ある魔王一行、遊びに行く
※ 魔界 中心地 ※
界樹『むごぉお』
奥様 「えぇ。そうですね、あなた」
魔界樹『もごぉう』
奥様 「そう。あの方たちが…帰ってきますよ」
魔界樹『ざあぁあぁ』
奥様 「嫌ですよ。もう、わたし…その、疲れましたから」
魔界樹『ぶぅぶぅ』
奥様 「まあ。いけないかたですね」
魔界樹『うぅ~』
奥様 「えぇ、そういたしましょう」
※ 人間の世界 魔王帰宅途中 ※
側 近 「…なんか、今…」
魔 王 「…うん、なんか…」
魔具職人「どしたん?」
魔 王 「あのね、悪寒が走ったんです」
側 近 「多分、あの方達がまぁたなにか企んでるんでしょうね」
魔具職人「ああ。偉大なる魔界のお父様とお母様」
側 近 「ぱっぱと仕事は済みましたけど、魔界帰るの延期して…観光して行きませんか」
魔具職人「いいね!」
魔 王 「駄目です。…といつもなら言いたい所ですが、今帰るのは危険ですね」
魔具職人「自殺行為さ」
側 近 「じゃ、ゲーセン行きますか」
魔 王 「…あれ?観光は?」
魔具職人「いいけど、アタシの一人勝ちだよ?」
側 近 「今の却下で。じゃあイベント行きます?」
魔具職人「イベント?ちょっと待ってね、確認するから……」
魔 王 「…ねぇ、データ検索してるときの機械のお姉ちゃんって、白目光ってて怖いよね」
側 近 「白目剥いてますしね。まあきぃちゃんだから仕方ないです」
魔具職人「…あったよ。コスプレの近いよ」
魔 王 「…出掛けてる間に勇者さん来たら、どうするの?」
側 近 「その時は」
魔具職人「その時だよ」
魔 王 「え…いいの、それで…?」
側 近 「なんのコスプレさせる?」
魔具職人「魔王ちゃんかあいいからなんでも似合うよ。魔法少女とか?」
側 近 「ゴスロリ押し!」
魔具職人「えー?戦闘服っぽいのでしょ」
魔 王 「…悪の幹部がいいよ、キャラクター的に一番」
側 近 「え、あの秘密結社的な覆面がいいんですか?」
魔 王 「イベントにいくならね。でも、ぼく…」
魔具職人「どっか行きたいとこあるの?魔王ちゃん」
魔 王 「お腹すいた」
側 近 「…あ。ごめんなさい」
魔具職人「ごめん、魔王ちゃん…」
側 近 「なんか食べに行きましょうか」
魔具職人「そだね。ガソリンとか」
魔 王 「ぼくガソリン嫌いだよ?」
側 近 「あなたにガソリンは与えませんよ」
魔 王 「ならどこでもいいよ」
側 近 「ええと、この辺りで御飯のおいしいところは…」
魔具職人「もうぼけちゃった?」
側 近 「仕方ないでしょう?人間界を旅したのなんて、三百年も前ですよ」
魔 王 「あの時のお店って、もうないんじゃない?」
魔具職人「そだね。国が興って栄えて滅びるのにも充分な時間だよ、それ」
側 近 「え、三百年ですよ?」
魔具職人「うん」
魔 王 「ぼくの人生の半分だよ」
側 近 「え、そんなものですか」
魔 王 「うん。そんなものですよ?」
魔具職人「じゃ、適当に行こ」
側 近 「あ、そういえば、昔消し炭にしたとこあったんだけど、あそこどうなってるんでしょう?」
魔 王 「三百年前も焼け野原のまんまだった、あの島?」
側 近 「そう。あんなになる前は、食べ物がおいしい国があったんですよ」
魔具職人「じゃあ、なんで焼け野原にしちゃったの?親バカちゃんたら」
側 近 「え。…若気のいたり、的な」
魔 王 「行ってみようよ。おいしいものがあるならそれでいいし、ないならないでノリの自重を促す し」
側 近 「うわぁ。言うようになりましたね、魔王様…」
魔 王 「成長がうれしいでしょ?」
側 近 「嬉しすぎて泣けてきますよ」
魔具職人「本当に、魔王ちゃんたら…小さくなるほど賢いよねぇ」
側 近 「まあ、ねぇ」
魔 王 「早く行こうよー。ぼくお腹すいたぁ」
側 近 「本当に、この子は…」
魔具職人「うんうん。先が愉しみだよね」