お客さま、お引き取り下さい
姫 「お止め下さい魔王様っ!」
魔王「えっ」
勇者「えっ」
側近「えっ…?魔王…様…だと!?ちょっと姫気は確かですか?」
姫 「ええ、これ以上なく正気ですわ」
魔王「ひ、姫?」
勇者「姫様っ?」
側近「どっ、どういう風の吹き回しですかっ?」
姫 「どうもこうもありません!なぜこれ以上争うのですか?」
魔王「なぜって…」
勇者「なあ…?」
側近「決着が着いていないからでしょう」
姫 「決着とはなんなのです?」
勇者「勇者を倒すか、それとも」
魔王「…魔王を倒すか?」
側近「なんで敵同士なのに息が合ってるんですかもう。しかも自分が倒される定義を言わないでくださ
い」
姫 「勇者様は、私を取り戻しにきたのではありませんか?」
側近「話聞いてないな姫。っていうかあれ?勇者!あなたは元々魔王様を倒しにきたんですよね?」
勇者「はいっ!あと、姫の許婚の王子が幼なじみで、助けてくれと頼まれました」
側近「じゃあ姫ついで的な?」
勇者「いや、魔王倒すと姫連れ帰るが独立するとは思わなくて…ってなに魔族と普通に話してんの俺」
姫 「勇者様、私を必ず連れ帰るよう、あの方に言われたのではなくて?」
勇者「まぁ、王子との友情の為に慌てて此処まできましたし、そう考えるとまず姫ありきですかね?」
姫 「でしたら、私は帰るつもりはありません。それなら魔王様が戦う必要もないわ」
魔王「えっ…」
勇者「えっ?」
側近「…えっ?」
姫 「あの方にもそうお伝え下さい」
勇者「いや、しかしですね」
魔王「…なんでそうなる?」
側近「嫌な予感しかしない…」
姫 「だって、魔王様が素敵なのですもの」
魔王「…は?」
勇者「…あれ?耳がおかしくなった?」
側近「あーもうこれだよ」
姫 「私、魔王様がこんなに恐ろしく美しい方だなんて思わなくて…」
側近「さっきの恐ろしいってそういう意味で言ってたのか!ちょっと姫、思い出してください。魔王様
の正体は枯れ枝ジジイですよ?」
魔王「……」
姫 「でも、このお姿も、魔王様なのでしょう?」
側近「確かにそうですけど!この魔王様は基本ジジイですよしかも重度の変態を患ってるんですよ不治
の病ですよ?」
姫 「そのお姿でずっといてくださるなら、私、末期のド変態でも構いませんわ?」
魔王「……ヒィッ」
勇者「…な…っ」
側近「そうは言いますが、変態を相手にするって辛いんですよ?話通じないんですよ?」
姫 「大丈夫ですわ。愛があれば…」
魔王「あい…っ!?」
勇者「…アイ?」
側近「あ~その…。貴女、許婚さんがいらっしゃるんでしたよね?その方を…」
姫 「…愛して、おりましたわ……」
側近「でしたら…っ!」
姫 「けれど、昔の話です。私、新たな愛を見つけましたの」
側近「うわぁ…この人」
勇者「えっと…」
魔王「なんなのだ…っ」
側近「なんなんでしょうねぇ」
姫 「ねぇ、魔王様?」
魔王「……っ」
側近「ちょっ、でかい図体して人の背中に隠れようとかしないでください!魔王様ともあろう方がなに
小娘一人に怯えているんですか」
勇者「あの…姫サマ?」
姫 「では、そういうことですので、お引き取り下さいませね勇者様」
勇者「どうゆうこと…」
魔王「…っ」
側近「なんですか魔王様袖を引っ張って?え?ちょっとあなたいい年して…はいはいわかりました」
勇者「えっと、ですね、姫様…。一応俺魔王倒さなきゃいけないんで…」
姫 「魔王様に傷を付けたら、あなたを殺しますわよ?」
勇者「こっ…怖ぇ…!」
側近「ちょっと、勇者」
勇者「えっと、…はいなんでしょう?」
側近「開き直りましたね?まあいいでしょう。質問なのですが、あなたの幼なじみの王子って所謂イケ
メンですか?」
勇者「幼なじみの俺から見ればまあ見れた顔じゃね?っていうかまあ見苦しくはないかなっていうか」
側近「すいませんこっちもあんま余裕ないんであなたの個人的な妬心抜きで教えてください」
勇者「あ、すいません。イケメンです」
側近「どのくらい?」
勇者「えっと近くで見てる俺的には」
側近「ヒガミ抜きで!」
勇者「はい!うちの国の抱かれたい男No.1です畜生っ」
側近「ちなみにあなたは?」
勇者「…言わなきゃいけないのか?」
側近「成る程、あの姫は…超メンクイというわけですか。っていうか倫理観はないんですかあの人?」
勇者「え~…。なんなのこれ?自分から聞いといて結局スルーするとか…。しかもあれがうちの国の未
来の王妃…とか……イロイロないわー…。どうなってんの魔王城」
魔王「…うちのせいじゃないだろう」
姫 「ねぇ、魔王様ぁ?」
魔王「……っ」
側近「わかっていますよ。あんまり袖を引っ張らないでください。伸びるじゃないですか。しかたない
なぁもう」
勇者「俺、何しに来たんだろ…?」
側近「勇者、一人でたそがれてないでこれ持ってください」
勇者「え?なんすかこの縄?」
側近「今から故郷に帰して差し上げますから」
勇者「えっでも」
側近「魔王様はしばらく人間世界での魔王ライフを凍結します」
勇者「…つまり?」
側近「魔族は人間世界に攻め込みません。そう伝えてください。なんなら魔王様を倒したことにしても
構いません」
勇者「いいのか?」
側近「はい。それじゃさよなら」
勇者「あっ…ああ。いいのかなあ?あ、姫…は、このままのほうが、国のためにはいい…か?」
側近「もう魔法発動しましたけどね」
勇者「じゃあ仕方ないな、さらばだ」
側近「姫もお元気で~!」
勇者「えっ姫?あっ、これって姫サマ繋いでる縄!?えっこの姫も来るのっ?」
姫 「なんと…!貴様、私たちを引き離すおつもりですかっ?エェコラ!」
勇者「口調崩壊してるよ姫様!?」
側近「さようなら~」
勇者「ええぇぇえぇ!ちょぅ、まって」
姫 「待っていてくださいませね魔王様!私必ず帰ってまいりま」
魔王「……っ」
側近「震えながらしがみつかないでください。もう消えたでしょう?」
魔王「こっ…怖かった…っ」
側近「身からでた錆というんです」
魔王「だって…っ」
側近「…なんでこう、魔王様って力を解放すると見た目も性格も変わるんでしょうね?」
魔王「…知らない」
側近「とりあえず、保身のためにその恰好やめたほうがいいですよ?」
魔王「……うん」
側近「あれ、魔王様?」
魔王「…仕事、片付いたら」
側近「あぁ…。溜まってますものね…。この姿だと本当にいい子ですね、貴方は。じゃあ早速よろしく
お願いします」