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推しに夢中  作者: 虚月 悠奈


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19/21

19.推しとパンケーキ①

「華ちゃん、調子はどう?お粥作ったんだけど、食べられるかな?」


華が目覚めると、杏が寝室にお盆を持って入ってきた。

部屋に美味しそうな匂いが漂う。

食欲はそそるのだが、『誰かが作った食べ物』というだけで、華の体は拒否反応を示してしまった。


「ありがとう、ございます。……食べます。」


それでも恩人のせっかくの好意を無駄にはできなかった。

華は杏からお盆を受け取り、スプーンを手に取る。

一呼吸置いて、お粥をすくい、口に運ぶ。

華の手は震えていた。

口に含み、吐き気を我慢して飲み込んだ……つもりだった。


「……っう」

「華ちゃん!?」


戻してしまった華に、杏が駆け寄る。

慣れた手つきで華の背中をさすり、汚してしまったものを綺麗に片付けてくれた。


「……せっかく作ってくれたのに、吐いちゃってごめんなさい。」

「気にしないで!次からは無理して食べなくていいからね。」


既製品なら食べられるかな?と、杏はゼリーやアイスなどを頼んでくれて、華はその中から食べれそうなものを少しずつ食べるところから始めた。

久しぶりの食事に胃がびっくりしてしまい、最初の数日間はろくに栄養が取れず、寝たきりの日々が続く。


3週間ほど経って、やっとまともに生活できるようになった。


「華ちゃん、今日は何食べたいとかある?」


───食べたいもの……。


華の頭に浮かんだのは、昨晩夢で見た食べ物だった。


「あの、パンケーキ、食べたい……です。」

クリームと蜂蜜たっぷりの。


「いいね!作ろうよ!あ、やっぱりまだ早いかな……?また買ってきてもらおうか?それとも食堂行く?」

「自分で作ったものなら大丈夫かも。」

「そっか、じゃあ食材を食堂から貰ってくるね!」


暫くして聞こえてきたノックの音に、華は身構える。

杏はこの部屋に入る時、ノックをしない。

ヴォイドは今キッチンでコーヒーを入れている。

じゃあ、誰が来たのか。


「あの、恵です。度々すみません。今日も華ちゃんに会うのは難しそうですか?」


久々に聞く友達の声に、華の肩の力が一気に抜ける。

華は立ち上がり、扉を恐る恐る開けた。


「恵ちゃん……?」

「っ!華ちゃん!良かった!!体調はどう?もう起き上がれるの!?」


恵はそう言って華の体を強く抱き締めた。

急な出来事で体が反応できなかったが、恵の体温を感じて、華も恵の背中に手を回す。


「うん、やっとまともに動けるようになってきた。」

「そっか、本当に良かった。……ごめ、ごめんね、助けてあげられなくて。……ひとりで本当によく耐えたね。……私また華ちゃんに会えて本当に嬉しい……!!」


肩にひんやりとしたものを感じ、華は恵が涙を零していることを知った。

恵にもノアにも、裏切られたような気持ちになっていた華だったが、何か誤解があるのかもしれないと、恵の話を聞くことにした。


華はソファに座り、改めて恵と向き合う。


「許して貰えないかもしれない。こんなこと言ったって言い訳にしか聞こえないと思うんだけど……」


恵が言うには、どうやらノアと恵はサミュエルに脅されていたらしい。

なにか弱みを握られていたようで、華と接触した場合に2人にとって最悪な事態になっていたと。

恵が嘘をつくはずはない。

華は恵の言葉を信じることにした。


実際は100パーセントほんとではなかった。

ノアと恵が脅されていたのは本当だ。

だが2人の弱みをに気をられていたわけではない。

サミュエルが撮影していた、華にとっては屈辱的な動画を、他の人達にばらまくと言われたのだ。

酷い暴行だった。

他人の目を触れてはいけない内容だった。

また、それをノアと恵が見てしまったことを、華に伝えることも出来なかった。

2人はその動画を見た事実を一生隠し通すつもりだ。


「あれ、いつも来てくれてる子だ。」


恵と華が話していると、杏が部屋に戻ってきた。

両手にパンパンの袋を提げている。


「あ、いつも押しかけてすみません。今日は華ちゃんが中に入れてくれました。」

「……もしかして2人って友達だった?」


その言葉に、華と恵はお互いの目を合わせる。


「「はい。」」

「あー!それならそうと言ってくれればよかったのに!華ちゃんあんな状態だったし、誰が味方か敵かなんて分からなかったから。いつも門前払いしちゃっててごめんね。」


恵は華がヴォイドの部屋に移ってから、度々お見舞いに訪れていた。

杏は恵を警戒していて、わざと部屋に入れなかったのだ。

もちろん、恵以外の誰が訪れてきても同じように対応する予定だった。


「気にしないでください!むしろそうやって華ちゃんを守ってくれてありがとうございます。……私にはできなかったから……。」


そんなに落ち込まないで欲しいと華は思う。


「恵ちゃんのせいじゃないよ。たしかにあの時は友達なのになんで助けてくれないんだろうって思ってしまったんだけど。恵ちゃん見てたら、恵ちゃんは恵ちゃんなりに私の事助けようと想ってくれてたんだなって伝わってきたし。……それにほら!もうだいぶ元気だよ!心配してくれてありがとう!」


華はニコッと笑って恵ちゃんの手を握る。

恵はその顔を泣きそうな顔で見つめて、手を握り返した。


「よし!なにか誤解?も解けたようだし、パーティしよう!」


杏は手に持っていたパンパンの袋を、顔の横に掲げた。

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