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孤高(ぼっち)の王は仲間を求む。〜脱・ぼっちが俺の目標〜  作者: 月詩 澪
始まり 〜孤高の王、冒険者になる。〜
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第3話 アークの夢の冒険者生活の幕開け。


アークは顰めっ面してしまいそうになるのを必死に抑える。

したら、不審に思われるからだ。


「どんな力を持てばこんな事が起こるんだ……こんなの、“王様”でもない限り有り得ないと思っていたな……」


(そ、そこで王の話出ちゃう!?今しなくてよくね?)


唐突に王様の話が出た事によりアークは動揺してピシリと表情を凍てつかせた。


「おーさま、ですかー。ギルドちょー、その話ほんっとよくしますねー」


相変わらずのやる気のなさを誇る受付嬢も呆れ顔。

そりゃ呆れたくもなる、とアークは心の中で激しく同感した。


「お前は、アークライト殿に会ったことがないからそう言えるんだ。会ったらお前もあの方に強く惹かれるようになる」


どこでスイッチが入ったのか。

アークライト信者(笑)の心が疼き出したのかギルド長は熱く孤高の王の魅力を語り始めた。


(うっわぁ……本人の前でそういうのやめて!恥ずかしいから!普段はあんなにクールで凛々しいのにほんっと残念美女だよな、エレインさん……)


羞恥に悶えながらギルド長───エレインに同情するという何気に器用な事をやってのけるアーク。アレさえなければ、非の打ち所がない、文武両道・才色兼備な女性なのに。


「ギルドちょー、そういう話急にするからモテないんですよー」


受付嬢がズバッと毒を吐く。

常にだらだらしてそうな容姿とは裏腹に言う時は言うらしい。


「……私はモテたいと感じた事もないから別にそれは構わない。───それよりも、今は新人、お前についてだ」


急に話の矛先が此方に向いて下らない事を考えていたアークは肩をびくっと揺らす。が、直ぐになんでもない様に取り繕い「は、はい」と真面目そうな顔で頷いてみせた。



「こんな事は前代未聞だ。だからお前の能力についても今は“unknown”未知数とさせて貰う」


ほぉほぉとアークは相槌をうつ。


「本来なら、この魔晶玉で能力が高い者は少しだけ高ランクからスタート出来るんだが……すまない。お前は前例がない故、Eランクからという事になる」


Eランク。駆け出し冒険者、初心者。そういうレッテルが貼られる最底辺ランクだ。

大体の冒険者登録したての者はここからの始まりとなる為、蔑まれる事はない。

まぁ、長年やってもEから上がれないと見下されるのだが。


「はい。分かりました。大丈夫です」


申し訳なさそうにしているエレイン。アークが即座に快い返事をしてもエレインの表情は晴れなかった。

しかし本当にアークは全くランクとか気にしていない。

寧ろ────。


(いよっしゃあぁっ!!Eランク!駆け出し冒険者!めちゃくちゃ心躍るフレーズなんだけど。駆け出し冒険者だからこそ、周りの冒険者と助け合いしたり、窮地を一緒に脱したりして絆を深められるんだよなぁ。あー、素晴らしい!)


喜んでいる。

ニマニマと口元が緩むのを隠す為に下を向いてぷるぷるしていると何を勘違いされたのかエレインが「ほんとうっにすまない!」ともう一度謝罪をしてきた。


「い、いや……。気にしてないんで……」


アークは罪悪感を感じている様子のエレインに“自分全然気にしてませんよ”と伝える為に笑顔で言う。

本人としては今までにない位の笑顔を作れたつもりなのだが、傍目から見るとその笑顔はどうみても引き攣っており何かに耐えているようだ。


「……こ、功績があれば直ぐにでもランクはあげるから、な!?」


エレインは元気づけようとアークを励ます。

アークは気にしすぎだなぁ、エレインってこんな性格だったっけ?と呑気に考え事をしている。


「はーい。話進まないんで、もういいですかー?冒険者ギルドのアレコレ、教えないといけないんですよー。面倒だけど決まりなんで」


いつまでも終わらないやり取りに痺れを切らしたらしい受付嬢がパンパン、と手を鳴らして2人の注意をひこうとする。


「あ、すみません。教えて下さい」

「す、すまない。私はもう戻るな……」


2人ともハッとしてアークは受付嬢に教えを乞い、エレインは奥の部屋にそそくさと戻っていった。


「まぁアレコレっていっても大したことじゃないんですけどねー。簡単にいきますよー」


受付嬢の適当な話を纏めた所こうだ。

1、冒険者のランクは魔物討伐数、功績、試験等であがっていく。

2、クエストにもランクがあって自身の冒険者ランクより2以上高いクエストは受けられない。

3、パーティ内にランクが高い者がいる場合、同じパーティの者はその者と同じクエストを受けられる。

4、違反行為、迷惑行為をしたらランクを下げられる。場合によってはギルド出禁。


そこまで、変わった物はないな……とアークは安心する。


「有難うございます」

「はーい。んでは、程々に頑張ってくださいねー」


受付嬢の適当な声援に見送られ、アークは冒険者ギルドを出た。


さて、ここから夢のキラキラ仲間沢山冒険者生活が始まるぞ!


……と本人は思っているが、現実は、脱・ぼっちさえままならない。

夢のキラキラ仲間沢山冒険者生活など、程遠いのだ。


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