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ゾンビが出て終わったと思ったらデスゲームかよ⁉︎  作者: 異世界の猫
第1章 高校編
2/13

世界の変化

 


 教師の1人が喉笛に噛み付かれ、その命を簡単に散らした。そんな光景を目の当たりにし、生徒達が冷静に居られる筈が無い。当然、教室内は生徒達の悲鳴で埋め尽くされる。中には、パニックになり教室から出て行こうとする者もいた。阿鼻叫喚、この状況はまさにそれであった。




「皆、落ち着いて!まずは冷静にならないと」



 クラスの委員長である少女はそう声を上げた。このように言う少女だが、やはり恐怖を感じているため足は少し震えていた。



 少女のそんな声を聞き、生徒達は少し落ち着いた雰囲気になった。未だに何人かは教室のドア付近に固まっているのだが。


「そ、そうね、まずは冷静に「うわぁああ!!?!?」



 少女にそう返そうとした生徒の声は、外からの悲鳴にかき消された。


「なんだよアイツら...」


 クラスの誰かがそう呟いた。


 生徒達が窓の外に目をやるとそこには、校門から入ってくる、先程の男のような集団、そして命を散らした筈の教師が別の教師に噛み付いているという状況だった。



「ウワァァァ!!!??!」 「イヤァァァ!!?」



 先程とは比べ物にならない程の混乱に陥るクラス、もう冷静になるのは不可能だろう。彼らは既に見てしまっている。人が死ぬ瞬間、そして簡単に人を殺せる奴らが、もうそこまで来ているのを。



 そうなるともう止まらない。ドア付近にいた生徒達は、我先にと教室から逃げ出し、それに続くように教室からどんどんと人が居なくなっていった。生徒をまとめる委員長も、やはり恐怖には勝てず、同じように出て行ってしまった。



 教室に残っているのは桐生1人だった。



「はぁ、まぁそうなるわな。あんなもん見たら誰だって」


 桐生はそう漏らし、また窓の外へ目を向けた。


 既に教師達は大半が、先程の集団により殺されており、また、その集団が校門付近に集まっている事から学校から出る事が出来なくなっていた。



 人を喰らい、外見も何処かしらが欠損している。そんな集団には、桐生の考えがピッタリと当てはまる。



「やっぱりゾンビ...だよな?アイツら」



 ()()()、そう形容するのが一番しっくりくる彼らは、既に校舎内へ侵入し始めていた。


「くそっ、なんでこんな事になってんだよ!」



 そう悪態をつくが、現在の状況が変わるわけがない。もちろん桐生もそんな事は分かっている。分かっているが、声に出さずにはいられなかった。



(...はぁ、アイツらが本当にゾンビなら、やるしかないよなぁ)



 そう考えながら桐生は、教室に置いてある掃除用具入れを開け、その中から箒を取り出した。



(ならまずは、武器がないとな)



 桐生はその箒の先を折り、先端を尖らせる事で武器にする事にした。簡単な武器だが、なかなかに殺傷能力があるものである。



「よし!こんなもんでいいな。...はぁやっぱり怖えな」


 側から見れば、桐生は非常に肝の座った人間だという印象を受ける。だが内心は、死の恐怖により震えている。


 当然だ。死が恐ろしくない人間などいないのだから。



 また桐生にはもう一つ別の恐怖もあった、それは




 ()()()()()()()()のゾンビを果たして、()()事が出来るのか、という恐怖である。



 桐生はごく普通の高校生である。格闘技の経験もなければ、命のやり取りをした事も無い。あるのは常人とは比べ物にならない程のゲームの腕だけだ。



「良しっ!行くか!」



 パンッと自らの頬を叩き、気合いを入れ、桐生は教室のドアに手を掛けた。校舎の一階の方からは、絶えず悲鳴が聞こえてくる。




 ――――――――――――――――――――――――



 桐生のいる教室は校舎の三階にある。その為、桐生はまず二階に降りる階段の下へ歩き出した。足音は出来るだけ立てず、静かに、静かに。



 箒を握りしめる手にも自然と力が入る。恐怖の為か、息は少し荒くなる。いつもの階段までの道が嫌に遠く感じる。


 こうして、階段に着いた桐生だが、ふと耳を澄ました。すると何かを引きずる音が聞こえてきた。



 ズルッ、ズルッ、何か大きなものを引きずり、それが床と擦れる音。桐生は、これまでに無い程神経を尖らせ、そっと階段下に目をやった。するとそこには、



 男子生徒の頭を鷲掴みにし、足を引きずりながら歩く、ゾンビの姿があった。


「っっ!!」



 桐生は声を上げてしまいそうになるのを必死に嚙み殺し、ゾンビが通り過ぎて行くのを、息を潜めて待つことにした。


 しばらくして、音が聞こえなくなったので、桐生はゆっくりと階段を降り、周りを見渡した。



 ゾンビの姿は無く、あるのは人間が引きずられて出来た血の跡だった。


「うっ、なんて匂いだよ」


 夏の暑さと血の匂いでむせ返った廊下に吐き気を催したが、桐生は再びゆっくりと進み始めた。



 桐生がもう一つの階段を下ろうとした時、ある教室から悲鳴が聞こえてきた。



「嫌ぁぁーーー!??誰か助けて、助けてよー!」



 桐生はその声を聞き、若干体を強張らせながらも、悲鳴のした教室の方を振り返った。その方向は、先程のゾンビが歩いて行った道である。


「マジかよ..はぁ、嫌なもん聞いちまったな」



 そうぼやき、桐生はその教室を目指し、走り始めた。




 少し距離があったため、桐生は息を切らしながら教室の前に立った。ドアに手を掛け、開けようとした瞬間、中から聞こえてきたのは咀嚼音だった。



 それも、人間のような音では無く例えるなら、獣のそれである。


 桐生はドアを開け、中を確認する。そこには



 噛み殺され、腹を食われている少女がいた。致命傷は喉を噛まれた際のものである。


 それを見た桐生はとてつもない吐き気に襲われる。



 もう少し来るのが早ければ、そんな事を考えるがもう遅い。迫り上がる吐き気を抑え込み、桐生は自分の無力を強く呪った。



 少しの間、吐き気にやられていた桐生だが、回復したのか、冷静にゾンビを観察し始めた。


 そしてゾンビが食事に夢中になっているのを確認し、足音を立てず、ゆっくりとゾンビの背後に近づいて行く。



 ゆっくり、ゆっくりと、そうしてゾンビの真後ろに立った桐生は、右手に握りしめた箒を振り上げ



「っ!ラァ!」



 その脳天に力の限り、突き立てた。



「グギァ!?ギ、ゴ!?」



 ゾンビは、脳をやられたからなのか、唸り声を上げ地面に倒れ伏した。


「はぁはぁ、や、やった..」


 桐生は初めてゾンビとはいえ、人と同じ見た目のものを殺したため、手の震えが止まらなかった。



 しかし、そうしなければ生きられないのだと割り切って考える事で、なんとか震えを止めた。



 そして、桐生はすぐにハッと我に返ってある考えに至った。



 アイツに()()()()()()()()()()()⁉︎



 背後に気配を感じ、桐生はすぐに振り返ったがもう遅かった。


 桐生の背後に立っていたのは、先程掴まれていた生徒であり、その瞳は深く濁り、既に生気はなかった。



「な⁉︎クソッ」


 桐生はそのゾンビに掴まれ、すぐに噛み倒された。



「あ、あぁぁ」



 吹き出る鮮血、とてつもない激痛、すぐに冷えて行く体、桐生はなすすべもなく死を覚悟し意識を手放した。




 ――――――――――――――――――――――――




 しばらくし、何も無い白い空間で桐生は目を覚ました。


「え?」



 死を覚悟し目を閉じたところまでは、桐生は覚えている。何故、自分がこんな所にいるのか分からず戸惑った桐生だったが、ある無機質な声により、桐生の意識は急激に戻ってきた。




『レベルアップおめでとうございます』


『それではレベルアップ特典をお選びください』




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