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第9話 ゴーレムの涙



「次のゴーレムを倒したら帰ろうか」


 タクトとシルビアはその後も交代しながらゴーレムとの戦闘を行ないながら第五階層までやってきていた。


「わかった。最後はシルビアが倒していいぞ」


 まだまだ物足りなさそうなシルビアに最後の戦闘を譲るタクト。



 現れたゴーレムはシルビアによりあっさりと倒される。


 ドロップがないかを確認するシルビア。


「そういえば『ゴーレムの核』以外にドロップするものって他にあるのか?」


「『ゴーレムの涙』っていうアイテムだね。これは『ゴーレムの核』以上にドロップ率が低くてね。僕も未だに現物を見たことがないんだ」


「ツカサでも見たことがないのか。もしドロップしたら大事になりそうだな」


「そうだね」





 シルビアが戻ってくる。


「おっ、シルビア何か見つけたのか」


 シルビアが見せてくれたのは透明なガラス玉だった。


 シルビアから渡されたそれをタクトが手に取ってみると、


「…マジかよ」


 スキル『ゴーレムマスター』はゴーレムに関することなら鑑定も可能であり、スキルが告げたこのアイテムの正体は先程話題に出た『ゴーレムの涙』だった。



「これが『ゴーレムの涙』…。僕も手に取ってみてもいいかな?」


「ああ」


 ツカサに『ゴーレムの涙』を手渡す。


「うん、間違いなく『ゴーレムの涙』だね」


 ツカサのスキルでも同様に確認できたようだ。


「師匠凄いですにゃ!」


 ネコがシルビアを称賛する。マリーもその隣で拍手をしていた。



「タクトならもしかしたらとは思っていたけれど、まさかこんなに早くドロップするなんてね」


「なぁツカサ、これどうしたらいい?」


「それはシルビアちゃんが手に入れたものだからタクトとシルビアちゃんで決めたらいいよ」


 ドロップアイテムの分配は事前に話し合っており、倒した者に所有権があることに決まっていた。


 この場合はシルビアの主であるタクトに所有権がある。


「シルビア、好きにしていいぞ」


 タクトは『ゴーレムの涙』をシルビアに返す。


「売れば一生遊んで暮らせるのに迷わず師匠にあげるなんて流石タクトさんにゃ!」


「えっ、そんなにするのかそれ!」


 ネコの言葉に驚くタクト。どうやら『ゴーレムの涙』は『ゴーレムの核』とは比較にならない程の高値になるらしい。


 その様子を見たシルビアはサッと『ゴーレムの涙』を胸元に隠す。


「今さら返せなんて言わないから心配するな。少し驚いただけだから」


 タクトの言葉にホッとする様子のシルビア。


「なぁツカサ、『ゴーレムの涙』使うとしたら何処で使えばいいんだ?」


「え?うんそうだね、ここでいいんじゃないかな。周りにモンスターもいないことだし。聞いた話だと危険な事にはならないはずだから心配ないよ」


「そうか、シルビアそれ使ってみるか」


 タクトの言葉に頷くシルビア。


 シルビアは『ゴーレムの涙』を胸に当てる。


 『ゴーレムの涙』を中心に光りだしシルビアを包んでいく。




 しばらくして光が収まりシルビアの姿が見える。


 見たところ変わったところは見当たらない。


「シルビア、どこか悪くなったりしてないか?」


「問題ありません、マスター」


「えっ?」


 タクトの問いかけに答える声。それはシルビアから発せられた声だった。


「シルビア、話せるようになったのか」


「ぶい」


 ダブルピースをしている表情は相変わらず無表情のままだが、シルビアの口元は確かに動いており普通に言葉を発していた。



 ドロップ率が低いアイテムにはそれに見合った価値がある。


 『ゴーレムの涙』には世の中全てのゴーレムマスターの夢とも言える効果があった。


 それはゴーレムが言葉を話し、喜怒哀楽を表現できるようになること。


 現在も『ゴーレムの涙』を使用する以外にゴーレムに言葉を話させ、表情豊かにさせることはできないとされている。



「師匠、今どんな気持ちですにゃ?」


「マスターと話せて最高の気分です。もちろんネコとも話せてうれしいですよ」


「ネコも師匠とお話しできてうれしいですにゃ!」


 シルビアとネコが楽しそうに会話している。


「マリーもありがとうございます。大丈夫です、ツカサが頑張ってくれますよ」


 シルビアとマリーが何やら話している。シルビアがツカサに近づく。


「ツカサ、『ゴーレムの涙』を早く手に入れて下さい。マリーも楽しみにしています」


「マリーが楽しみにしてるだって!うん、わかった!タクト、悪いけど僕は先に進むよ。ネコ君、皆のこと頼んだよ」


 そういうとツカサは一人でダンジョンの先に駆け出していった。


 『ゴーレムの涙』がドロップした時、内心では気が気でなかったのだろう。あっという間に見えなくなっていた。


「おいツカサ、…もう見えなくなった。ネコさんどうしますか?」


「うーん、とりあえず一度戻りますかにゃ。ツカサさんは放って置いても大丈夫だと思いますにゃ」




 タクトたちはツカサを置いてダンジョンから引き上げる。


 ツカサは夜遅くになり戻ってきた。成果はなかったようだ。


 その翌日。


「タクト、僕はしばらくダンジョンに籠もることに決めたよ。マリー、寂しいだろうけど我慢して欲しい」


 どうやらツカサは『ゴーレムの涙』狙いでダンジョンに籠もることにしたようだ。


 名残惜しそうにマリーと別れを告げるツカサだが、マリーは全然寂しくなさそうなのが対照的だった。


「しばらくは静かに過ごせそうとマリーが言ってます」


 マリーの言葉を代弁するシルビア。


 確かにツカサは構い過ぎなところがあったから距離を置くのも悪くないのだろうとタクトは思った。




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