ある王子たちの誤算
下ネタ注意
※ 王子ん家 ※
勇者 「あー…。寝た気がしねぇ…」
侍従2「あ、勇者様!おはようございます」
勇者 「おはよう。今日も元気だな、新入り」
侍従2「無理やりでも元気ださなきゃやってられませんよ?」
勇者 「言えてる。俺、お前のそのキャラ好きだわー」
侍従2「あははっ。勇者様は親しみやすくていいですね」
勇者 「つんけんしてたら一人になるだろ?あいつらみたいにさ」
侍従2「…うん、コメントは控えさせていただきます」
勇者 「賢い選択だな」
侍従2「殿下に会いに来られたんですよね?」
勇者 「ん。昨日来るって言っちまったからな」
侍従2「今は、止めたほうがいいですよ」
勇者 「え、なんで」
侍従2「昨日、勇者様からいただいたアレ、あったじゃないですか」
勇者 「あ、うん。効かなかった?」
侍従2「えっと、あのあと、姫様と殿下がお茶をしまして」
勇者 「あれで?」
侍従2「ええと、一応勇者様から貰ったアレ以外に、先輩から言われたやつも作って持ってったんです」
勇者 「お前ほんと頭いいわ」
侍従2「で、飲み物二つあるから、先輩とお茶しましょってなったんですが…」
勇 者「いや、しないだろ」
侍従2「はい。先輩の目的にも沿いませんし、大体あの飲み物はアレですから」
勇者 「で、王子を呼んだんだな、あいつが」
侍従2「はい。『一人でお茶もつまらないでしょうし、私は身分が低いのでご一緒できませんが、殿下な らば』と」
勇者 「うん。筋書き通りだろ」
侍従2「ところがですね、大誤算が起きるのです」
勇者 「ここまできて?」
侍従2「はい。姫様は、ミルクは魔王のとこでいつも出されていた、と、先輩レシピのものを選んだので す」
勇者 「へぇ。いい扱いされてたんじゃん」
侍従2「それが、第一の誤算でした」
勇者 「…第一?」
侍従2「姫様はお世継ぎでしたので、薬に身体が慣らされていたようで」
勇者 「あいつの用意した程度じゃ、効かなかった…?」
侍従2「はい。まったくなんにも変わらなかったそうです」
勇者 「…化け物姫が…」
侍従2「次に、誤算その2ですが」
勇者 「あ、うん」
侍従2「殿下がアレを飲まれたんですが…」
勇者 「え、あの馬鹿飲んだの?」
侍従2「殿下的には、二人ともその気になっている…つもりだったんじゃないでしょうか」
勇者 「あ、あほ…」
侍従2「それから誤算3rdに繋がるんですが」
勇者 「まだあるんだ…」
侍従2「勇者様からいただいたアレ、強力過ぎました」
勇者 「えー…」
侍従2「殿下理性吹っ飛んじゃって、姫様に襲い掛かりました」
勇者 「あぁ。姫その気無いのに?嫌われたな、そりゃ。でも、既成事実でいいんじゃね?もう」
侍従2「そうなればよかったのですが…」
勇者 「え、嘘。ミスったのあいつ!?」
侍従2「それが、誤算4です」
勇者 「なにが、あったんだ…」
侍従2「姫様が、強かったんです」
勇者 「は?」
侍従2「姫様が強くて、襲い掛かった殿下を軽くかわして、テラスから木に飛び移って、廊下に降りたん です」
勇者 「あー。そのくらい考慮するだろ、普通」
侍従2「しませんよ…。どんな過酷な旅をなさってきたんですか」
勇者 「え」
侍従2「まあ、それで、廊下で見張りをしていた先輩に、部屋を替えてくれと」
勇者 「なるな」
侍従2「そんで、誤算Finalになるんですが」
勇者 「ついにFinalか」
侍従2「ええ。ここまで四つの誤算がありましたが、そんなもの子猫の悪戯に思えるほど、深刻な誤算で した。姫様が、殿下の様子が変だとお伝えくださったんです。城の医者の先生に。…さっき、薬 が強かったとお話ししましたよね?」
勇者 「うん。聞いた」
侍従2「強すぎて、殿下は助けに飛び込んだ先生に襲い掛かり…」
勇者 「えっ、爺さん大丈夫かっ?」
侍従2「ええ。精神的に大分ダメージを受けていますが」
勇者 「…あとで、見舞行くわ…」
侍従2「はい。そうしてあげてください」
勇者 「よく、無事だったな」
侍従2「たまたま通り掛かった衛士が、助けてくれて」
勇者 「よかったな」
侍従2「悲劇でした」
勇者 「えっ」
侍従2「殿下はその方にも襲い掛かり、押し倒されて仰天した彼は警笛を鳴らし、城中の兵士が集まっ て…」
勇者 「…はぁ…」
侍従2「全員殿下に襲われて」
勇者 「なんで」
侍従2「殿下を害せませんからね。一人を助けたら、その助けに入った人が襲われて…」
勇者 「…なにそれ」
侍従2「全員が殿下の元から逃げ出し、部屋に隔離するのに三時間かかりました」
勇者 「…悲劇っつうか、喜劇っつうか…」
侍従2「悲劇ですよ。様子を見に来られた陛下まで…」
勇者 「国王陛下まで!?あいつ、まさか自分の親父まで…」
侍従2「ね、悲劇でしょう?陛下はショックで寝込んでいらっしゃいます」
勇者 「あ、うん。でしょうね…」
侍従2「これが30分前の話です」
勇者 「え、今のそんなついさっきの話!?」
侍従2「はい。ですから、無理に止めはしませんが、多分勇者様が殿下に会うとなると、身の危険は否め ません」
勇者 「デスネ」
侍従2「しかも、きっと万が一になっても誰も助けません」
勇者 「ナンデ」
侍従2「だって、みんなもう被害者ですし、完璧トラウマになって、交代でカウンセリングうけながら本 日の業務を行ってますから。できれば二度と近づきたくないですよね。第一、勇者様はお強い し、殿下と仲がいいから、助けはいらないと大義名分ができますし」
勇者 「見殺しですか」
侍従2「大袈裟ですよ。死ぬわけじゃ無いです」
勇者 「男としての俺が死ぬわ!」
侍従2「えっと、でも、案外殿下が受けかもしれないし」
勇者 「いや、無理!マジ無理だから!」
侍従2「デスヨネ。えっと、まぁ、とりあえず、そういうことなので」
勇者 「うん。あいつが落ち着いてからにする。ありがとな」
侍従2「それがいいと思います。あ、先生のところ、ご案内しますか?」
勇者 「爺さんの部屋じゃないのか?違うの?」
侍従2「…陛下と、ベッドを並べて、ご自身も寝込みながら、陛下の診察をしておられます」
勇者 「爺さん…医者の鑑だな…!」
侍従2「こちらですよ」