ある魔王の、突撃お宅訪問
※ 人間の世界 住宅地 ※
勇 者 「えっと…」
側 近 「…あ、勇者ん家ここであってましたね」
魔具職人「んもぅ、探したよぅ。何軒目ぇ?」
魔 王 「ええと、二十軒目です」
勇 者 「…あの」
側 近 「それではぱっぱと済ませて帰りましょう」
魔具職人「ん~。どこらへんがいいかなぁ?」
勇 者 「…ねぇ」
魔 王 「あの、家主の意見を聞いたほうがいいですよ?」
側 近 「それもそうですね。勇者、貴方はどこがいいですか?」
魔具職人「アタシ的には、あの辺がオススメ?」
勇 者 「あの、何の話デスカ」
魔 王 「機械のお姉ちゃんも、親も、それは勇者さんに失礼ですよ!いきなり押しかけてい るのですから」
勇 者 「えっと、援護ありがとう」
魔 王 「いいえ。失礼をいたしました」
勇 者 「あの、それで、ナニゴトですか」
側 近 「それもそうですね。お久しぶりです、一週間ぶりですね、勇者」
魔具職人「はっじめまして~。魔界の魔具職人でっす」
魔 王 「えっと、お願いがあって、非常識は承知のうえで、伺わせていただきました」
勇 者 「あ、はい。いや、っていうか、え?」
魔 王 「戸惑われるのも仕方ないかと思います」
勇 者 「…って、あわぁどうする!?とりあえずあんたら!中入って!」
魔 王 「ですが…」
勇 者 「うちの窓に、そんなたむろしないで!鍵開けるから中入ってきてくださいお願いします人に見 られたら俺の人生終わる」
側 近 「そう言われると、ここにいたくなりますね」
勇 者 「お願いヤメテ!」
魔 王 「そんな意地悪言わないで、ノリ」
側 近 「貴方がそう言うなら、しかたないですね」
魔具職人「入口って、あっちかな?先行って開けとくね」
勇 者 「え、開けとく?開けれんの?…あっ、あと、その抱っこされてるちっこいのは、今窓から入っ てきて」
魔 王 「ぼくですか?」
勇 者 「近所の悪ガキが悪戯しにくるから、ある程度以下の身長のもんは入口くぐれないんだ…魔法 で」
魔 王 「勇者さんも、大変ですね。わかりました」
側 近 「仕方ないですね。勇者、パスです」
勇 者 「おう。軽いな」
魔 王 「こればかりは、成長しないとどうにもなりませんから」
勇 者 「…しっかりしてるな」
魔 王 「親が親ですから」
勇 者 「親?お前、魔王の子か?」
魔 王 「似ていますか?」
勇 者 「いや、言われてみたら似てるけど、なんか眼の色が同じだったから…」
魔 王 「あっ。眼の色ですか。眼が赤いのって、魔王になるための最低条件なんです」
勇 者 「赤目なら、誰でも魔王になるのか?」
魔 王 「赤目が一人だけなら。複数いたら、トーナメントになるんです」
勇 者 「へぇ。変わってるな」
魔 王 「そうですか?」
勇 者 「で、何しに来たんだ?」
魔 王 「あっ、そうでした。お願いがあって伺ったんです」
側 近 「あ、いた。じゃあ説明を始めますか」
勇 者 「あ、お前いいや。こいつで頼む」
魔 王 「え、ぼくですか?」
勇 者 「うん。あんたたち話通じないし、こいつが一番物分かりがいい」
魔 王 「あ、はい。わかりました」
側 近 「え~」
魔具職人「なにそれぇ」
勇 者 「自覚無いの?」
側 近 「……」
魔具職人「あるけど」
勇 者 「…おい」
魔 王 「えっと、あの。勇者さんの家と、うちに直結する扉を造らせていただけないかと思って」
勇 者 「ええと、つっこみたいところは山ほどあるが、まず、うちってどこだ?」
魔 王 「あ、魔王城です」
勇 者 「あー……うん。なんで?」
魔 王 「勇者さんがうちに来られる時に、大きな鶏を使われるでしょ?」
勇 者 「…にわとり」
魔 王 「はい。その鶏の助走による被害が大きくて、あのこを使わないで来ていただけるようにしたい のです」
勇 者 「…それで?」
魔 王 「ええと、この機械のお姉ちゃんは、そうゆう特殊な装置を作るのがすごく上手なんです」
魔具職人「はぁ~い」
勇 者 「へぇ~…」
魔 王 「なので、機械のお姉ちゃんに扉を作ってもらう許可をいただきたいんです」
勇 者 「えっと、でもそしたら、俺のプライバシーが」
魔具職人「あ、それならぁ、一方通行にしてもいいよぉ」
勇 者 「え、できんの?」
魔具職人「魔王城からの一方通行がいい?」
勇 者 「はあ?俺のプライバシーどこ行った?」
魔 王 「お姉ちゃん、それじゃ意味が無いよ」
魔具職人「ジョ~ダンだよぉ」
勇 者 「いや」
魔 王 「本気でするでしょ、お姉ちゃん」
側 近 「うん。するね、きぃちゃんなら。でもちゃんとしてね」
勇 者 「ってか、家からの一方通行って俺帰れんの?」
魔 王 「あ、それなら」
側 近 「この間みたいに帰してあげますよ」
勇 者 「この間…」
魔 王 「えっと、この間はノリが変な所に送ってしまって、本当に申しわけありませんでした」
側 近 「すいませんでしたね、勇者。相当苦労したでしょう」
勇 者 「まあ、それなりに…って、え!?あんたあの時のっ?」
側 近 「え、今気付いたんですか?」
勇 者 「The別人!」
側 近 「なんですかその新しい驚きかた。ちょっと真似したくなりますね」
魔 王 「やめて」
魔具職人「アホっぽいよ?」
側 近 「冗談ですよ」
勇 者 「うわ、性格悪っ」
側 近 「まあ、それなりに悪魔やってますから」
魔 王 「ノリは、男にも女にもなれて、日替わりで性別を変えているんです。今日は女性の日だったの で、印象が違うんだと思います」
勇 者 「印象…は、変わらないけど」
側 近 「まあとりあえず、勇者の家を覚えたんで、次はここに送れますよ」
勇 者 「あ、ならいいよ」
魔具職人「んじゃあ、どこに作る?」
勇 者 「えっと、なるべく人目につかないとこに…」