理科室の人体模型
地震で立てつけの悪くなった戸をゆっくりと開け中を覗く。
生物室の中は地震の際、使ってなかったためカーテンが全て締まっており暗くなっていた。部屋の中には理科室ならではの無駄に水圧が高い水道が2つ着いた長方形型の机があったり、実験に使うビーカーや試験管が綺麗に並べてある棚がある。
その奥には次の実験に使うんであろう材料や道具が綺麗に並べてあったであろう先生の机がある。
また、生物室ならではの鼠や蛇なのどホルマリン漬けの瓶が入った棚、メダカが入った水槽もある。
しかし、それらの物は全て地震の影響で棚から落ち、地面で割れ、水槽も落ち見るも無残な様子となっていた。そんな様子を見て、2人は言葉を失っていた。
そんな中、栗柄はあることに気がつく。
「──あれ?人体模型が無いぞ......?それに、人体模型の隣にいつも置いてあった骨の人体模型も......。」
その言葉を聞き、辺りを見渡す。すると、細川が何かに気づく。
「西尾、あれ見て。準備室の扉が開いてるわ。もしかしたら、先生が移したのかもしれないわ。」
しかし、そんな事はありえるのだろうか。こんな時にわざわざ動かすという事が。
「......とりあえず何事も見ないと分からないからな。見に行こう。」
そう言って細川の手を取り歩み出した。突然手を握られた細川は顔が赤いのを見られないようにしながらついて行った。
──『ギギギィ......』
立て付けが悪くなった準備室の戸をこじ開ける。否、立て付けが悪くなってる訳では無い。戸の後ろに物が突っかえていたのだ。戸の後ろには道具が入っている段ボールが山積みになって崩れていた。
「こんなに重いもん沢山あるけど...一体、何が入ってんだ......?」
不思議に思ってこっそりと中を覗く。
「「────ッ!!」」
中身に驚き思わず段ボールの蓋を思いっきり閉める。なんと、中には手の形をした何かが入っていた。
「え、え、え?何、手、手なの......?」
「ま、まさかな。見間違いだよ。もう一回見てみよう。」
覚悟を決め、もう一度見る。しかし、
「──ッ!」
「──や、やっぱ、手じゃない!!き、気味悪いわ!」
形が見えた途端、気味悪くなりすぐに閉めてしまった。
細川は栗柄の腕をより強く抱き直した。腰が引け、足が笑い始め、少し涙ぐんできた。
「ね、ねえ早く見つけましょ。じ、人体模型を......!」
声は引きつり恐怖を隠せなくなっている。だが、怖いのは細川だけでは無い。栗柄もだ。
「み、見つけるって言ったって、お、お前こんなよく分からない物見た後だぞ!お、俺だって怖いんだぞ。」
栗柄も少し声の音が高くなり、どこか震えている。
だがそんな余裕は無いと悟り、覚悟を決め辺りを見渡し始めた。しかし、
「あ、あれ?無いぞ?」
「ば、馬鹿言ってんじゃないのよ。ちゃんと辺りを見なさ──無いわね......。」
しかし、いくら辺りを見回しても人体模型は愚か、骨の人体模型も無いのだ。
ここでふとある事に気がついた
「も、もしかしてだが、さっきの段ボールのって...」
ここでようやく細川もそれに気づく。
「さ、西尾さっさと開けなさい。」
恐る恐る段ボールに近づき、中を除く
「──ん?あれ、これ手だけど粘土で出来てる......。」
そう言って箱から取り出し触って確かめる。
「粘土......そうか、この前の美術の授業で作ったヤツだ。そういや、固めるとか何とかでここに置いてたのか......」
「じ、じゃあ、人体模型はいったい......」
「余計謎が深まったじゃん......鳥肌が立ってきたよ......」
二人は落ち込み、何の成果も得られずにしぶしぶと準備室を出ていく。
「──う、眩し。準備室暗かったから外の日差しがキツイな......。」
「ほら、そんな事言ってる暇あったら次行きましょ。次。」
細川は気を取り直し次へ早速向かおうと催促する。それを見て栗柄も気を取り直した。
「えっと、次は......音楽室か。今度こそ何かあるといいんだが......。」
「早くこの止まった世界からも、七不思議からも逃れたいわ......。」
深い溜め息をついた。
そうしながら二人は次の行き場所、音楽室へと向かった──
少し内容が薄かったかもしれない...。
お分かりいただけた((