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推しに夢中  作者: 虚月 悠奈


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5/21

5.推しを夢みて

「おはよう。」

「おはようございまーす……。」


華は朝に強くない。

対してサミュエルはいつ寝てるか分からないほど、気がつくといつも怪しげな実験をしていた。

華が来てすぐは、よく分からないケミカルな色の液体を混ぜたりしていたが、最近はもっぱらタブレットと睨めっこしているようだ。


それを横目に、華は勝手にキッチンを使って朝食、もとい昼食を作る。

もちろん1人分。

サミュエルたち魔族は何を食べているのだろうか?

初日に2人分の料理を作ってみたものの、「僕たちが君たちと同じものを食べてると思うのか?」と言われ料理に手をつけることはなかった。

乙女ゲームに食事シーンは無かったため、華にもそこら辺の知識はない。


捕虜たちの食事のためにか、冷蔵庫には十分すぎるくらいの食材が揃っていたため、ご飯に困ることはなかった。

その食材はごくごく一般のスーパーに売ってそうなもので、魔物の腐った肉!とかは入っていない。

もちろんこれは普通の冷蔵庫の話。

開けるなと言われている冷蔵庫、あるいは冷凍庫にはサミュエルが実験で使用しているものが保存されているらしい。

中身が何なのかはあまり想像したくない。


───今日はオムライスにしようかな。


新品のケチャップと昨日パックを 開けたばかりの卵、鶏肉を冷蔵庫から取り出す。

まだ高校生であるため、華に一人暮らし経験は無い。

とはいえ、毎日お弁当を作っていただけあって、スマホでレシピを確認しなくてもある程度のものは作れた。



十分にお腹が満たされると、先程まで寝ていたはずなのにまた眠気が華を襲う。


人間というものは何故こうも欲に忠実なのだろうか。

学校でも、華はよく授業中に居眠りをしていた。

お昼休み明けの古文、英語、社会。

一度集中力が切れるともうダメで、いつの間にか意識が飛んで授業が終わっていた。

ノートは真っ白。

特に社会の先生はとてもいい声をしていて、華だけでなくクラスメイトの他の人もよく船を漕いでいた。


───今は特にやることも無いし、ベッドに戻ろう。


このように食べて寝て食べて寝てを繰り返す日々。

魔王城を探索しよう!と意気込んでいたのにも関わらず、すっかり眠気に負けていた。

近くの男が、ウトウトしている華を自身の持っているタブレット越しに見つめていたのを、彼女は気づいていない。






へんなゆめをみた

気がつくとあたりは一面真っ暗

もしかしたら目を閉じているだけなのかもしれない

瞼に力を入れてみる

うん、やはり目は開けているようだ

恐る恐る足を踏み出す

問題なく前にすすめそうだ

手を動かして辺りを探りながら慎重に前へ進む


しばらく歩いても終わりは見えない

今から引き返す?

でもちゃんと引き返せているか、分かるのだろうか

やっぱり前へと進み続けるしかない


「うわっ」


慣れた頃がいちばん危ない

足を踏み外した

今までずっと平らだったのに

急に1段下がっていた

バランスを崩しそのまましりもちをつく……

かと思ったのに地面が急に消えた

あまりの出来事に声すらも出なかった

落ちる

落ちる

落ちる

心臓がずっと浮いている

なにかを掴みたいのに周りに何もない

代わりに自分の体を抱きしめる

落ちる

落ちる

落ちる

意識を失いかけた時、急に落下スピードが弱まる

ピタリと止まったかと思うと急にまた落ちる

けれども床が柔らかくなっていて、ぼよんと跳ねる

ぼよん

ぼよん

ぼよん

段々と小さく跳ねて、最後には止まった


心臓はまだドクドクいっている

懲りずにまた前に進むことにした

少し先に光が見える

上から細く伸びている光

だが床まで伸びてはいない

丁度目線の高さぐらい

それを目指して進む


光の目の前まで来た

それは細い糸のようだった


そっと触れてみる

細いのに何故かやわらかさを感じる


するりと上から下へ手を滑らせる

なかなかに触り心地がいい


少し引っ張ってみる

ツンと糸が張った


もっと力を込めて引っ張る

糸はビクともしない


「ここにあったのか」


急に聞こえてきた他人の声に、肩がビクッと跳ねた

声の主の姿は見えない


急にハサミのようなものが浮かび上がる

体が動かずぼーっと見つめる

宙に浮かんだハサミは、そのまま糸をパツンと切ってしまった


急な喪失感

こんなことならもっと抵抗すればよかった

見つからないようにもっと奥へ隠しておけばよかった


そんな思考に疑問を持つ

一体なぜこんなことを思うのか






「おはよう。」


サミュエルの声だ。

またいつもの朝が来る。


「お、はよう、ございます。」


眠いまなこを擦りながら、華はベッドから出て、いつものように朝食の準備を始めた。

先程の夢は何だったのだろうか。

まだ、断片的に覚えている。

落下する夢は前にも見た事あるのだが、何時も現実世界で体がビクッと強張り、目が覚める。

最後まで落ちて、そしてその後も夢が続いていくのは初めてだった。

自身の夢を考察していったものの、どんどんと記憶が薄れてしまっていく。

料理が出来上がる頃には嫌な夢を見ていたという感想だけが残されるのみとなった。


華は夢のことで精一杯で気づいていない。

彼女はベッドで寝ていたのに、ソファで目覚めたということを。

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