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サイプレス  作者: 熊懐印
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 ようやく声が出た。

「えっと、…アシュリ様はエミリーの事をお好きなのだと思っておりました。どうして急に私に…??」

「急ではないんです。私は昔からずっとルイーズ様を想っておりました。ただ、エミリー様との婚約は、その、どうしても仕方無かった事で…」

「あら、ちゃんと言っちゃえば?彼女記憶あるみたいだし。」

 急にエミリーの声がした。

「ふふふ。お姉様ごきげんよう。時が戻った気持ちはどう?2度目の人生楽しめた??」

「…??」

「そこの彼はね、前世からお姉様の事を愛してたみたいよ?」

「????」

「その事はっ!!」

「あら、いいじゃない。全部話してあげましょうよ。それに、今の私はすっごく気分が良いの!!何回も生まれま変わってきたけど、愛するディリーとの結婚式なんて初めてよ。いつも勝手にくっついてたから。」

 混乱しているルイーズに、エミリーが意気揚々と話しだした。


 自分は世界で数人しかいない魔女であり、ディリーも魔法を使える運命の相方なのだと言う事。記憶を持ったまま生まれ変わる人生でディリーに会えるか会えないかは分からないらしい。で、今世ではなかなかディリーに会えなかったので、もう今世では会えないと思って、つまんないと感じながら生きていたら、自分の命と引き換えに他人を生き返らせて欲しいと、イケメンが尋ねてきた。自分好みのイケメンだったので、殺すのは勿体ないと思って、時を戻してあげる代わりに自分との結婚を約束させた。早速時を戻して、ルイーズの義妹として自分は生まれて、イケメンであるアシェルと結婚出来るようにしたのに、なかなか結婚してくれないからイライラしていたら、まさかの相方と再会。感激してアシェルとの婚約話は白紙にしてすぐに結婚したとの事だった。


 あまりに突拍子も無い話しに戸惑っていると、義妹が、

「通常、なーんの見返りも無しでこんな魔法使わないのよ?この結婚式が嬉しいし、このイケメンに免じて無料サービスよ!!ありがたく思ってね♡」

「…あなたが私の時を戻したの!?」

「あなただけじゃないわよ?全てよ全て。魔力が強すぎるの私。感謝してちょーだい。」

「え、あ、ありがとうございます?」

「いいのよ~!!」

 あっさりとし過ぎてて、思考停止してしまいそうになる。


「だからね?お姉様はそのイケメンにすっごく愛されてたって事。」

「え…?」

「お姉様が殺された前世も、時が戻った今世も。彼の愛は凄いわね。時を戻すって、ほんっっっとぉに強力な魔力を使うの。それを使ってあげたんだから、意地悪しちゃおうって思ってたのよね。でも、ダーリンに会えたからもういいの!!」

「じゃ、お幸せに~。」

 エミリーはルンルンで教会の方へ行った。


「コホン。」

 アシェルが咳払いをした。

「えっと、そういう事だったんです。」

 顔が真っ赤だった。

「…それよりも、記憶があったんですね?」

 アシェルがルイーズに驚きながら訪ねた。

「はい…。」

「妹に…その、殺されたのに、どうして妹と仲良くなったんですか…?」

「それは…」

 なぜアナイスに近付いたかを説明した。

「そう…だったんですか…。」

「時が戻って、どう思いましたか…?」

「自分の時が戻ってるのが分かった時は絶望でした。また同じ運命を辿るのかと…でも、今は本当に感謝しています。前世では得られなかった沢山の大事なものを大切だと気付かせてもらいましたし、大事な親友を得ました。」

「アシェル様、感謝しております。本当にありがとうございます。」

「あ、いえ…」

 照れた。

「でも、その…私の事を?前世では…今世でも、そんな素振り…そんなに…確かにお優しかったですけど…」

 ぼそぼそと言っているルイーズの手をアシェルが取った。


「前世では、…貴女と出会った時には既に王太子妃候補として、隣にレイナウト様がいらっしゃいました。臣下である自分が王太子妃候補に横恋慕なんて…到底出来るはずもなく…お会いできる時はつい嬉しくて顔が緩んでしまう事を恐れて固く厳しい顔を保つように努めました。」

「…。」

「時が戻った時、なぜか妹の友人になっている事に驚きましたが…惹かれる気持ちは変わりませんでした。ただ、魔女様との結婚は絶対だったので、貴女と結ばれる事は出来ないのだと…諦めていたんです。…でも、前世よりも近くに居れて、沢山の貴女を知れて、もっと側にいたいと願ってしまっていました…。」

「でも、また貴女が王太子妃になる可能性もあって…どうしていいか分からなかったんです。」

「ただ1つ決めていたのは、貴女を前回と同じ結末にしない事…。なので、こうして無事に貴女が生きている事が本当に嬉しいです。」


「アシェル様…」

「ただ、ルイーズ様は、もしかして今回も王太子様を想ってらっしゃったり…しますか?」

「それは無いです。絶対にあり得ません。」

 これだけは食い気味で答えた。

「それなら…良かったです。」

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