LV:15

 体力360

 魔力258

 筋力425

 素早さ320

 耐性280


 特技:致命の一撃 ドラゴンファング 血液の奔流

 魔法:聖なる矢 火球

 レベルアップ特典:レベルアップ時能力2倍

 取得経験値2倍 鑑定眼

 ――――――――――――――――――――――――



「...我ながらよくやったな」


 自分の努力に少し引きつつ、先程桐生はそう声を漏らした。



 しかし、桐生はこのレベル上げの途中どうにも腑に落ちないことがあった。



(どうして()()()()()()()()()()んだ?)



 桐生はレベル上げをしつつ、校内の探索も行なっていた。しかし誰一人として生徒には遭遇していなかったのだ。



「俺がまだ言ってない場所は1年生と2年生の棟だな。とすると、そこに籠城なりなんなりしてると考えるのが妥当だな」



 桐生の言うように、この高校は3年生と1、2年生とで棟が違うのである。そのため桐生の考えはあながち間違いとは言えないものだった。



(とりあえず昼飯食ったら、2年生の棟に行ってみるか)



 桐生はそう考え、昼食をとることにしたようだ。



 ――――――――――――――――――――――――



 〔その頃2年生の棟では〕


 晴人side



 桐生の考えは当たっており、既に死んでしまっている生徒もいるため、全員とは言えないがかなり多くの人数の生徒たちがこの棟に籠城していた。



 その中には、桐生の親友である篠宮晴人(しのみやはると)の姿もあった。



「ったくどうなってんだよ!なんだあのクソどもはよぉ、あぁん⁉︎」



 そう悪態をつきながら、がなり散らしているのはクラスの不良生徒である。



(まったく、静かにしてくれよ。アイツらが寄ってきたらどうすんだ。はぁ)



 晴人は内心、そう愚痴りながら現在の状況を考えていた。



(今この教室にいるのは俺を含めて15人、他の教室の奴らも合わせると大体100ちょっとか。ただ桐生の奴は見かけてない、アイツに限って死んだとかはないはず。ああ、全然考えがまとまんねぇ)



 頭を掻きながら必死に考えを巡らせる晴人。だがその思考は教室に駆け込んできた一人の生徒の言葉によって断ち切られることになった。



「はぁはぁ、っはぁ、お、おい皆!調査に出て行ってた奴らが帰ってきたぞ!」


 その報告を聞き、皆の目の色が変わる。もしかしたら助かる方法が見つかったのでは、と淡い期待を抱いた目に変わる。



「とりあえず、皆一旦会議室に集まってくれだってよ」



 報告に来た生徒はそれだけ言うと、別のクラスにも情報を回しに行った。



 他の生徒達が、報告を楽しみにし、ワイワイと賑わう中、晴人は帰ってくる時間の早さに不信感を抱いていた。



(調査に出かけて行ったのは朝の10時頃だった筈だ。今は11時、たった1時間で助かる方法が見つかったとは思えないが)


 この晴人の考えは当たっていた。



 これから聞かされる報告は決して助かる類のものではなく、むしろその逆。生きる希望を摘んでいくような報告である。




次回は晴人メインの話となります

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