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孤高(ぼっち)の王は仲間を求む。〜脱・ぼっちが俺の目標〜  作者: 月詩 澪
始まり 〜孤高の王、冒険者になる。〜
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第5話 チェルシー、ゴブリン退治をする。


「ゴブリンが多くいる森はここらしいです!」

「そーなのか」


チェルシーは地図を指差しながらにこにこしているのに対して、アークは仏頂面で言葉少な。決して怒っている訳ではなく、ただ仲間と冒険している!という喜びのあまりに呆然としているだけなのだが。


「アークさん、どうかしました?」


チェルシーはそう思うはずが無い。

何か失礼をしたかな?と不安になってそう聞いた。


「いや、どうもしないよ」


アークは慌ててにっこりと笑ってみせる。

その笑顔は先程エレインに見せたものよりも強ばっておりチェルシーはより一層不安を募らせる。


「えっ、でもお顔が強ばってますよ……!?」

「いやいや、本当に何でもないから、気にしないで」


少し前まではこれはコミュ障脱出出来たか?と思うくらい円滑なコミュニケーションが出来ていたのだが、それは奇跡だったらしい。

直ぐに、元のコミュ障に戻ってしまったアークだった。


「ここか」

「そうですね……!ふぅっ、緊張します……」


アークが心の中で凄く反省して無意識のうちに歩くスピードを上げてしまった為、森まであっという間に着いてしまった。

アークのスピードに必死についてきたチェルシーは心なしか息が荒い。1回大きく深呼吸をしている。


「いざとなったら、わたしを盾にして下さって結構ですからね!そういうの、慣れていますから」


自信満々にそう告げたチェルシー。

彼女は魔道士ながら、魔法が思うように扱えず役立ずというレッテルが貼られている。

その可愛く可憐な容姿に惹かれて彼女とパーティを組んだものの、盾と扱う人間が何人かいた。


(……え?盾……?そんな事、こんな可愛い子にさせるはずないんだが……!?え、もしかして今までにそんな目に会ってきたの?ありえない!)


アークはチェルシーの余りの言葉に混乱する。


「いや、そんな事はしない。いざとなったら盾になるのは俺の方……だ」


アークは困惑しつつもそう返す。

確かにアーク程強ければゴブリンに袋叩きにされてもダメージなんか受けない。

盾には最適だろう。


「な、何を言っているんです!?アークさんにそんな役をして貰うなんて有り得ませんよ!?盾は、役立ずなわたしにお似合いなんです」


どうやら、チェルシーは自虐的な思考の持ち主のようだ。

だがそれもそうだろう。出会った冒険者たちに役立ず、足でまといと罵られてきたのだから。


「チェルシーを……役立ずと思わない。盾にもしないよ」


口下手の域を越したアークだが、ここだけはきちんと言わなければ、とチェルシーの目を見て話す。

何気にチェルシーとしっかり目を見て話したのは初めてだなぁとアークは思った。


「そ、そんな……。わたしの戦闘をみればアークさんの意見も変わりますよ……?」


チェルシーの新緑のような緑色の瞳が困惑の色に染まる。


「そうか。……なら、実際に戦闘してみよう」


アークは確信があった。

チェルシーは決して足でまといにはならないと、役立ずではないと。


何故かって?


それはまぁ、王様の勘、というやつだ。


森の中に躊躇なくアークは足を踏み入れた。

そのあとをおずおずとチェルシーが続く。


森の中はとても静かで、木々の揺れる音と風の音しか聞こえない。

「良い空気ですね」とチェルシーが空気を吸った。


(うーん、ゴブリンどこら辺にいるかなぁ?魔法使ってさっさと探すか)


「……ディテクタル」


小声でスペルを呟き、探知魔法を発動させる。

脳内にこの森の地図が浮かび上がり、ゴブリンを指すのだろう、赤い点がちらほらと散っている。


ゴブリンの討伐数は10体だった。

3体、4体、その周りに1体ずつが散らばっている森の中心側。そこが良さそうだ、アークはチェルシーに提案してみる。


「森の中心側……行ってみないか?」

「はい!行ってみましょう」


特にチェルシーはなんで森の中心側?と尋ねるでもなく素直に頷き提案に乗った。

アークは聞かれなくてよかったぁとそっと肩をなでおろす。


また暫く歩いていくと、少し遠くからゴブリンの醜悪な鳴き声が聞こえる。

チェルシーは過去にゴブリンの盾にされた経験から恐怖に震えていた。


「チェルシー……大丈夫か?」

「……っ!だ、大丈夫です……!ゴブリンを克服しなければ……ならないので、こんな所で弱音吐いてられませんっ」


今日のチェルシーの目的はゴブリンのトラウマを克服する為だったらしい。

ゴブリンに打ち勝つ事で、ゴブリンの恐怖を忘れようというのだ。


(そうは言っても大丈夫かなぁ?怖いのに無理しなくても良いと思うんだがなぁ……)


アークは心配した。

でも、チェルシーがそこまで言うのならば、意思は尊重したいなとも思う。


「本当、大丈夫か?……怖かったらいつでも逃げて……」

「あ、ありがとうございます……!でもに、逃げたりしませんっ!」


気を遣い、そう言葉を掛けるとチェルシーは一度俯くが、直ぐに顔をあげた。

その目には強い決意が見える。


「チェルシーらもうゴブリンが見えてきた。そろそろ、戦闘準備に入ってくれ」


アークは戦闘指示を出したりは得意だ。何故かそのあいだはコミュ障が発病しない。

何故だろう?と前に分析してみた所、雑談が苦手なのだ、という答えに達した。


「はいっ!わたしは魔道士なので詠唱時間が必要になります……。申し訳ありませんが、その間は────」


そう、チェルシーが弱いと言われる原因。

それが、長すぎる詠唱時間にある。

幾ら、強力な魔法でも長々と詠唱しているようでは役に立たない。


「チェルシー、詠唱は必要ないよ」

「えっ!?」


アークは言い切った。

混乱した様子のチェルシーに構わずに説明し出す。


「チェルシーは詠唱が苦手みたいだ。だから無詠唱の方が上手くいく」


さっきちゃっかりとチェルシーの才能を見たから言えることなのだが、チェルシーはまだ会って間もないのになんで断言しているの!?と混乱の極みだ。


「ちょっとやってみてくれ。魔力を杖に溜めて、頭で撃ちたい魔法を想像する。そして……」


それでも素直なチェルシーはアークの言う通りにした。いつものように、魔力を杖に溜めて。

けれど、いつもと違って詠唱を始めるのではなく頭の中で想像する。


「あそこのゴブリンに杖を向けて、溜めた魔力を解放してぶつけるんだ」


指示通り、溜めた魔力を一気に爆発させるかのように解放して、一直線にゴブリンに向かわせる。


────刹那。


バァァァァァンッ


ド派手な爆発音が聞こえた。

ゴブリン達がその大きな紅蓮に巻き込まれる

小さな火花がぱちぱち散って、その場が赤色に染まる。

あれだけ大きな炎が起これば、森は燃え尽きる筈なのに、周りの木々は一切燃えていない。

アークは、1つ思い当たる魔法を頭に浮かべた。


「……っ!す、すごい……!」


炎が収まり、見えたのは焼き付きて灰となったゴブリン。

チェルシーは思わず歓喜の声を上げる。


「す、凄い。わたし、撃てちゃいました……!」


感動のまま、アークの手を握る。

そしてブンブンっと勢いよく振り回した。

普段の大人しいチェルシーとは思えないような喜び方だ。


それもそうだろう。いくパーティ全てに厄介払いされて盾扱いされていたというのに、今は自らの魔法でゴブリンを一掃出来たのだから。

なんで、アークがこんな事をわかったのか?という疑問は忘れてチェルシーははしゃぐ。


(うんうん、良かったわー。チェルシー、喜んでる姿も可愛いな!いままでは何処か悲しげだったから良かったよ、本当に!)


喜ぶチェルシーを見て、アークも嬉しそうに口元を緩めたのだった。

チェルシーと組んで、良かったな、と思いながら。



お読みいただきありがとうございます!

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