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孤高(ぼっち)の王は仲間を求む。〜脱・ぼっちが俺の目標〜  作者: 月詩 澪
始まり 〜孤高の王、冒険者になる。〜
5/8

第4話 アーク、少女と出逢う。


「とは言ってみたものの。まずどーすりゃいいんだ?」


まずそこから、である。

基本的に無鉄砲で考え無しのアークは“まぁ、冒険者登録したら成り行きで仲間できるっしょ”というような楽観的思考により、ここに来た訳だ。


「取り敢えず、クエスト掲示板でも見てくるか」


冒険者ギルドのすぐ隣。毎日更新されるクエストが貼ってある掲示板がある。

既に多くの冒険者たちが、掲示板で自分に良いクエストを探している。アークもその中に混ざって行った。


(うーん、まずは……。こう王道!みたいなの受けたいよな。薬草取りはいいんだけどちょっと地味だよなぁ……ってお!ゴブリン退治あるじゃねぇか!丁度良い。これにしよっと)


Eランククエストを上から見てみると、薬草取り、丸太運び、果てには家事手伝い等しかない。その中でアークの目を引いたのはこのゴブリン退治だった。


(とはいっても。この流れだと俺、仲間できないよな。1人でゴブリン退治とか悲しーよ。仲間と協力して倒すのが戦闘の醍醐味だしな!)


ゴブリン退治のクエストを受注したはいいものの、本来の目的である脱・ぼっち計画は進展しない。周りを見るも皆パーティを組んでいてそこに割り込んでいける勇気なんてアークにあるはずも無かった。


「んあー。どーすっかな」


変な唸り声をあげつつ、アークは悩む。

もう既に先程までクエスト掲示板の近くにいた冒険者たちはどこかに行ってしまっており、掲示板の前にはアークがただ1人。


「……ど、どれにしましょう……」


と、冒険者らしき少女が来たようだった。

アークも気がついてそちらを見る。


「……1人!?」


そして思わず目を見張る。今までわんさかいた冒険者たちと違い、来た人は1人。

強いソロの場合もあるが誘うにはもってこいだ。


「ひ、1人……です……」


アークの驚きの声を拾ったらしく少女は、恥ずかしそうに俯いて答えた。人と話すのが苦手なのか、少女は緊張した様子だ。


「そ、そうなん……だ。あ、俺も、なんだ」

「お、同じですね……!」


しどろもどろになりながらも一生懸命に喋る2人。アークは何となく少女に自分と同じ匂いがすると感じていた。

そう、ぼっち友なのではないか……と。


「あの……どのクエスト……受ける?」

「えと、コレ受けようと思ってます……」


アークの心に「何としてでもこのこと仲良くならなければ!」という使命感が生まれる。

見たところ、優しそうで気配りが上手そうだし仲良くならない手はない。


少女が指さしたのは偶然にもゴブリン退治で、アークは更に運命を感じた。

勝手に運命を感じられた少女にはご愁傷さまと言うしかない。


「同じですね……あの!!」


アークは、勇気を出して口火を切った。

これで、コミュ障という壁をぶち破り、少女を誘えないと夢の冒険者生活は一生訪れないはずだ。この少女と、友達にはなれないでも、せめて1回冒険くらいはしたい。そんな強い決意を込めて。


「一緒に……そのクエスト受けてみませんか?」


多少早口になりながらも、言った!

あとは、少女の答えを待つのみだ。


「……へ?」


少女は瞠目した。

有り得ない、とでもいうように。


「い、いいんですか?」


そして申し訳なさげに尋ねる。

アークは、その様子に戸惑った。


(……アレ?なんで申し訳なさそうにしてるんだ?いや、寧ろこっちが申し訳ないんだけど……)


「も、勿論。俺が誘ったんだからいいに決まってる」


頭の中は混乱するが、アークは大きく頷いて大丈夫と告げる。


「でも……わたし、弱いですよ?絶対足でまといになってしまいます……」

「今日登録したばっかだから……俺の方が足でまといになってしまうよ!?」

「え?いやいや。わたしの方がなります!わたし、誰よりも弱っちいですから!」


2人して、いやいや、と言い続ける。

真面目な顔をして必死に自分が弱いと主張する。なんだかその行為が可笑しく思えてアークは吹き出した。


「え、ええ!?なぜ笑うんですか!?」


突然笑いだしたアークに少女は吃驚している。

そりゃそうだ。


「ご、ごめん……。なんでもないから気にしないで……」


アークは謝りつつもまだ少しだけ笑みを浮かべている。少女は釈然としない……と思いながらも気にしない事にした。


「あ、まだ自己紹介していませんでしたね……。わたし、チェルシーっていいます。チェルシー・エイリーです。よろしくお願いしますね」

「俺は……アーク・エディンソンだ。よろしくな」


これまた安直にアディンソンをエディンソンに変えた偽名を名乗る。こんな適当な名前、いつしかバレそうである。


「アークさん、ですね。かの有名な孤高の王様と似た名前なのですね!」


案の定、似てると言われた。

もう少し頭を捻るべきだった。


「親が王……様の事が好きだからな」


自分で“孤高の王”と言いたくなくて王様という。正直、様すら付けたくなかったが不敬に当たるのでしぶしぶ取り付けた。


「そうなのですね。偉大な孤高の王様の名前をお付けになる方は多いですからね」


チェルシーは納得したようにうんうん、と頷いた。


「じゃ、チェルシー……さん。行こうか!」

「はい、アークさん!あ、わたしの事は呼び捨てで大丈夫ですよ」


アークは仲間(仮)らしく呼び捨てで呼ぼうとしたが、流石に臨時パーティだし会ったばかりなのにそれは失礼かと思い直して“さん”と付けたが、チェルシーは気にしないらしくそう言った。


楽しい、冒険の幕開けだ。


────多分。



こっそりとチェルシーの苗字を変更しました。

エイリン→エイリー

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